第2話 旅立ち

魔王から世界を救うことになったエレナは、家での支度を済まし、月の女神のいる洞窟へと向かった。

洞窟へつくと

「エレナさん、準備は整いましたか?」

と、美しい声が響き渡る。

「終わった!…けど、世界を救うって言っても、どうすればいいの?」

私は聞いた。

「……そうですね。では今から色々と説明させていただきます。」


「まず、私は、月の女神と申します。

今、魔王によって、神殿に住まう神々の力が薄くなりつつあります。

神々は、それぞれの神殿に住み、その神殿にある、神とその神殿の力の心臓となるアーティファクト創造物、"星光の魔晶せいこうのましょう"を守っています。

私の場合は、この洞窟にあるその紺色に光る宝石のようなものです。

魔王が、まだ小さい魔物だった頃、生命の神の神殿に、侵入し、神殿や神の力の心臓であるアーティファクト、『星光の魔晶』の力を盗んだことが発端です。

魔王は、その魔晶の力で、この世界に多くの魔物を生み出しました。

世界を救うには、その魔王から生命の星光の魔晶を取り返し、元あるはずの生命の神殿に戻す必要があります。」


話が長い…

「簡単に言うと、神様と神殿の力の源である星光の魔晶ってやつを奪ったことによって、生命神の力を奪った魔王がいる。

で、それを倒して、星光の魔晶を生命の神の神殿に返せばいいってことでしょ?」

簡単そうじゃん!

「はい、そうですが、問題が一つあります。

それは、魔王が、生命の力を奪ったことによって世界の神の力のバランスが崩れてしまったことです。

神の力のバランスが崩れたことで、各地の邪神や、その邪神の神殿に施されていた封印が解かれつつあることです。」

なぜだか、楽しそうだなと思った。

「楽しそう!早く行こうよ!!」

場の雰囲気に合わないようなワクワクとした陽気な声で言った。

「あなたもまた、冒険がお好きな方なのですね。

感謝しています。では今から出発しましょう!」

私が首を縦に振った瞬間、月の女神の星光の魔晶の前に、人一人立てるくらいの魔法陣が現れた。

「そこに立ってください。私の神殿に転送します。」

"神殿"。確か、星光の魔晶は神殿にあるはずだ。しかし、実際、今、魔晶はここにある。

何となくわかった気がした。

月の女神が姿を表さない理由、いや、"表せない"理由。

彼女は弱っている。

私は悟ったが、決して口には出さなかった。


私は、言われるままに魔法陣の中に立った。

すると、いきなり、体が紺色のキラキラとした光に包まれた。

次第に眩しくなってきたので反射的に目をつぶった。 

目を開けると、そこはきれいな宮殿のようなとこだった。

「ようこそ、月の神殿へ」

あの美しい声、月の女神の声が聞こえた。

ほほう、このお城が神殿というものか。なかなかご立派ではないか。

「気に入っていただければ幸いです。」

この人、心読めるのかな?

「では、旅に出るにあたって、いくつか注意事項を言います。」

月の女神が言った。

「まず、邪神にあったら、逃げてください。

邪神にはもともと神であったものもいます。

ですが、もう邪神になってしまったものは、治らないと伝説では言われています。

邪神は、命や心を失った神です。

まずはまだ命や、心がある貴方自身を大切にしてください。」

私はゆっくりと首を縦に振った。

「そして、神殿に行ったときに泣き声などが聞こえても絶対に行かないでください。

邪神が誘っている可能性がとても高いです。

邪神が近くにいるときは、私ができるかぎり知らせますが、私にも限界があります。

どうかご自分の判断で正しい行動をしてください。

何があろうとご自分の命を一番に大切にしてください。」


自分のことは自分で守れ、昔から色んな人に言われてきた。

そんな事はもうわかっている。命となればなおさらだ。



しかし……



私は渋々頷いた。

当然といったら当然だ。しかし、邪神という存在もどうにかできるのではないか?

さっき女神はああ言ってたが、頑張ればいい神様になってくれるのではないか?

まぁ、私が知る余地はまずない。


私は、神殿の中を探索することにした。

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