第4話  聖女マリアダンジョンに潜る

 マリアが女神の力に覚醒した時、

新しいスキル【ポーション作成】をも獲得していた。

 それはこの世界での一般的なポーション(錬金術を使った

薬師くすしの作る物とは違って傷にも骨折にも内臓破裂にも

臓器損失、四肢損失にも効果のある最上級の代物だった。

 その原液を聖女のみが魔法で作り出せる【聖水】で希釈すれば

現在流通しているポーションの2倍の効き目を持つ安価な

ポーションとして流通させられる。ここでも値段を吊り上げて

ぼろ儲けしようとする下種な輩が暗躍しそうなので、ビン自体に

擦っても消えない魔法の文字で売値を書いておく。7ヵ国全部に

取り敢えず100本ずつ配れるように予備もよびも含めて

1000本作ったが、材料の古代エンシェントスライムの細胞液が無く

なってしまった。


(タテイタン山に在るスライムダンジョンに行かなくちゃ

いけないわね)


古代エンシェントスライムとは何億年も前から生き残っているスライムで、

たった1匹から細胞分裂で増殖する。粉々にされても再生能力が

高くて粉々になったそれぞれから完全な成体に成長する脅威の

生命力の持主だ。警戒心が強く人の気配がすると一斉に隠れて

しまう、捕獲するには厄介な相手だ。



 タテイタン山はこれから向かうタイル王国の北側の山で、

スライムダンジョンは初心者冒険者がレベルアップに潜る

ダンジョンとして知られている。だが古代スライムの居る

地下5階層には山のように大きなボススライムが居て危険

なので初心者は通れない結界が張られている。

 マリアは冒険者登録はしていないので普通なら入れないのだ

がタイル王国国王が特別に許可してくれた。これから何時

お世話になるかもしれない貴重なポーションを作るために

必要な材料だと言われたら許可しないわけにはいかなかった。

他の6ヵ国の国王の無言の圧力も凄かった。

7ヵ国の人命に関わる問題だからだ。


 タテイタン山に着いた。

 ダンジョン内にはマリア1人だけで潜る。古代スライムは

非常に人の気配に敏感で護衛の兵士がいると現れないからだ。

マリアの魔力は魔物が寄ってこないので不安が無いが

古代スライムは聖女の魔力には好んで近寄って来る性質が

有ると言われる。

 神によって創造された時の安心する神の力を感じるのだろうか

5階層の結界もマリアには効果が無かった。

(大分効果が薄れてきているわね。帰りには結界を張り

なおしていきましょうね)

やがて前方に高さ5メートルもあろうかという巨大なスライムが

現れた。


 『あなたは古代スライムさんですか?私は人間の聖女マリア

と申します。貴方に敵意はありません。お願いが有ってここに

参りました。意思が通じましたらご返事をください』

 マリアは心を込めて念じた。


 『キューあなたからは創造神様のオーラと香りが感じられる。

願いとは何でしょう?キュー」

 古代スライムからも念話が帰ってきた。魔物というよりも

神の眷属の様な気配だった。


『実は貴方の細胞液が欲しいのです。生き物の怪我や病気を

治すお薬を作るのに必要なのです。お願いです。是非お譲り

ください』

『キュー、お姉さんは悪い人じゃないみたいだからあげたい

けど……』

『けど?』

「あたしと契約出来たらね。出来なかったら悪いけどあげ

られないんだ。ごめんね。キュー』

 『契約ってどうすればいいの?』

『キューあたしの体に触って友達になって!と祈ってくれたら

契約できるかもよ。キュー』

『わかったわ』

 『キュー待って。あたしに名前を付けてね。

何せ5億年振りの友達契約なんだものうっかり、忘れてたわ

決してけた訳じゃないからね。キュー』


『まるで玉の様な形だかタマちゃんとか』

『ブー』

『気に入らないみたいねそれじゃあキューちゃんでは?』

『キュキューキュキュー』

『気に入ったようね。じゃあキューちゃん、私とお友達に

なってください。お願いします』

『キュキューキュキュー』

古代スライムこと、キューちゃんの体が綺麗な水色に輝き、

ボトボトボトと小瓶に入った細胞液が落ちてくる。

その数は1万個を超えているだろう。

「キュー。これ位あれば足りる」

「キューちゃん、言葉が喋れるの?」

 「うん。念話でも言葉でも言えるようになったよ。キュー」

 みるみるうちにキューちゃんの体が5メートルの玉から

10センチの玉状になっている。

「体の大きさも自由自在に変えられるようになったよ。必要なら

マリアちゃんの周りの亜空間の中に潜んで居ることも出来るよ」

 「じゃあいつでも一緒に居られるってことね。

でもキューちゃんが居なくなったら、このダンジョンはどう

なるの?」

 「キュー。分身を置いていくよ。

なあに1日もたてばさっきのあたし

みたいな大きさになるから問題ないよ。キュー」


 聖女マリアは大量の古代スライムの細胞液とキューちゃんと一緒に

旅の仲間達の所へ戻った。


 その頃アガタ王国には聖女マリアの結界がなくなったのと

聖女マリアの忌々しい聖なる魔力が消えたことでスタンピードが

起ころうとしていた。

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