第3話 花瓶の白百合
夜になって再び廃墟の中に戻る。
廃墟の中に入ると、大広間の中心に棚が置かれており、その上に花瓶に生けられた一輪の白百合があった。
(やはり)
その直後、仮面をつけたセーラー服の少女が、骨壺を手に現れる。
「……最初から違和感があったんですよ」
最初に疑問だったのは、今、紫苑を出迎えている白ユリの花瓶だった。
「なぜ白ユリなのか。白ユリの花言葉は純潔、無垢などありますが、ある場面では、百合の花言葉の、意味が変わる。これも然り」
紫苑は進んで白ユリが生けられた花瓶の前に立った。そして、花瓶に触れ、ぐるっと回した。
それは、頂点に穴があいた頭蓋骨だった。花瓶に見えていたのは、後ろを向いていたからに他ならない。
「あなたは言った、『なぜ、この子が死んだのか』」
この時点で妙だと思ったのだ。
「あなたが提示した、あの三つの頭蓋骨を指しているなら、少なくともこの子たちと表現しているはずだ。だけど、あなたはこの子、と一人だけ指定した。その時点で私は、三人の死の謎ではなく、この子一人を指していたと推測した」
しかし、紫苑にはこの子が誰なのか分からなかった。だが、あの頭蓋骨の三人と関わりがあることは容易に推測できた。
「調べてみました。すると、小さい記事に女子生徒が自殺した、とありました」
そこで紫苑はこの自殺とこの頭蓋骨の三人が密接に関連していると考えた。そして、閃いた。
「私の推理をお話ししましょう。あなたが赤、ピンク、オレンジの百合を添えていたあの三つの頭蓋骨は加害者だ。そして、この白百合を活けた頭蓋骨こそ、自殺したこの子の頭蓋骨」
学校が生活の大部分占める彼女たちの状況。三人の傍に置かれたマイナスな花言葉、「憎悪」と「虚栄心」の意味を持つ赤、ピンク、オレンジの百合。そして、白百合の花言葉を自殺、これらが結びついて考えられる事件は一つ。
「いじめですね。この子は三人からのいじめを苦に自殺した」
セーラー服の少女から提示された謎は解いた。
だが、まだ残っている謎がある。
紫苑は仮面をつけたセーラー服の少女を睨みつけて言った。
「お前は誰だ?」
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