スタート・オブ・リスタート やり直しの始まり

大黒天半太

最初のスタート

 物事の始まりは、いつも特別なものを感じさせる。


 しかし、俺、ロザムが十五歳で故郷を離れたのは、大志を持った旅立ちとも言えない、或る意味どさくさまぎれのスタートだった。


 一人前の年齢になったと見做され、ご領主様に、何かで働いて稼ぎで税を収めるか、相応の労働力となって衛兵や農夫として奉仕するか、それとも、新たな仕事を、まだ見ぬ稼ぎを求めて故郷を離れるか、いずれかを選択する必要に迫られた時、もう一つの選択肢が目の前に現れた。


 村に一人の男が戻って来ていた。


 二年前に村を旅立ち、冒険者になっていたご領主様の三男アレックスおぼっちゃまだ。


 冒険者になると言って、同郷同世代の友人達と一緒に旅立った領主の三男アレックスおぼっちゃまは、この二年余りで一端の冒険者になっていた。

 剣士としてのレベルとスキルは、村の中堅ベテラン達を上回っていたし、仲間の弓手アーチャーも、そこらの猟師に負けないくらい腕を随分と上げていた。ただし、神官プリースト斥候スカウトは、州都のギルドで新たなメンバーに入れ替わっており、元の二人は遺品だけが帰って来た。

 二人の家族は嘆き悲しんだが、領主の息子相手では文句も言えず、冷ややかに成り行きを見ていた。その視線の意味が理解できたのは、ずっと後になって、同じような視線で元仲間の遺族から見られてからだったが……



 ご領主様からの御触れは、その後すぐに出された。


 三男アレックスおぼっちゃまのパーティに入って、冒険者になるというのであれば、村の衛兵用の武器防具の予備が提供されると言うのだ。


 一年間、三男の一党で配下が務まれば、それらは返却不要となり、無償で与えられる。最初の装備にかける費用を心配しなくて済むだけで、それは大きな誘因であることに間違いはない。


 更に、その最初の一年間は、領民としての税が免除されるという。

 むしろ、無職無役で何もしていなければゴロゴロしていれば、自分に課せられる税は、残してきた家族の重荷になる。


 領主側にしてみれば、有り合わせの武器防具の在庫だけで、自分の息子に部下をつけてやるようなものだし、一々新米で零細の冒険者の稼ぎも調べずに済み、先々ガンガン稼げる冒険者になれば、将来はギルド経由でガンガン税が取れるようになる。


 かくして、領主様には領主様の、俺には俺の思惑があり、そのお触れに乗るお調子者達に混ざって、三男アレックス様おぼっちゃまの配下として、俺の冒険者生活はスタートした。


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スタート・オブ・リスタート やり直しの始まり 大黒天半太 @count_otacken

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