オーディションにて

超時空伝説研究所

お名前をどうぞ

A:「次の方、お名前をどうぞ」

B:「あ、あ、あのスタートです」


A:「はい、そうですよ。緊張しなくて良いですから。ね? まず、お名前を聞かせてください」

B:「はい! あー、あー。メーデー、メーデー。スタートです」


A:「いや、スタートはわかったから! 名前を言ってください」

B:「あー、ごめんなさい。とっ散らかっちゃって……。ふうー。スタートです!」


A:「何だよ! スタートしてんだよっ! 進まないから、名前だけ言って!」

B:「ですから、名前はスタートです」


A:「嘘? 名前なの? スタートが? ……帰国子女?」

B:「東京都墨田区出身、56歳です」


A:「年聞いてないよ。結構いってんな! スタートっていう名前なの?」

B:「そんなわけないでしょう。帰国子女じゃないんだから」


A:「そうだね、帰国子女じゃないね! 名前をちゃんと教えて!」

B:「すたーとです」


A:「またかよ! あれ? ひょっとして苗字が『すたーと』さん?」

B:「そんなわけないでしょう。変な苗字っ! わたしの苗字は『戸手とで』です」


A:「戸手さん? さっき『スタートです』って言ったでしょう?」

B:「スターの『戸手』です」


A:「何だよ、それ! スターじゃねぇし! だとしたら、『スター戸手ですすたーとでです』だろう?」

B:「名前が『スー』だから」


A:「名前が『スー』!?」

B:「『スター戸手とでスー』です」


A:「戸手とでスー!」

B:「『珍名さん集まれ!』のオーディションだって聞いて、ワンチャンいけるかなって」


A:「絶対合格だよっ!」

B:「やったぁ。ちなみに家内は『戸手とでんー』です」


A:「『都電ー』!?」

B:「実家が荒川区なもんで」


A:「そっち連れて来いよ! 奥さんの方が面白いだろう? 『んー』って!」

B:「いま、いとこで日系2世の『アー・戸手とで』んちに遊びに行ってるもんスから」


A:「なにその親戚? お前んちだけで番組撮れるじゃねぇか! 嘘だろ!」

B:「ちなみに、わたし、ミドルネームまで入れると、『ホン・戸手とで・スー』です」


A:「うるせぇわ! もういいよ!」


(完)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オーディションにて 超時空伝説研究所 @hyper_space_lab

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画