第9話 初期装備

人間怖ぇ~!

正気じゃねーよ。

どんだけ腹減ってたら、こんなカワイイ瞳したヤモリを食おうとするんだよ?


コレは人間の仲間を探すよりも先に、魔物を倒して種族進化しないと……


また人間に殺されかけてたら、ハーレムどころか話しにならない。


此処は闘技場みたいだから、人の出入が多そうだし。


取り敢えず、人間の少ない場所に移動しなければ……


まあ俺には取得ポイント十倍スキルが在るんだから、一匹魔物を倒せば何とかなるだろ。


そうなったら、あんな剣闘士も一撃だ。


「何だと……? 剣が全く効かないなんて…… そんな馬鹿な!!」


「鍛え上げ方が違うんだよ、種族からやり直してきな」


キリッ。

楽勝リベンジ確定だな。


こうして闘技場からの脱出を試み、意気揚々と歩き始めたのだが……


何だ此の闘技場、異常に広くないか……


イヤ違うな……


壁に登って見た感じでは、そこまで広くは無かった。


という事は、俺が小さ過ぎるから中々進まないのか。


マズイなコレは……

此処からの脱出だけでも、長期戦になりそうだ。

さっきの剣闘士じゃないけど、何だか腹も減ってきた。


先ずは安全な食料と寝床を確保しなければ、最悪餓死もあり得るぞ。


汗だくフラフラになりながらも歩き続け、やっとの思いで辿り着いたのは小さな部屋だった。


部屋の壁際には、くつろぐ用のソファや軽食用の小さなテーブルが置いて在り。


どうやら闘技場牢屋の、見張り番待機室らしい。


お誂え向きに、今は職員も居ない。


ひっそりと壁に登りテーブルを視ると、食べ残しのクッキーと水を発見。


食べ残しか……

だが腹ペコ具合は、もう限界だ。


さっきの剣闘士じゃないけど、

背に腹は代えられない。


俺は人間をやめるぞ-!

ウリリリーリ-!!

人としての尊厳を棄てた俺は、必死でクッキーをバクつき。

満腹になった後、残りのクッキーと水をアイテムボックスに収納。


そして部屋の隅に小さな抜け穴も見付け、剣代わりの釘も拾ったのだった。


食料も確保したし、隠れ家にはぴったりだ。

これぞ借り暮らしの仮暮らしだな。


初期装備が錆びた釘ってのは、ちょっと不満だが無いよりはマシだろう。


こうして意気揚々と抜け穴に入った先で、闇に光る視線に気付くのは数秒後の事だった。



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