第4話

「私、レズビアンなんだよね。知ってる?レズビアンって?」

 不思議と動揺はしなかった。

 だから、思ったよりも言葉はすんなり口から出てきた。

「はい。知ってます」

「よかった」

「だから私ね、彼女がいたの。その子もレズビアンで、大出真理って言うんだけどね…」

 大出真理。その名前に覚えがあった。

 さっき見た写真が脳内に写し出される。

 そうだ、先輩の彼女。

 そういう名前だった。

「それでね、その子とはずっと一緒にいたんだ。色々な…」

 え。待てよ。

 でも、先輩のレズビアンの彼女は男の先輩と付き合っている。

 ってことは、先輩は実は女子で男装している?

 いやいや、それはないだろ。

 確かに、かっこいいというよりは可愛い顔立ちだけどな。

 一緒に温泉に行った事もあるし。

 そもそも、先輩の彼女の名前が大出真理じゃないかもしれないし、同姓同名かもしれない。

 きっと、そうだ。

気づけば先輩の話は終わっていた。

猫が退屈そうにあくびをする。

「あ、つい。たくさん、話しちゃった。ごめんね。」

「いや。猫カフェに行こうって言ったのは俺ですし。」

「先輩、あの。」

「ん?」

「先輩の元カノさんの名前って、何でしたっけ?」

「あぁ。大出真理だよ。大きいに出るに真実の真に理由の理。」

 俺はその名前を家に帰るまで忘れない。

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