第13話 小さな嘘①

「ソラ」

「おう」

「ソラちー、最新刊読んだよ、面白かった」

「ありがと、絵里」

「次いつ発売?」

「6月かな」

「オッケー」

「まさか、アニメ化まで行くなんてなぁ」

「今度声優さんに会えるらしい

はやみんだってさ」

「マ!?サイン頼める!?

というか、行っていい!?」

「ソラ、俺部活サボるぞ」

「いや、無理」

「マジかぁ」

「絵里残念会するか」

「そだね」


通い慣れたグラウンド。

言ってもまだ数週間だが。

につくと現役人気漫画家であるソラが入念にアップをしていた。

俺と絵里は挟むように座り、雑談を始める。


「ほら、人気漫画家にちょっかい出さない。

翔の童貞がうつったらどうすんの」

「童貞はうつらねぇよ、つーか、ソラも童貞だろ」

「え?違うけど?」


今年最大のビッグニュースである。

まさか、先を越されるとは...


「ま、マジか、お前ヤッたのか」

「うん」

「気持ちよかったね」

「七瀬?」

「あれ?言ってなかったっけ?彼ぴでーす」

「も、揉んだのか、な、ななの胸を」

「うん、柔らかかったよ」

「変態」

「親父が聞いたら泣くぞ」

「ママに言ったら同じ答え返ってきた。

今度言ってみようかな」

「やめなさい」

「うっそー」


しかも、相手は七瀬。

この2人中学の頃からかなり仲良しでしょっちゅうお互いの家に行ってたがそういう関係だったのか。

なんか、複雑だ。

兄弟の事情は知りたくないこともあるがこれは1番知りたくないからな。

ちなみに七瀬はかなりおっぱいが大きい。

なんと93!


「あ、あのさ、ななちゃん、ちょっと女の子同士で話そ」

「いいけど、なんで?」

「翔くん、しー!!」

「なんも言ってねぇよ!」

「ソラ男同士で話そう」

「おっきかったよな?」

「おっきかった?」

「うん、うん♡」


相思相愛なようでよかったですね。

くれぐれも問題起こさないようにしてくれよ。


「全然集中出来なかった〜!!」

「俺もだ、まさかナナが...」

「お姉さんと呼びたまえ」

「やだ」


練習が終わり、俺はベンチに寝転がり、絵里に膝枕してもらう。

七瀬はそんな俺をしゃがみながら見つめる。

七瀬が俺より大人なんて信じられない。

俺はため息を吐き、デコピンした。

なんか本当にお姉さんに見えてムカつく。


「なっちゃんも出来たって言ってたよ?」

「夏葉はまだ中3だぞ!?」

「女の子は早いよ、ね、絵里ち」

「うん、早い子はね」


夏葉にも彼氏がいるなんて親父が知ったら間違いなくショック死だろうな。


「絵里、まさかお前も...」

「な、ないよ!」

「いって!」

「ご、ごめん!」

「いいよ、俺が悪いから」


持っていたバインダーで思い切り、バシッとぶっ叩く絵里。

鼻血が出るが絵里に非はない。

俺は苦笑いで七瀬にティッシュを求める。


「可愛いね」

「うっせぇ」


もう今日からこいつが姉の気がする...


────────────────────


「なな、なんで嘘ついたの?」

「姉になるためかな、弟が欲しかったの」


私は弟が欲しかった。

妹と弟どっちも欲しかったからこうやって、翔を騙す。

なんて呼ばせようかな、しょーくんかな。


「双子じゃないの?」

「双子は複雑なの、んで、まだチューもしてないけど、したい?」

「ま、まぁ」

「まだその時じゃないね」


ソラとは一切そういうことをしたいと思わないのは何故だろうか。

まだ親友を超えられていないからだろうか。


「何回目それ」

「気分次第〜」

「はぁ」


大きなため息を吐くソラ。

いつ、この気分は変わるだろうか。


「好きなことには変わりないから安心しなよ」

「ほんとかな」

「ホントよ」


嘘じゃない、ホントに好き。

だから、毎日家族を除いて1番に会いたい人。

可愛い、可愛い私の彼ぴ♡

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