三
「イオン、あなた、無事に帰ったのね! よかったわ!」
「母さん……」
「よかった、本当によかった」
涙目で抱きついてきた母に、イオンは泣きそうになった。
壮絶なジョブチェンジのあと、いったん村に帰る話になった。
気が重かったが、勇者候補になった時、あんなに喜んで見送ってくれたみんなにはこのことは伝えたい。
そうイオンがアメリに、デスメタルに言ったのだ。
嘆きや怒りの声を覚悟していたイオンは、みんながよく戻ったと迎え入れてくれて、また泣きそうになったが
「あのバカ舌な姫さんには、どうやら灸をすえなきゃいけねぇようだなぁ」
「リンばあさん! やってくだされ!」
「リンばあさんの怒りの咆哮、いまこそ!」
「やってまぇぇえ!」
涙、引っ込んだ。
みんな、どうした?
性格変わってない?
じいさん、ヒヒじいさんが可哀想なひめさまじゃったと、なんか念仏唱え出した。まだ、死んでないよ、姫様。
その横で、リンばあさんが「うらあ! はぁぁああっ!!」と、なにやら手のひらあわせて光の玉を放ってる。
いや、てか、なんで出るわけ?
うん、まあ、あれだ。なんか、どっかで見たことあるけど、スルーだ。スルーしよう。
「へえぇ、活気の良い村ですねぇ。こりゃ、みんなで恋愛天使にジョブチェンジしやせん?」
なんて事いうデスメタルに、イオンはまさかと手を横に振る。
「いやいや、さすがにみんな、ジョブチェンジとか。ねぇ? み「やってやらぁぁあ!」「ジョブチェンジ祭りじゃ、まつりぃぃい!」「愛の殺戮見舞ってやんよぉぉっ、なあ、イオン!」…い、いえーい」
めぇ、血走りすげぇな。
「愛憎渦巻く劇にしてやるわぁぁあ」
いや、穏やかな劇でお願いします。
みんな、デスメタルさんからもらったドリンク一気飲みしちゃったぁぁ。
「「「「「うぉぉぉお!!!」」」」」
ひい、トラウマ案件な光景すぎる。
翼、血だらけで生やしてるよ。
つか、リンばあさん、なんか闘気みなぎってない? 体がむきむきなんだけど。メキメキ言わせながら真っ赤な翼生やしてんだけど。おかしいな、天使って、真っ白な翼じゃないの?
あれ、みんな、カラフルすぎない? ピンクやら紫まであるよ。
「ああ、ばあさんが……ついになってしもうたぁ。さ、さつりくの天使が、た、たんじょうじゃぁぁ」
ヒヒじいさん、体育座りで震えてるよ。背中の翼ちっさ! いや、え? 翼七色なの??
リンばあさんがヒヒじいさんの翼の色見て「ちっ、七色かよっ」って、恨めしげに舌打ちしてるよ、こわっ。
今日、村のみんなも仲良くジョブチェンジしました。
そんなことって、ある?
「じゃ、みんなで恋愛サポート、いきましょかー。いえーい」
「「「「「いえゃぁぁあ!!!」」」」」
「い、いえ、ーい」
母さん、恥ずかしいならやらなくてよいと思うよ。
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