第11話 サラリーマンを辞めたら健康になった

僕は会社を辞める一年前から体調不良が続いていた。


身体に何らかの症状が出た時はSOSサインだ。


サラリーマン時代の僕の健康状態は本当に酷かった。


慢性的に身体中がカチコチに硬かった。

もちろん運動不足も原因の一つ。


言い訳にすぎないがエクササイズの時間など確保できなかったし、

疲労困憊する日々の中で運動するような気力はなかった。


週末にツボ押しマッサージに行っても

首・肩・背中が鉄板のような硬さだと言われて施術師さんに嫌な顔をされた。


当時、僕の目は充血していた。

特に右目が真っ赤にドロドロして血の海のようだった。


眼科で診察を受けたところ結膜炎と診断され

原因は「ストレス」と言われた。


それだけではない。

身体中に痛みを抱えていたし、ストレッチもできないくらいに股関節が硬かった。

針灸で診てもらった整体師さんからは「あなたの脚は老人並みに衰えている」と言われた。


交差点で信号が点滅してもダッシュで走ることができなかった。

足がもつれて転んでしまう気がしたし、

足首や膝を痛めるのではないかという不安があったからだ。


サラリーマン時代は体重が70キロ近くあり顔がむくんでいた。

無理してベルトをきつく締めるから、いつも呼吸が苦しかった。


毎朝、洗面時に鏡を見るのが嫌だった。

外を歩いていてもショーウィンドウに映る自分の姿が嫌いだった。

そこに映っているのは醜く不健康な自分の姿だったからだ。



一方、サラリーマンを辞めた今では心身ともに健康そのものだ。


今の僕の体重は56キロ。

そして鏡に映る自分がいい感じに思えるようになった。


ハンサムだとかイケメンだとかの顔の造作のことではない。

自然体の自分の姿が好きになれたのだ。


健康を取り戻すと考え方がポジティブになる。

健康である限り自分は大丈夫だと空を見上げることができるようになる。


これが自己肯定感だ。


かつては年齢を重ねるにつれて太るのは仕方がないことだと思っていた。


また、サラリーマン社会では中年以降は太っている方が、外見的に貫禄が出るから出世や周囲への影響力の面で有利だと昔の上司から言われたことがある。

それが偉い人というイメージ像なのだと。


その当時は、そういうものかと無邪気に納得した自分がいた。

でも今になって思うとバカじゃないかと思う。

ただの不健康だろ、と。


結局、サラリーマンでいることは、日常的に不健全なストレスに晒されているのと同じなのではないかと思う。人間関係、忙しさ、組織の歪み、業績達成のプレッシャー、心の余裕のなさ、等々。


僕にはサラリーマンというのは健康に悪い生き方に見えて仕方がない。


僕は会社を辞めたら健康になれた。

少なくとも僕はそうだ。


僕は健康に長生きするだろう。

なにしろサラリーマンを辞めたから。


これが僕の本音だ。


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