第2話 花言葉探偵、興味を持つ

「枯れない水仙か……」


 花は一度咲けば枯れるまで咲き続ける。小学生でも知っていそうなことだ。

 しかし、話を聞いているうちに、様子が違うことが分かってきた。


「それも、三年間枯れずにずっと……」

「こんな依頼、言うのも恥ずかしくて、だけど、もう限界で……」


 どうやら陽水は咲き続ける水仙とそれを抜き続ける父の姿を見るに堪えられなくなったため、最後の手段として探偵に頼った、というところだろう。

 咲き続ける水仙。

 水仙に意味があるとするならば、その花言葉は「自惚れ」。

 

「探偵さん……どうか……水仙の、謎を解いてください」

「しかし、私は花がどういう仕組みで咲き続けているのか、は分かりませんよ」

 

 その謎は紫苑の範疇を越えすぎている。他の所に依頼すべきだ、と言おうとした時だった。


「いいえ。私が知りたいのは、水仙の叫びです」

「水仙の叫び?」

「あの水仙がただの水仙じゃないことは分かっています。あれはきっと、土の中からの叫びです。私は、その叫びの正体が知りたいんです」


 妙な依頼だ。今までの謎解きとは趣向が異なっている。


(珍妙……)


 興味が湧いてきた。


「分かりました。まずは実物を見ましょう。話はそれからです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る