転生悪役令嬢の美味しい成り上がり。

笛路

1:悪役令嬢に転生して、断罪されました☆

 



「ミネルヴァを魔界送りに処す」


 はい、来ました。

 断罪からの魔界送りの刑。


 気付いたときには時すでに遅し。

 前世でハマって見ていたコミック、その悪役令嬢に転生、かーらーのー断罪コース。抗いようのない流れには逆らわず、粛々と受け入れること二ヶ月。

 コミックでは描写されていなかった、この世界のルールをしっかりと学び終えたし、準備万端!


「お姉様……こんなことになるなんて。ごめんなさい」

「いいのよ。貴女は幸せになりなさい」


 キラキラと眩しいオーラを放つこの世界のヒロインである妹。

 王太子殿下の婚約者になった妹を妬んだ悪役令嬢(私)の末路は、魔界に立ち入って直ぐに魔獣たちに食べられて死ぬ。なんとも雑なフェードアウト。

 だって、異世界恋愛ハッピーエンドな物語の、ちょっとしたスパイス役だもの。仕方ないっちゃ仕方ないわよね。


 いくら悪役令嬢に転生したからといって、前世を思い出した今はイジメなんて出来るはずもない。なので、妹とは和解はした。だけど、それは王太子殿下には内緒にしてもらった。

 改心したなんてきっと信じてもらえない。そんな生きづらい世の中よりも、新たな世界を求めて旅立ちたかった。


 私にはここからが本番。

 魔界で生き抜く方法は考え済み。あとは、魔獣たちを躱す方法が失敗しないことを祈るだけ。




 ◇◆◇◆◇




 ――――グオアァァァァァ!


 魔獣の咆哮が辺に響く。

 

「うわぁぁ」


 大惨事。

 いやぁ、本当に大惨事だわぁ。


 唐辛子(みたいな香辛料、面倒くさいから唐辛子って言うけど)があったから、粉にして粗めの布で包んだレッドペッパーボムを作った。

 ケルベロスみたいなのが突進してきたから、ていやっ!と投げつけたのよ。そうしたら、ちょっと引くくらいにのたうち回っちゃって、申し訳ない気分になった。

 

 その後も襲ってくる魔獣たちにレッドペッパーボムやレモン汁ボム、ガーリックペーストボム、オニオン汁ボムなんて投げつけつつ歩いた。


 どんな魔獣がいるかわかんないし、色んなタイプのものを用意していたのと、流石に武器類は持たせてもらえなかったから、調味料という体で荷物に入れた。

 傍から見ると、食いしん坊よね。……まぁ、今ものすごく役に立ってるからいいんだけど。

 

「うんまっ!」


 肉食獣のような牙を持った小さい猪っぽいやつが突進してきたから、レッドペッパーボムを投げつけたのよ。そうしたら、急カーブして木に激突。まさかご臨終するとは思わないじゃない?。

 お腹が減ってたから、丸焼きにして食べました!


 味付けは、各種ボム。こういう方向で役に立つとは。

 そして、火起こしのライターみたいな魔具と、隠せる程度のナイフを持たせてくれたヒロイン(妹)、本当にありがとう。


 食べきれなかった余りは多少包んでお弁当に。

 更にその余りと骨は……なんだか木の陰からこっちの様子を伺ってる小さい犬っぽいのに投げつけておいた。

 肉と骨に気を取られているうちに逃げよ。

 



 しばらく歩いていると、大きな市外壁みたいなものに囲まれた場所に辿り着いた。


「…………お前……すげぇ臭えな」


 初対面なトカゲ人間みたいな門兵に、ものすごく嫌な顔とものすごい言葉を吐かれたけど、無視無視。

 

「中に入るのにお金がいるんですよね」

「あぁ、人間のくせによく知ってるな」


 これはコミックの内容通り。

 お金や宝石は沢山隠し持ってきたから大丈夫。心優しきヒロイン(妹)に感謝ね。


「それから後ろのペットは別料金だぞ」


 ――――後ろのペット?

 

 そっと振り返ると、頭が三つある……ケルベロスみたいな子犬みたいなケルベロス…………ケルベロスよね?

 とにかく、後ろにいつの間にか子ケルベロスがいた。


「え?」

「「ぎゃう!」」

「え?」

「早く行こう、だとよ」

「え?」


 なぜか、ペットが増えていた。


 ――――どゆこと?



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