ちかん・危機一髪

越知鷹 京

第1話 【ち】

目覚ましが鳴った。


中学三年生の女の子、サキは、受験のために早朝から家を出ました。


――いつもと違う、朝。


冷たい空気。 


お気に入りのキーホルダーをバッグに着けるのを忘れたのに気づき、サキは慌てて取りに帰りました。なんでだろう? それは、玄関に落ちていたのです。


縁起が悪いなぁ、と思いつつバッグの奥の方に しまい込みました。



さぁ、試験会場に遅れるわけにはいきません。



いつもの最寄りの駅に向かい、電車に乗ろうとしました。


しかし、緊張と眠気で頭がぼんやりしていたサキは、間違って一般車両に乗ってしまいました。電車が動き始めると、サキは周りを見渡し、自分が一般車両に乗っていることに気づくのです。サキはパニックになりましたが、次の駅まで我慢することにしました。


その時、サキの隣に立っていた怖い見た目のおじさんが、サキに近づいてきました。サキは怖くなり、何も言えずに固まってしまいます。


サキのお尻に こつり こつりと 手の甲を当てて様子を窺ってくるのです。



―――恐怖で動けない。でも、叫びたい。誰かに助けてもらいたい……。


おじさんの手が、ゆっくりとスカートの中に入ってきました。


(やめて!)


その時、サキのバッグから、突然明るい光が放たれました。

サキは驚いてバッグを開けると、中から小さな妖精が現れました。


「私は あなたを守るために 未来から送られてきました」と言いました。

そして、妖精は サキに向かって、強い光を放ちました。


「きゃぁああ!!!」 サキは、驚いて叫んでしまいました。



おじさんは驚いて、サキから離れました。



そして、次の駅で おじさんは 電車から降りていきました。

サキは ほっとして、妖精に感謝しました。


妖精はサキに微笑んで、「あなたの勇気が私を呼び寄せたのです」と言いました。

そして、妖精は再びサキのバッグの中に戻っていきました。


その後、サキは無事に受験地に到着し、試験を受けることができました。

サキはその日、自分の中にある勇気と、見えない力を信じることの大切さを学びました。


サキの危機一髪の受験日の話は、これからも語り継がれていくことでしょう。


◇ つづく


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