短編「缶詰ノ馴初」(完)

不可世

一話完結

「おはよう」

「おはようございます」

「白瀬、アルコールを混ぜてくれないか」

「風邪気味ですか?」

「いやアルコールミルクに中毒になってしまってな」

「健康な時に飲むと、よろしくないですよ。」

「そうか、だが、飲みたい」

「致し方ありませんね」


「かぁぁぁ””うまい”」

「一杯だけですからね」

「なんだと。。。」

「そんなへこまないでください」

「半杯だけでいいから、」

「だめです」

「ぐぬぬ」


私こと、憂塚と白瀬は作家に興じる仲間であり相棒

そして、共に生活をしている。


「おい白瀬、」

「なんでしょう」

「おでんが食べたい」

「では、行きますか」

「行ってきてな~」

「いや、先生も行くのですよ」

「え!?」

「なぜ、驚くんですか」

「だって、私はもう若くないし」

「まだ現役時代ですよね」

「ほら、頭を使う仕事をするとな、老化も早いのさ」

「そんな話聞いたことがありません」

「じゃ~片道だけ」

「どういう意味ですか?」

「タクシーで行って、帰りは歩くってことさ」

「そこまでして、動きたくないんですね」

「だって寒いし、それにホームシックになるんだよ」

「重症ですね」


ほんとうは大丈夫だが、私はめんどくさがりなのである


「本当はめんどくさいだけなんですよね」

「なぜわかった!!!」

「だって何年先生といると思ってるんですか」

「そうか、君も学習してるのか」

「しますよ、てかなんか失礼ですね、その言い方」

「悪い悪い、つい取り分けのないことを言った」

「では出発です」

「お、タクシーきたのか?」

「来ましたよ」


そして外へ出る

だがそこにタクシーは愚か、エンジンをもしない。


「何も来てないぞ」

「鍵渡してください」

「鍵って家のしかないが?」

「それでいいです」

「ほれ」


私は家の鍵を渡した。


「では、行きましょう」

「待て、」

「なんでしょう」

「タクシーはどこだ」

「ないです」

「なら帰る!」

「どうぞご勝手に」

「あ、」


そして私は気づくのであった。

鍵を渡してしまったことに。


「なぁ白瀬、鍵を返してくれ」

「せんせ~~い」

「って、遠!!!」


白瀬は既に歩いており、追いつくには、走らざるを得なかった。


「君、はめたな。」

「なんのことでしょう?」

「まぁいい、体はあったまった」

「では、おでん食べに行きましょ~」

「ああ、そうだな」

「なんか浮かない顔ですね」

「あくまで白を切るとはな」

「ごめんなさい、はい鍵です」

「まーもう、ここまで来たから帰りはせんよ」

「ふふ」

「君も、策士だな」


そしておでん屋についた・・・?


「おい白瀬!」

「なんでしょう」

「これは確かにおでんだが、」

「はい、おでんですよ」

「自販機じゃないか!」


そう私の前にあったのは、自販機だった。

店であつあつのおでんを食べたいのに

いやそれをはじめから描いていた未来図なのに・・・


「まて、この180円の缶を買うのか」

「そうです」

「確かにおでんだが、うまいのか?」

「わかりません」

「なんだと!食いもせず、ここに来たのか」

「だって、おでん屋さなんて、ないですし」

「確かに、言われてみれば、おでん屋をみたことがない・・・」

「でしょ、あるとすればコンビニとかです」

「せめて屋台はなかったのか」

「そういうのは神出鬼没ですし」

「そうか・・・」

「ひとまず食べてみましょ」

「わかった」


ガラガラ


「って、へこんでる!」

「ほんとですね」

「開けれないぞ」

「あーこれ、開けないほうがいいかもしれません」

「どういうことだ?」

「へこんだ缶の場合、内容物が圧縮して、危険なんです」

「だが、捨てるわけにもいくまい」

「まーあけるとすれば・・・」

「なんだ?」

「へこみを直してあけるってところでしょうね」

「なるほど」

「しかし・・・」


「えいえい!!」

「あの憂塚先生待って!!!」

「えい!!!!!!!!!!!!!」


ブシャーーーー


「あ~言ったのに」

「なんだ言ったとおりに、へこみを直したはずなのに」

「へこみを直すときは、少し缶の口を開けないといけないんです」

「もう、べとべとだ」

「着替えましょう」

「そんなものあるのか?」

「私のコートを着てください」

「君が寒いだろ」

「いえ、大丈夫です」

「では、ありがたく借りるよ」


私は濡れた袴を脱ぎ、肌にコートを着た


「先生も、いい加減、現代ファッションに目覚めてほしいです」

「袴は譲れん、こうでないと、落ち着かないものでな」

「そうでしたか」

「ああ、」

「では、食べますか?」

「おお!」


私は袴についたおでんを食べる


「え?先生」

「地面に落ちたんじゃいないんだ、大丈夫だろ」

「そういうものですかね?」

「ああ、そうさ」

「なら・・・いいですよね?」


白瀬は私の袴についたおでんを取り、口に入れた。


「え?君!?」

「なんです、いいんですよね?」

「そうだが、私が来てた服のを食べるのは、いささか?」

「おいしいですよ」

「いやそういう問題はなくてだね」

「なんです?」

「いや、いい、うまいな!うまい!うまい!!」

「先生、顔真っ赤ですよ」

「こ、これは、吹いたおでんにゆでられてな」

「あ、なるほど」


そうして二人はおでんを食べて、いつまでも幸せにくらしましたとさ。

めでたし、めだたし。


「な。白瀬」

「なんでしょう?」

「次はどこへ行く」

「家に帰りたかったんじゃ?」

「いや、気が変わった」

「なんか変なスイッチ入ってません憂塚先生」

「今から、あそこへ行くぞ!」

「え?えぇぇぇえぇ!!!???」


ちゃんちゃん

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