第16話 やりたいこと

「はじめに」で記載したとおり


僕が会社を辞めたのは、表向きには年老いた両親の介護が理由だった。


だけど実際には辞める1年前から

サラリーマンという生き方には心の底からウンザリしていた。


だから仮に両親の問題がなくても遅かれ早かれサラリーマンを辞めていたと思う。

実際、在職中に気分転換を図って訪れた高尾山の山頂でそう心を固めていた。


僕がサラリーマンを辞めた一番の理由は自由に生きてみたかったからだ。

そしてやりたいことを一通り全部やってみようと思っている。


別に派手で贅沢な計画を立てているわけではない。

ただ自由に生きて可能な限りこの広い世界を見てみたいと思う。


何かに追いかけられるのではなく、自分が追いかけたい。


おそらく僕と同じような願望を持っている人もいることだろう。


だけど以前、誰かにこう言われたことがある。


「自由になりたい?好きなことをやりたい?ならば働いて金を貯めろ」と。


これもまた多くの人のマインドセットではないかと思う。

つまり「働くのが先、夢を叶えるのはその後」という発想だ。


だけど、いつまで働けば良いのだろう?


特にサラリーマンは定年退職まで勤め上げない限りは世界中を旅するような長期の休暇は取れない。

しかも定年退職になったからといって本当に世界中を旅する人は少ない。


だから「働くのが先、夢を叶えるのはその後」という発想では夢を実現するのは無理だ。


僕が言っているのは「何を実現したいかを考えるのが先、働くのは後」ということ。



言葉遊びをしているのではない。

この2種類の考え方は似て非なるものだ。


「働くのが先、夢を叶えるのはその後」という発想は

「働くことから解放されてからでないと夢は叶わない」と言っているのと同じだ。


そういう発想になる理由は、忙しすぎて自分と向き合う十分な時間がないからだ。

だから本質的に「何をしたいかを考えるのも後」になっている。

本人も気づかないうちに。


僕は「本当にそうしたいと思ったら必要なお金はどうにかなる」は真理だと信じている。


「お金がない」ことにばかり焦点を合わせていると、いつになってもやりたいことは出来ない。

なぜなら「お金の有無」が「やりたいこと」よりも先に来ているからだ。


だが「やりたいことがある」という「やりたいこと」の方に焦点を当てると意識自体が変わる。

それは自分が望む人生を宣言することだと言っても良い。


今、お金があるかどうかは関係ない。


つまり、何をやりたいかを考えることは辿り着きたい風景を想い描くことと同じだ。

そして最も重要なのは、本当にやりたいことならば誰が何と言おうと絶対に叶えてみせるという強い意志であり自分自身への誓いだ。


誰だって「世界中を自由に旅行したい」と口では言う。

そういう意味では僕と同じ夢を持っていると言える。


でもそれは「できたらいいな」程度にすぎない。

絶対に叶えてやるという信念や自分自身への誓いではない。


逆に言えば、実現しなくても別に構わないのだ。

だから「働くのが先、夢を叶えるのはその後」という発想になる。


多くの人がそうだろう。


すでに述べたとおり僕は自由になりたかったからサラリーマンを辞めた。

今後の人生の中でやってみたいことがあるし、日本も世界も、あちこちにも行きたい。



それにはお金が要る。僕だってお金が欲しい。

だから僕は働くことを否定しているのではない。


僕はしたくない生き方を捨てて、したい生き方に変えた。そこが重要だ。


僕がお金を欲しいのは「やりたいことが先にある」からだ。

「お金持ちになったら何をしたいか?」ではないのだ。


順番が逆なのだ。


極端な言い方をして煽動する気はないが、「年収を2億円にしたい」、「自由に世界を旅したい」と思ったらサラリーマンで働くという選択肢はありえない。

そういうこと。


やりたいことが先になければ「できたらいいな」のまま人生が過ぎていくだけだ。


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父はいつも「好きなことをやれ」と言ってくれた。


母は正反対で「夢を追いかけるのは子供の頃だけで、大人になったら現実的に生きるべき」という考え方だった。


だからこそ序章のとおり、僕がサラリーマンを辞めることを母が喜んでくれたことに僕はとても驚いた。


そして僕はこう思っている。


いつかサラリーマンの方が社会的に不安定と認識される時代が来るのでは?

今までのような年金や社会保障の制度の維持が困難になっていく長寿社会の中で。


雇われることでしか生計を立てることができない人達として。


そういう時がそう遠くない未来にやって来るかもしれない。


別にそうならなくて構わない。


僕には関係ないから。

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