凍結

mamalica

凍結

 灰色の真綿を敷き詰めたような空が広がっている。

 

 昨夜から降り続いた雪は、朝には止んだ。

 予報では、気温は五度ぐらいまで上がるらしい。


 昨夜の天気予報を思い出しつつ、緩い傾斜の三角屋根を見上げた。

 積雪は、厚さが一メートル近い雪庇せっぴとなって二階の屋根の端を覆っている。

 何本もの細い氷柱つららも垂れている。

 

 あれも落とさなければならないが、ガレージ前の除雪が先だ。

 膝まで積もった雪をどかさないと、シャッターを開けることが出来ない。


 スノーダンプを押し、雪を載せ、道路際まで運ぶ。

 道路沿いの住人たちは、自宅前の雪を車道と歩道の間に積む。

 ゆえに、そこは二メートルほど高さの雪の壁になっている。

 さすがに、横断歩道の前には積まないが。


 

 そうして十五分も雪はねを続けていると、ガレージの前がひらけた。

 車が出入りしやすいように、雪面をスコップで平らにする。

 

 ――もう少し、シャッターの左右の雪をはねて置こうか。


 そのためにガレージ横に近付くと、ズボッという重音が鳴った。

 雪庇せっぴだ。

 屋根の雪庇せっぴが落ちたのだ。

 気温が上がり、溶け出した雪が自らの重さに耐えかね、落下したのだ。


 良かった。

 幸い、雪庇せっぴの下敷きにならずに済んだ。

 危なかった――。


 安堵し、ガレージの前に落ちた雪庇せっぴを見る。


「ああ……」


 男の上半身は雪庇せっぴに埋もれ、うつ伏せの下半身はピクリとも動かない。

 雪庇せっぴの真下に居て、頭を直撃されたのだ。

 砕けた氷柱つららが、両足の周りに散らばっている。


「また積もってるな……」


 雪庇せっぴの下から這い出し、空を見上げた。

 灰色の真綿を敷き詰めたような空が広がっている。

 

 二階の三角屋根に積もった雪は、厚さが一メートル近い雪庇せっぴとなっている。

 数本の細い氷柱つららも垂れている。

 

 ――まずは、ガレージの前の雪をはねよう。

 

 男は、スノーダンプの持ち手を握った。

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