左腕が死んだ日

夕日ゆうや

俺は不幸を救いたい。

 最高の医者を目指し、俺は毎日研鑽を積んでいる。

 今日も医者として患者さんの不安を取り除いた。

 まだまだという声もあるが、俺にとってはこれでも成長したと思う。

 学生時代は不出来で、浪人を二回もしてしまったし、薬学の知識を覚えるのに徹夜したものだ。

 それでも医者になれて良かった。

 頭の出来も、実力もあまり得意ではなかったかもしれない。

 そうした現状が何年か続き、俺はだいぶ実践を詰んだ。

 仲間の医者からは一目置かれることも増えた。

 俺はもっと多くの患者を救いたい。

 すべての人間が幸福で生きられる権利があると思う。

 少しでも人々の不幸をなくせていけたのなら、俺はそれでいいと思う。

 それでいい。

 俺は不幸をなくす仕事をしているのだから。


 悪評が続く医者の阿部あべと合同で手術を行うことになった。

 その頃、俺は『黄金の左腕』と呼ばれるまでに手術がうまくなっていた。

 術中、俺は阿部のメスにより左手の神経を切られてしまった。


 もう左手の精度は落ちた。

 前のように手術することもできない。

 俺の思いは一回の嫉妬で終わったのだ。

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左腕が死んだ日 夕日ゆうや @PT03wing

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