第4話:衣舞の事実。

(それにしても・・・エルってカムフラージュしてるからって言っても

めちゃイケメン)

(そんなイケメンが俺と衣舞の間に入ってこられちゃまずいだろ?)


異星人といえど、エルも男。

衣舞の気持ちがエルになびかないって保証はどこにもないわけで・・・。


(って俺はなにを心配してるんだ? 衣舞が誰を好きになろうと俺には

関係ないことだし・・・第一その考えはちょっと飛躍しすぎてるだろ)


だが本当のところ衣舞にはその気がなくてもエルが衣舞に行為を寄せて

いたことは、ふたりともまだ知らなかった。


それからエルは、なにかにつけて衣舞の前に現れるようになった。

しかも学校にまで転入して来た。

三人は同級生になった、三角関係のはじまり。


これでエルは日中、衣舞のそばにいられるようになった。


亜駄無は俺には関係ないことと、見て見ぬふりをしようと思ったが、こうなって

見ると衣舞のことが気になる。


だけど衣舞はいつもと変わらなく、下校時は亜駄無と一緒に帰った。

エルは亜駄無と衣舞の関係を知りながら、それでも衣舞の前に現れては、

なにかと衣舞を気遣った。


最初、衣舞も自分につきまとうエルの行動をうっとしいと思っていたが、

衣舞に対して常に優しく、まるで衣舞のためだけにいる執事のようだった

ため衣舞も少しづつエルに心を開きつつあった。


それは微妙な感情だった。

そこで衣舞は確かめてみることにした。


「エル・・・エルは私のことどう思って、そうやって優しくしてくれてるの?」

「私には亜駄無って恋人がいること知っててそうやって私のそばにいるの?」


「知っていますよ・・・だからってあなたを好きになってはいけない理由には

なりません」

「恋愛は自由・・・それが片想いだったとしてもです」


「それって私のことが好きってこと?もっと突き詰めて言うと愛してるって

こと?」


「はい、そう理解していただければ・・・」


これは立派な告白。

亜駄無からしてみればエルが衣舞の面倒を見てくれるなら、自分は妹から

解放されると思いたかった・・・でも本心はそうじゃなかった。


たちまち自分にエルと言うライバルが出現してしまうと、衣舞を誰にも

渡したくない衝動にかられた。

自分だって衣舞を心の底から愛してるんだ・・・それがたとえ血が繋がった

実の妹でも・・・。


亜駄無はエルに宣言した・・・身振り手振りで。

衣舞はけっして渡さないと・・・。


するとエルは冷静に言い放った。


「そうですか・・・たしかに私は衣舞さんを愛してます」

「それは衣舞さんが我々にUFO に運ばれた時に、私は彼女に一目惚れしました」

「ですが我々の世界では異種同士での恋愛や結婚は禁じられています」


「だから、せめて衣舞さんのそばにいて彼女を見守ることにしました」

「叶わぬ想いでも、それでもいいから彼女のそばにいたかったんです」


「でも私は衣舞さんを諦めるしかないのでしょう」

「だから、いいことをひとつ亜駄無さんにお教えて差し上げましょう」


「衣舞さんは実はもう人間ではありません・・・我々と同じDNAを持った

異星人なんです」


「あなた方は表向きは兄妹ですが、おふたりはもう血は繋がっていません」

「血液検査をすれば分かります・・・おふたりのDNAは一致しないはず」

「それで、おふたりが兄妹ではないことを世の中に証明できます」

「亜駄無さんと衣舞さんは、今や他人同士」


「他人同士の恋愛ならタブーにはならないでしょう?」

「あとは亜駄無さん次第・・・衣舞さんの想いをちゃんと受け止めてあげる

だけです」

「衣舞さんはたしかに異星人ですが、人間としての籍は残っていますから

なんの制約もいなく、将来結婚だってできます」


それはまさに目から鱗な話だった。

亜駄無と衣舞はもう兄妹じゃないって事実。

もう大手を振って、自分たちは恋人同士なんだって世間に宣言できる。


亜駄無と衣舞はもう禁じられた果実を食べても追放されることはなくなったのだ。


つづく。



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