第43話 主人公になれなかったときの悔しさよ、やすらかにあれよ








  人はそうだな、ヒーロー / ヒロインに憧れを抱くことがあるだろう。


 もちろん私もそうだったし、画面の前の皆様もきっと同じだったかもしれない。


 憧れとはなんだ?……ああ、未だに理解できないというか、理解しがたい。


 例えばそうだね、私が小学生のときだったか、好きなアーティスト、あるいは憧れのなんとかを書きなさいと言われた。


 さて、好きとはなに?……あまりにも定義が曖昧というか、曖昧な割には強烈な魔力的なものを帯びている言葉だね。


 わからない、理解できない、加算乗算していき、どんどん大きくなっていけばさ、減算どころか、割り切ることすら不可能になる、とても不思議なものだ。


 一口に好きと言っても、それは果たしてどのぐらい?……なんて示す方法はない、一言で表せないものをどうしろと言うのだろう?


 次に憧れ?……わからない、理解できないから合わせる他になく、モヤモヤしたまま好きの一種として混同し、余計なもちものの出来上がり。


 目に見えないにも関わらず、持ち歩くには重くて重くて仕方ないものと付き合わざるを得ない。


 そうしてなにも知らないまま、知らないが故に自信を持てないまま大人になればさ、とっても息苦しくてたまらなかった。


 ああ、それなりに恋愛経験をしたところで、子供のころから抱えていた目に見えなかったものが、ある日突然現れて聳え立つ高き高き壁を目の前にして、私の心に重くのし掛かるのだ。


 なぜ、いま気付いてしまったのだ?


 最高のスーパーヒーロー / ヒロインを前にして、なぜ、なぜ今現れた?


 好きという感情が大きくなり、心の底に潜んでいた余計な付属品を付け、なぜ現れた!?


 私はなぜ、いつものように行動しようと立ち上がったその時、連鎖したのか?……参ったね、どうやら私は、とんでもないものを連れて挑もうとしたらしい。


 この当時の状況は最悪だ。


 例のパンデミック、職場は遠い他県へ異動、異動先の人材から業績、果てはデベロッパーまで最悪、上層部はクレイジー、交遊関係に暗い影が射し始め、その最中に最高のお姉さんに恋をした……いつの間にか、好きに複合して憧れなんてものを抱く程の誤認から混乱したのか、はっきりしないモヤモヤを抱えたまま、救いを求めたのかもしれないね。


 ああ、当然のようにさ、ここに書いた失敗談へと名を連ねるぐらいなんだ……結果はお察し。


 私はね、数多の困難を克服出来る、物語の主人公のようにはなれなかったのさ……この時の悔しい気持ちをさ、乗り越えた今!!……ようやくやすらかになったのが、今日の私に至った物語さ?


 失敗談なんて誰にでもあるだろ? HAHAHA!───。








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