第3話
レオンの鍛錬が終わり、レジーナは屋敷の私室に戻っていた。今は真夜中だが部屋は明るい。壁や天井に光を放つ結晶を埋め込んでいるからだ。
両袖机の席に着き、レジーナは少し笑う。彼女はレオンの鍛錬を思い出していた。
レイラ以来の才覚。磨くのが楽しいと感じる原石。まさかこんな近くに転がってたなど思いもしなかった。
「こんな夜遅くまで……。まさか、無理やり鍛錬させました?」
イーリスが紅茶をカップに注ぎ、レジーナの方に運ぶ。
「私を何だと思っているんだ、お前……。そもそも無理やり鍛錬させたって、やる気がないやつは伸びないだろ……」
レジーナの前にカップが置かれるが、手に取ることはなかった。彼女は熱い紅茶が好きではないので、いつも冷めるまで待つのだ。
そんな子供っぽい主の姿を見て、イーリスは「それは、そうですが……」と言いつつ焼き菓子を用意した。
「本人の意思だ。アイツは本当に強さを求めている、かつての私やお前のように」
焼き菓子を頬張りながらレジーナは喋る。
「……なぜ今さら」
イーリスは自分用のカップに紅茶を注ぎながら疑問を口にした。
「さぁな。アイツも男だから、強さに興味を持つ年頃というだけかも知れん」
レジーナはレオンの言葉を思い出す。レオンは自衛の為だと言っていた。だけどレジーナは信じていない。
レオンの鍛錬に向き合う姿勢は真摯なものだ。自衛という適当な理由では違和感があった。
何か大きな目的があることをレジーナは確信している。
「今まではただの凡愚だと思っていた……。しかし違った」
ぼそりとレジーナは呟く。その言葉に「才能がありましたか……。まぁ貴族の長男ですからね……」とイーリスは溜息を吐いて落胆した。
彼女にとってレオンはレイラに危害を及ぼす敵だ。そのレオンに才能があるなど、心地の良い話ではない。
イーリスがカップに口をつけ、目を伏せる。するとレジーナは「レイラが今世紀最高の天才だと思っていたが、今は違う」と真剣な声色で言う。
いつも冷静なイーリスが目を見開き動揺する。
「アイツは強くなるぞ、レイラよりずっと」
レジーナは不敵な笑みを浮かべていた。その自信に満ちた表情にイーリスは一抹の不安を抱く。
◆
【神々掲示板】
A神「また新しい転生作品が始まったのか……」
B神「本当に転生させるノンフィクションとか、笑える」
A神「このゲーム知っている俺は笑えないなぁ」
B神「そんなひどい作品なの?」
A神「バッドエンドしか存在しない超鬱ゲー。どのルートでも登場人物は殆ど死ぬ」
B神「うわぁ……。流石に女神ひでぇな。そんなゲームに転生させるなんて、人の心がねぇのかよ」
A神「せめて緩い内容のゲームに転生させてやればいいのに」
C神「ついに鬱ゲー転生かぁ。いつか来るとは思っていたよ」
D神「最近はハッピーエンド作品が多くてマンネリ化していたからなぁ」
女神「私は凄く優しい神だよ。だから動画編集してエッチなシーンは削ってる。人の価値観に合わせて配慮してる。本当に酷い神ならこういう繊細な気遣いはできないよ。それに異世界を創造できるのは私だけ。もっと敬うべき。そもそも私が編集した動画を観ている時点で同罪でしょ?」
A神「長文キッツ……」
C神「唯一無二の能力を異世界人虐めに使うとか笑える」
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