第10話 ファンファーレ

ん?気のせいか……

今、暗闇の中で何か光ったような……


室内からの明かりで入り口付近は見えるが、光りの届かない奥は広さすら解らない。


警戒して身動きが取れずにいると、微かにカサカサと何かが動く音。


居る! 良く見えないが確実に何か居るぞ。


……どうする?

一旦、明るい方に逃げるか。

そんな事を考えていると、暗闇に魔物らしき三つの目が光り。


其の不気味な目は、ゆっくりと俺に近付いて来ている。


アワワワ……


今すぐ走って逃げたい程の恐怖だが、動揺し過ぎて思うように身体は動かない。


ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……


動けず凝視していたせいか、暗闇に目が馴れてきて。


近付いて来ている正体を理解し、ヤバさ度合いも跳ね上がる。


目が三つの蜘蛛だ!

しかもデカイ、そんなに俺と大差無い位に……


戦うか逃げるか考える間も無く、蜘蛛は口から糸を放出。


蜘蛛も暗闇は見えにくいのか、其の糸は俺の肩を通り抜ける。


危ね-!!

ヤバ過ぎるだろ。


そう思ったと同時に、蜘蛛の頭上にはHPバーとベビースパイダーの表示が表れ。


追い撃ちを掛けるように、ベビースパイダーが俺に飛び掛かる。


戦う意思を示す事も、剣代わりの釘を振り回す余裕も無く。


只、釘を持っていただけ。

其れが幸運だった。


持っていた釘は、ベビースパイダーの腹を突き破り。


大口を開け俺に伸し掛かる、ベビースパイダーは悲鳴を上げ。


HPバーが0を表示した瞬間、ベビースパイダーの姿は消え去り。


床に、小さな魔石が転がり落ちるのだった。


振り返ると、ベビースパイダーの放った糸は出入口を塞いでいて。


もしも釘を持っていなければ、あのまま背後に押され。


背後の糸に捕まり、捕食される所だった。


怖ぇ-!

チートどころか、転生初日で死ぬ所だった。


初期装備が釘とかダセーな! そんな風に考えながらも拾った、数分前の俺を誉めてやりたい。


だが勝ったのは俺だあぁあ!

勝利の雄叫びを上げ、落ち着くと同時に思い出す。


そう云えば取得ポイント十倍って……


其の数秒後。


ピロリン♪


新たな世界の門出を祝う様に、ファンファーレ代わりの軽やかな音が響くのだった。



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