第4話 落とし物


 『決闘変(?)』に頂いたコメントの返信にも書いたのですが、この話は救いもオチも無い話なので、思い出しつつ書いていると、なかなかキツイものがありました。

 創作と違い、暴力シーンそのものより、被害者が理不尽に虐げられ、加害者に何の処罰も下っていないところが……。

 そもそも、現実ってそんなものと言い切ってしまえばそうなのでしょうが。

 苦手かなと思う方は、スルーしてください^^;

    

    ◆◇◆◇◆◇◆


 遠足先で起こった話です。


 すべてを目撃した訳ではなく、後で色んな人から話が回ってきて、一連の出来事を把握しました。

 また聞きの部分もあり、会話などは想像で補っている部分もありますが、あのとき起こったことを時系列で書いていきたいと思います。


 当時、三年生は、八クラスがあったと記憶しています。

 遠足で訪れた場所はどこだったのか、すっかり忘れていますが、私たちは一組から順に、八クラス分の長い列を作り、山中のハイキングコースを歩いていました。

 

 各クラスは、それぞれの担任が引率しています。

 六組の担任は、まだ若い女性のD先生でした。

 M田くんは六組、このD先生のクラスの生徒です。


 「先生、これ落ちてました」

 六組の誰かが、拾ったハンカチをD先生に渡しました。

 「……これ、〇〇さんのハンカチだね」

 ハンカチに書かれていた名前を見たD先生は、持ち主が三組の〇〇と言う女子であることに気付きました。

 そこで、D先生は、M田くん呼んだのです。


 「M田くん」

 「なんすか?」

 「これ、三組の〇〇さんが落としたみたいなの。

 パッと走って、渡してきてくれないかな?」

 「えーー」と、面倒臭そうな顔をしながらも、素直にハンカチを受け取るM田くん。

 いいヤツなんです。

 

 「頼んだわよ」

 「はいはい」

 敏捷で小柄なM田くんは、山道の端をひょいひょいと走り、並んで歩く生徒たちを追い抜いていきます。

 前を行く、五組を追い抜き、次に四組の横を通り抜けて行こうとしたとき、M田くんに激しい怒号が投げつけられました。

 「こら、M田!

 お前は、何でこんなとこにおるんじゃ!

 後ろの六組やろが!」

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