第13話 御前試合②~俺達の“切り札”~
バルナの頑張りで敵の出鼻をくじくことと数を減らすことが出来た。それだけでなく、いつまたバルナの砲撃が開始するかわからないので数の優位をいかせずにゴーレム兵を小刻みにこちらに突っ込ませてきている。
「後は俺達に任せろっ!」
大剣に魔力を通し虹色に輝く刃を纏わせたアッシュが突貫していく。勿論俺も負けじと突っ込む。残り15体ぐらい、各個撃破していけば倒せない数じゃない。剣を構えてアークスラッシュを繰り出すと、斬れはするが異様に硬い。装甲が強化されているのか、これを斬り続けるのは中々骨だぞ。
「でぇぇぇぇぇぇいいっ!!」
一方で、アッシュが大剣で薙ぎ払う度にゴーレム兵が飴細工がとけるかのように溶解して斬り捨てられていく。
「ダニィ?!ゴーレム兵の装甲がああも簡単に……!!」
M字ハゲをした敵騎士が驚きの声を上げている。ゴーレム兵の中に混じって敵の騎士もこちらに攻撃を仕掛けてくるのでやりにくいことこの上ない。
試作品で1振りしか用意できなかったけど、もう1本用意して連結したり中折れ式で背中に背負いやすくしたりとか色々と改良の余地はありそう。そのあたりはまたドーブルスと要相談だなっ。
「凄い、全然魔力を消費してないのにこの切れ味……これならいける!!」
スパスパとゴーレム兵が切れることに驚きの声を上げているアッシュ、実に頼もしい。大剣を振り回しての大立ち回りは派手で見栄えも良く、ギャラリーもアッシュがスタイリッシュにゴーレム兵を斬り捨てるたびにに歓声をあげいるので観客はほぼこちらサイドで試合を見ていると言ってもいい。これは予想外の収穫だった。
俺は都度ものまねアーークスラッシュで1体ずつ撃破させてもらう。バルナやアッシュに比べて地味になっちゃったけど仕事はきちんとするぞ。
「調子にのるなよゴミカスがぁっ!!」
数の優位を活かせないままじりじりと数を削られていく事に焦れたのか、敵陣最奥から響くリバルくんの怒声を合図に大型ゴーレム2体が俺達相手に突っ込んできた。パンチでもくらえば大けが間違いなしなので回避する。
「クソッ、なんなんだよこいつっ」
同じように大型ゴーレムの攻撃を回避しているアッシュが舌打ちしている。
「ハーッハッハ!強力な核を使ったゴーレム兵だ、ただの雑兵とは違うぞ!さぁ……撃てェッ!!」
大型ゴーレムの全身の穴から魔法の矢が飛んでくる。バルナのマグナム弾よりも威力は劣るが太いレーザーのような魔法の矢を回避して懐に飛び込んできりつけるが、剣が弾かれる。
「……あれっ、アークスラッシュでも通じない?!」
「馬鹿めっ、そいつに物理攻撃は通じない!お前が幾ら化け物みたいな達人技であっても、物理攻撃である以上敵ではないんだよぉっ!!」
うわぁ、そういうことか。ものまねでは属性攻撃を再現したりできないからこういう弱点もあるって訳か。困ったな。
巨大ゴーレムに攻めあぐねているが、アッシュの方は魔力を付与していることでゴーレム兵にダメージを与えれているようだ。
「はぁーっ!でぇいっ!!」
魔法の矢を大剣で切り払い、接近しては斬りつけてダメージを与えて言っている。騎士の家系というだけあって戦いのセンスが俺とは段違いに高い、このあたりは持って生まれた才能や子供のころからの鍛錬なんだろう。戦場だと頼りになりすぎる……!
「一時はどうなる事かと思ったがァ、お前たち下賤の者がこの俺に勝てるわけ等ないのだぁ!さぁ、跪いて命乞いしろぉ!」
「なんでそんなに威気りたいんだぁッ!!」
跳躍したアッシュの瞳の色がうっすらと変わる……マカダミアンナッツ的ななにかでもはじけたみたいだ?元々の動きからさらに反応速度が上がり、ゴーレムの腕を回避しながら胴体を横薙ぎに切り払い怯ませる。さらに右足を切り落とし、体勢を崩した巨大ゴーレム兵の身体を駆け上がってその頭部に剣を突き立てると、ゴーレムが動きを止めた後に自壊した。なんか割れた感じのアッシュ強すぎワロス。
ちなみに俺も魔法の矢を回避しながら攻撃が通じないかいろいろと試しているけどなかなか通じなかったので、寄ってきている等身大サイズの方のゴーレムの数を減らしながら巨大ゴーレムを引きつけたり2人の敵騎士を相手取る。
槍持ちの騎士の方は近くの等身大ゴーレム兵が邪魔で槍の間合いをいかせていなかったので、接近してフタキワパンチで沈めてやる。折角なので槍は拝借させてもらい、M字ハゲの方に向き合う。
「巨大ゴーレムが……もうだめだぁ……おしまいだぁ……」
M字ハゲの騎士が情けない声をあげていたのでその隙に容赦なく攻撃を叩き込んでやる……戦いは非情だもんね。そうしてM字ハゲは吹っ飛ばされた後に動かなくなった。ものまね技にそれなりに対応してたから弱いわけじゃないんだろうけど心が折れるの速すぎなんだぜ。
その間にアッシュがこちらに駆け寄ってきていて、俺と戦っていた巨大ゴーレムに斬りかかった。
「こいつは俺に任せろ。指揮官の方を!」
「悪い、頼んだ!!」
巨大ゴーレムをアッシュに任せ、道中の等身大ゴーレムを斬り捨てながら大将首に迫る。
「なぁ、お前王子だろう?大将首だ!なぁ大将首おいてけ!!」
「ウォッ、アヒィッ?!来るんじゃないっ!!」
超巨大ゴーレムの肩に乗っていたリバルくんがゴーレムの頭の後ろに隠れるように回り込む。……よし、拝借した槍も中々の業物のようだし、折角なので槍で物真似をしてみよう。
「この一発は手向けに持っていきな――“突いたり穿ったりなんか色々する飛翔の槍(ゲイボルク)”!!」
ものまねでどこまで再現できるか試してみたかったのでゲームにでてきた全身タイツの槍兵ニキの技を物真似してみる。槍の投擲技なのだがものまねを発動した瞬間に全身の筋肉が隆起する感覚の後、超速度で投擲した槍が粉々に爆散して礫の雨のようになって超巨大ゴーレムを射抜いて衝撃に土煙を舞いあげる。やったか……?!
だが、煙の中から、槍の破片で装甲を凹ませてはいるが健在な超巨大ゴーレムがのしり、のしりと歩いてきた。……これは元々の技がではなくて俺の物真似で再現しきれてないからのような気もする。成程、色々とこの戦いで学ぶことも多いな……つまり俺はもっと強くなれるって事だ。
『フゥッ、驚かせてくれる……だがもう無駄だ。俺はこの超巨大ゴーレムの中!これでお前達に手出しは出来ないというわけだよ!!』
おぉ、あの超巨大ゴーレムそんな事も出来るのか。でもものまねゲイボルクでもピンピンしてるようなものの中に入り込まれるのは確かに厳しい。アッシュは巨大ゴーレムの方と戦いながら等身大のゴーレム兵も相手してくれているので中々に厳しそうだ。バルナもまだ肩で息をしている。これは決め手に欠けるな、どうするか。
「――――カストル!!」
味方陣地の最奥から聞こえたのは、ドーブルスの声だ。どうしたんだろう。
「大丈夫、こちらにも“切り札”がある!結構な賭けになるけれど……王子と相乗りする勇気、あるかい?」
ドーブルスにしては珍しく、わざわざ確認をするように聞いてきている。
観客や王族を含めてその場にいる皆がそんなドーブルスの言葉に驚いて様子を伺っていた。
「奥の手ェ?はーっはっは、全属性が使えるだけのお前に、今更何ができるっていうんだーこの馬鹿め!!!」
リバルくんの乗る超巨大ゴーレムが俺達を指さしながら、嘲笑するように上半身を上下している、いちいちムカつくなぁあの野郎。お前あとでぶちのめしてやるからな!
……まったく、今更何を聞いてくるかと思えばそんなの答えなんてひとつしかないだろ。
「……あぁ、やってやんよ!!」
俺の言葉に、見えない筈のドーブルスが笑ったような気配がした。
「そう言ってくれると思ってた……いくよ“精霊憑依”!!」
そんな言葉と共に、ドーブルスがいた場所に光の柱が産まれ、天高く伸びたそれが俺に向かって降ってきた。……光に包まれるのを感じた後、何かが俺の中に入ってくる。違う、これは誰か。ドーブルスだ!!
「……凄い。俺の能力が底上げされただけじゃない、お前の魔力がのっかってるのと、全ての属性が使えるのを感じるぞ」
『これが俺の切り札、転生チートの“精霊憑依”。他の人に憑依して俺の能力を付与できるんだ。色々と制約や反動もあるけど、今はこれを使う時だと思ったから』
……そうか、ドーブルスも転生者だから転生チートを持っていてもおかしくないもんね。しかし俺の、いや俺達のチートがこう、見事にハマっているというか短所を補って長所を伸ばすの噛みあいすぎるだろう。
この状態なら……おれのものまね単体ではできなかった属性由来の技だって完璧に再現できる!!
「まるで2人で1人の仮装バイカーみたいだな」
『やっぱり?俺もそう思ってたんだよねー、っていうかカッちゃん特撮も見てたんだ』
そりゃもう週末は特撮と女児向け返信ヒーローアニメからはじまりますからね、つくづく話が合う―――相棒だぜ!
俺達を包んでいた光が消えると、超巨大ゴーレムが身構えているのが見えた。
「そんなこけおどしが通じるか!ドーブルスとカストルが一緒になったところで“ドブカス”だろうがっ!!」
そう叫んで突進してくるリバルくんwith超巨大ゴーレム。
『カッちゃん、ほら、ここでかっこよく決め台詞!バシッと!!』
おっとそうか、そうだな。こういう時には……こうじゃ!
サムズアップした指で自分自身を指さしてから半身をひねって腰を落とし、両手を左右に広げながらかっこよくポーズを決める。
「――――俺、推参!!」
『そこはお前が犯した悪事は幾つだ、じゃないの??』
ドーブルスにツッコまれてしまった。しまったそっちの方が良かったかー。
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