なーなーわっ!〜失態と希望〜

あー…俺は、多分失態を侵してしまった。


最初にヒロインだと思っていた人が、まさかの実態を抱えてる人だったなんて。そんなこと、大体のやつに考えつくわけない。

前の学校の時、性別違和がある奴がなんか公演に来てた気がする。そんなことすら覚えてない。なんとなーくそんな話があったことだけ覚えているが…。


ほんとに記憶がないから、なんとも言えない。





みんな「そういう」可能性があることはわかっていると思う。でも、身近にいざ現れると緊張や困惑で何も言えないことになるかもしれない。

女子校に入ったら女子を好きになるのが「当たり前」になるのかもしれない。

そんな人ばっかりいるところにいったらそれが「当たり前」になるのかもしれない。



でも、ここは「共学」の世界だ。

それが当たり前なわけじゃない。





そんな考えが頭を巡っていた時、ふとこんなことを思いついた。




「あいつ、どの性別のやつを好きになるんだろう?」


俺は気になり出したら止まらないタイプだ。何か情報がないかネットで調べてみる。



それでも、やはり情報は情報。どこまで信用できるかわからない。

たくさんのデマと思われる情報が出てくる。本当に信用できそうなものから、明らか詐欺ってるだろ、というものまで。全て嘘かもしれない。情報が捨てきれない。頭の中がオーバーフローする。


だったとしても。あいつに対して、何か恩返しをしてやりたい。


根暗インキャの俺に、こいつという希望を与えてくれたこと。

こんな信憑性がない俺に、話してくれたこと。

そして、俺に希望を託した人。





そのために、助けなくちゃ。







あいつは、正味陽キャで、俺と関わってるような人じゃない。

あんなやつと話せたことが逆にすごい。

だからこそ、あいつとどうやってきっかけを掴むか。

そこまで考える必要がある。あったのだが…?




「おっはよぉ〜!」

いや、教室に入ってきていきなり大声の挨拶かましてきやがった。

おもしろ。





その後少し話していたら、なんだかおかしなことに気づいた。

こいつ、無理やり声高くしてないか?

まあ、安易に想像がつくので別に踏み込まないけど。


喉枯れそうだからのど飴あげようかな。余計なお世話かな。


そんなこと考えながらたわいのない中二病ワードを話していると、ふと沈黙が訪れた。


「「あ、あのさ」」




二人の声が同時に重なる。

それに頬が赤くなる。顔が青ざめる。

「そちらお先にどうぞ」

「いやいやお先に」

「いやいやいや」

以降無限ループ。ずーっとおんなじ話をくりかした。


そして、俺から話を切り出すことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園、男女、中二病⁉︎どうせ恋なんてできませんね。 結花紡樹-From.nanacya- @nanacya_tumugi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ