危機一髪!轢かれそう!:(´ºдº:;`):ヒィ-

米太郎

轢かれなくて良かったけどさ……。

 学校の帰り道。

 春一番が吹いてくる季節。


 段々と暖かくなる日に、私の心はウキウキしていた。

 もうすぐ、新学年に上がるんだ。

 恋の季節だって言われたりもするし。

 春って心が弾むよね。

 信号が青色に変わるだけでも、楽しい気分だよ。


 ルンルンとした気分で、私が横断歩道を途中まで渡っていると、すごい速さでトラックが向かってきた。


 え……、なんで……。


 どうしよう轢かれちゃう……。



 いざトラックと対峙すると、怖くて身体がこわばってしまった。


 動けない……。

 私、轢かれちゃう……。



 その時、後ろから強く手を引かれた。

 その手に引かれて、私は歩道まで戻された。



 歩道から私の居た場所を見ると、すごい速さでトラックが通り過ぎて行った。


「危なかったな」



 私の手を引いてくれたのは、五十鈴いすず君だった。

 五十鈴君のおかげで、私は危機一髪、轢かれずに済んだみたい。

 もう少し遅かったら轢かれていたと思うと、私の心臓の鼓動が大きく聞こえて来て、ドキドキしてるのが分かった。


「あ、ありがとう。助かったよ」


 お礼を言おうと五十鈴君を見ると、とても顔が近かった。

 手を引かれたことで、意図せず五十鈴君の胸の中に納まっていたのだ。


 私は驚いて、すぐに離れる。


「ぼーっとするなよ、危ないだろ」

「ごめん。助けてくれて、ありがとう」


 少し照れながら私がお礼を言うと、五十鈴君は真っすぐに私の目を見て、言った。



「もしもお前が死んでいまったらさ、俺が生きる意味が無くなっちゃうだろ」


 突然言われた言葉は、私の中を駆け抜けていった。


 春一番が、私の髪を撫でていく。



 春という爽やかな季節に、野暮なことなんて聞かない。

 どういう意味かなんて、聞かなくたって分かるから。



 危機一髪、トラックに引かれずに済んだと思ったのに。

 私は、五十鈴君に惹かれてしまったようだった。




 おしまい。

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