送り出せば、戻らぬ命があった。そうであると分かっていながら、旅立った命があった。歌われたのは、送りの歌。戻らぬことを知りながら歌い、そして終わるはずだった。それでもまた、歌う。対の国で、また歌う。覚悟とは何だろう。戦うとは何だろう。ならばその歌は、何のために。そんなことを、考えたのです。ぜひご一読ください。
主人公、伊世本《いせはじめ》は、戦時下の日の本の国で、特攻兵を送り出す歌をうたっていた。ある日、戦場で火の海に包まれ、死を覚悟する。しかし……。目をさました時にいたのは、日の本の国と似て非なる、「日ノ末国《ひのまつのくに》」だった。そこで彼は何を求められ、何を見出すか。戦争の惨禍と、美しい人間の魂が描き出された物語です。歌の響きが、全てを浄化するような美しさです。