第12話 微

俺を食おうとした剣士、猛獣に食われそうなのか……


こりゃあ自業自得か、はたまた因果応報だな。


昨日迄の俺なら、そう思い放っておいただろう。


だがテンプレチートを目前にして、主人公と化した今の俺ならこうだ。


やれやれだな……

男なのは残念だが仕方ない。

困っているなら、助けてやろうじゃないか。


そうと決まれば、先ずは出入口を塞ぐ蜘蛛の糸を釘で取り払い。


新しく手に入れたスキルを、何度か試し打ち。


こうして準備を終えた俺は、猛獣の織を探しひっそりと移動を始める。


素早さが上がったお蔭と以外と近くに居た事で、猛獣を見付けるのは早く済んだ。


眠たそうに横たわる猛獣の見た目は虎で、角等は無く魔物には見えない。


ヤモリvs虎か……


大きさから考えると、さっきの蜘蛛より強そうに見えるが。


魔物ではなさそうだから、比較は出来ない。


取り敢えず正面衝突は避けて、微毒を食らわせ弱らせる作戦だ。


眠気からか俺が小さいからか、

真上の壁に張り付いている俺に気付いてる様子は全く無い。


まあ時間は沢山在るから、気長にチャンスを待たせてもらおう。


そのまま只ひたすら待ち続け、一時間は経った頃。


虎が大きなアクビを始め、作戦実行のチャンスが訪れる。


再び虎が大口を開けてアクビをした瞬間、其の口を目掛けて微毒を吐き打ち込んだ。


だがタイミング良く虎が顔を掻いた事で、微毒は虎の横を通り抜け地面に落ち。


虎の視線は如何にも怪しい俺に向くのだった。


怖ぇ-!!

滅っ茶睨んでる。

HPバーも表示されてるから、明らかに戦闘モードだよ。


だが知能は所詮獸。

自ら大口を開けて威嚇し始めた所を狙い、微毒を三発放り込んだ。


吐き出す間も無く微毒を飲み込んだ虎は、怯む事無く俺に飛び掛かり。


何度も壁を打ち付ける衝撃で、俺は壁から落ちそうになるのを必死で堪えている。


そんな攻防を繰り返し数十分が経った頃、虎の様子に異変が起き。


しゃっくりでもするかの如く、定期的に大きな痙攣をして。


急激な腹痛にでも襲われたかの様に、プルプルと震えだす。


微っていう位だから効果不安だったが、微毒侮れね-!


HPバーも徐徐に減り始め、とうとう俺に襲い掛かるのも諦めたな。


此れが、テンプレチートの力だよ虎君。


こうして虎を弱らせる事に成功した俺は高らかに笑い、其の場を去り。


心地好く隠れ家で寝ていると、ざわざわと大勢の人が移動している声で起き。


虎を密かに弱らせ、助けてあげた剣士の試合が始まる事に気付くのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

テンプレと戦う投稿作家がVチューバなのは異世界過ぎないかっ!! 雨実 和兎 @amami-kazuhito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ