第8話 腐る目

ここに居られる期間は2週間。


もう2日が過ぎたから残り12日間。


その期間をどう過ごすか?


勿論、復讐に決まっている。


ライオネスの状態から考えて、恐らくばい菌で人を殺すのに2日間は掛かる。


それに検証しないと解らないが、1人に掛っている間は他の人間には使えない。


そう考えるなら、最大6人。


クラス全員を殺すなんてこの期間じゃ出来ない。


だったら、誰から殺していけば良い?


俺の虐めを始めたあいつ等か?


それとも、俺に希望を見せてから地獄に落としたあいつ等か?


自分になにが出来るか考えろ。


俺のステータスはこうだった。


聖夜

LV 1 ←

HP 17

MP 14

ジョブ:ジャームズマン(ばい菌男)

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)空気人間 お葬式ごっこ ばい菌 亀人間 下級人間 腐る目


レベルがある。


良くわからないが、レベルがある世界で勇者など強いジョブが成長したら脅威だ。


それならば、狙うのは五職から狙った方が良い筈だ。


だが、ばい菌は接触しなければ使えない。


僕のスキルが虐めれた事が元で出来たのなら。


他のスキルは一体どう言う効果があるのだろう。


空気人間 お葬式ごっこ 亀人間 下級人間。


これはさっぱりわからない。


だが『腐る目』


これは心当たりがある。


クラスの奴らは僕を見ると……


『なんで、お前ここにいるんだよ! 見ているだけでキモイんだよ! どっか行けよ!』


そう言ってみているだけで気持ちが悪いと絡んできた。


『なんだ!? その目、お前のその目なんなんだよ! お前キモイんだよ。あーあ、目が腐るわキモ!』


そう言われながら良く殴られたり蹴られたりもした。


そして、その虐めは女の方が酷かった。


『あ~あ、キモイ! 聖夜がこっち見ているよ!本当にキモイ!』


『あいつ本当にキモイ! あっ、目が合っちゃったよ、目が腐っちゃう』


そう言ってキモイを連呼されていた。


その結果、僕は大樹、大河、塔子に呼び出されたんだ。


『なんで君は女の子に酷い事するの?』


『ただ普通に生活しているだけで、なんで怒られなくちゃいけないんですか……』


『あのな、女の子たちが嫌がっているんだよ! やめてやれよ』


『あの……僕は本当に……ただ……』


『お前は殴られなくちゃ解らないのか? 女がやめてくれっていうんだやめてやれよ! 糞がッ』



ドガッ


もう殴っているじゃないか……


『ううっ、僕はなにもしていない……それなのに、ただ普通に生活しているだけで殴られるのか……よ』


『あのさぁ、聖夜、鏡をみたら! あんたみたいなキモイ奴を見たら目が腐っちゃうんだよ……そんなキモイ顔を見せられたら目が腐るの……いい、腐るの! あんたみたいなブサイク姿を見せられたら腐るの! 解らないの?』


そういって塔子が鬼の形相で言ってきた……


『お前塔子の目が腐ったらどうするんだよ?』


そういちゃもんつけられ大河にボコられたんだ。


いくらやめてくれと言ってもやめてくれないで……動けなくなるまで大河に殴られたり蹴られたりした。


多分、これから生まれたスキルの様な気がする。


それならこのスキルには人の目を腐らせる力があるのかも知れない。


◆◆◆


見るだけでスキルが発動するなら簡単だ。


彼奴らの元に顔を見せれば良い。


訓練の後の昼食時、昨日はすぐに食事を受け取り隠れるように去っていたが、今日は違う。


この世界に慣れていないのか、それとも生活環境が違うせいか、絡んでくる奴はいなかった。


俺は大樹達から少し離れた場所、塔子から正面にあたる場所で飯を食い始めた。


塔子の隣には大河が座っている。


あとは……こちらを見てくれば、スキルを発動させる事が出来る筈だ。


食事をしながら睨むようにただ、ただ見つめていた。


「おい、お前、俺達になんか文句あるのか?」


「べ、別に……」


「大河よしなよ。周りが見ているよ!」


無言で頭の中でスキル『腐る目』を発動させた。


すると……どちらに使いますか? 大河 塔子 と選択が現れた気がした。


どちらも憎い。


だが、ここは最初から予定していた『塔子』だ。


頭の中で塔子を選択した。


感覚的にスキルが発動した気がした。


「チッ」


「俺達は勇者パーティだ! 今迄とは違う、大河止めておけ」


「聖夜くん、気にしないでほら行きな」


勇者パーティという肩書があるせいか大樹と聖人はこんな反応だった。


わざとらしく小声で涙ぐみながら


「羨ましくて見ていただけだよ……ゴメン」


それだけ答えてその場を去った。


前の世界なら当たり前の行動。


これなら、おかしいと思われないだろう。


これで良い……


「どうした塔子ちゃん、目がどうかしたの?」


「ああっ綾子……大丈夫……目が少し痒くて、うん大丈夫、此処暫く寝不足だったからかしら」


どうやら、うまくいったようだ。


◆◆◆


「八十一、八十二……八十三、ほら体がふらついてきたぞ!」


「ハァハァ……ゼィゼィ……はひっ」


僕は裏庭で兵士の掛け声にあわせて木刀の素振りをしている。


どうやら、僕の体はこの世界の人間から比べてかなりひ弱らしい。


だから、基礎体力をあげる訓練らしい。


まぁ良い……これでムカつく塔子ももう終わり……


何かが引っかかる。


「九十一、九十二……」


「ハァハァ、ぜいぜい」


何が引っかかるんだ。


そうだ……ヤバい。


『そんな物は解らん! だが、お前の仲間にどんな物か聞いてみたが『クズに相応しいジョブやスキル』だと笑っていたぞ』


そう言っていたじゃないか?


僕のスキルは……沢山の人が知っているじゃないか?


『腐る目』なんてスキル名なんだから、すぐに気づかれる。


ヤバい。


頭の中でスキルの解除を無言で唱えた。


なんとなく、感覚的に解除されたのがわかる。


気がついて良かった。

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