第14話 マグ登場

放課後、俺は英玲奈、柚葉、絵里と帰路についていた。


「部活ないって最高〜」

「柚葉先輩、唐揚げ棒食べよ」

「おっけ〜」


身体をぐーっと大きくそらし、伸びをする英玲奈と柚葉。

俺も食べたくなってきたな、唐揚げ棒。


「私はアメリカンドッグかな、セブンの」

「そういや、くじで当たったバニラアイスまだ交換してねぇ、どうすっかな...、!?」


セブンという単語でふと一週間前のことを思い出した俺がボソッと呟いた瞬間、三人が前に来て、キラキラと目を輝かせる。

女子は甘いものに目がないというがアイス如きでここまで目を輝かせるとはな...


「翔、ちょうだい♡」

「お願い♡」

「私も欲しいな♡」


柚葉のウインク、英玲奈の投げキッス、絵里の右腕にハグ。

こ、これがハーレム!!

き、効くぜぇ...


「はい」

「ジャンケンポン!」

「っし!!!」


財布から取り出し、渡すと三人ほぼ同時に掴む。

そして、柚葉が勝ち取った。


「しゃーない、自分で買うか」

「チョコにしよ」


ちょっと、否。

かなり悔しそうな英玲奈と絵里。

そんなにアイス食べたかったんだ...


「おじさん誰!?怪しい!」

「誰か通報して!110番!」

「キャァァァァァ!!」

「ち、違うよ!俺はホントに担当!

ほら、名刺!」

「偽物だもん!」


叫ぶ女生徒。

弁明してるのは親父だ。

親父...なんでいるんだ...


「大丈夫です、その人俺の父親です」

「なんだ、相良君のパパさんかぁ、なら安心。

すいません」

「なんだぁ、びっくりしちゃったよ、ごめんなさい、おじさん」

「いいよ、慣れてるから」

「慣れてるの、やば」

「草超えて森」


女生徒はギャルっぽい見た目に反さず、ギャルだった。

笑いながら親父の背中をバシバシ叩く。

年上に対して、失礼だと思うが親父はどこか嬉しそうなのでむしろご褒美かもしれない。


「おじさん、そのうち捕まるよ〜?」

「おじさん、知り合いから逮捕者でるのは勘弁ですからね〜」


ニヤニヤする英玲奈、絵里が親父を挟む。

親父も嬉しそうだ。


「ところでなんでおじさんここにいるの?」

「営業」

「エロい意味に聞こえる」

「というか、親父、なんで俺をここに推薦してたのかわかった気がするぞ」

「お小遣い増えてよかったな」

「あぁ、楽しみにしてるよ」

「まかせろ」


おそらく親父がやたらここをプッシュしていたのはここなら契約が取り放題だからである。

よし、こうなったら小遣いをあげてもらおう、2万くらい。


「おじさん、通報回避したんだからさぁ、コンビニで奢って?」

「ちょっと英玲奈ちゃん、それは図々しいよ...」


絵里の言う通り、かなり図々しく非常識だがウチの親父は...


「オッケー、経費にしとく」

「やったー!!」


女子に対して、めちゃくちゃ甘いバブル期のおじんなので気にしない。

この場合、英玲奈は機転を効かせたことになる。

図々しいかどうかは受け取る人次第ということだな。


「そういや、今日の夜飯何?」

「知らん」

「お寿司食べたいなぁー、ねー、パパ

いいでしょ?」

「オッケー、パパ出しちゃう」


どこからともなく現れた夏葉は親父に抱きつきスリスリする。

これぞ、秘技にゃんにゃんモード(あや姉命名)。

親父はとても嬉しそうだ。

あ、ちなみにこの秘技は娘しか使えないため、俺はママに別の秘技を使う。

スリスリはしないよ?


「今日はお寿司だよー」

「マ!?」

「パパ大好き!愛してる!」

「ありがと、パパ、いつも仕事お疲れ様」

「パパも」


玄関を開けると夏葉が元気よく叫んだ。

先に帰っていたあや姉と七瀬が親父とハグを交わす。

言うまでもなく親父はハッピーだ。


「ママ、アイス買ってきたよ」

「ありがと、しょーくん」


俺はこっそり、抜け出しママに買ってきたアイスを渡した。

ママは受け取り、満面の笑み。


「今日、英玲奈ちゃんと絵里ちゃん泊まるのは2人のママに言っといたから安心してね」

「ありがと」

「お寿司楽しみだね」

「だね」


英玲奈と絵里は今家に着替えや明日の荷物を取りに行っている。

ちなみに絵里は一人っ子だ。


「にゃー」

「マグ〜、元気してたかにゃあ?」

「にゃーお」

「しょーかー、元気してたかー

可愛いね」

「ニャー」


飼い猫のマグロ。

通称マグ(猫種はベンガル)が俺の足にスリスリしてきたので抱っこしてみる。

首につけている鈴が鳴る。


「マグ〜、あや姉となな、なっちゃんもいるよー」

「にゃー」

「おかえりだって、ほら、ただいまって返して三人とも

ねー、マグ」

「しょーくん、可愛い」

「ホントマグといると人変わるんだから」

「可愛いよ、翔兄」


俺は抱っこしたまま、玄関に行き、マグの手を軽く握り、振る。

これが可愛いんだ、おかえりフリフリ。

三人はクスッと笑い、手を振りかえす。


「翔、俺は」

「親父もいるってさ、マグ」

「にゃー」

「おじんは勘弁だって」

「言ってないだろ、そんなこと!」


マグは親父の方を向かなかった。

やはり、猫もおじんは嫌らしい。

しょうがない、おじんだもの。


「にゃー」

「どした?」


暴れるマグ。

俺はしゃがみ、下ろす。


「マグくん!?」

「にゃあ」

「可愛い」

「あとで写真頂戴ね」


マグはくつろぐ柚葉に飛びつき、顔をぺろぺろした。

猫と美少女。

とても映える絵だ。

俺は連写した。

素晴らしい、美しい。

これは待ち受けだな。

ニヤニヤしているとウインクまでくれた柚葉。

やっぱり...

ーー柚葉しか勝たん!

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