第10話 マネジャーは嫉妬深い

「明日、明後日は球技大会本番。

よって、今日の授業は1日球技大会練習〜!!

そして、部活は明後日まで全部活なーし!!

皆頑張ろ〜!!」


担任のレナ先生(25)がテンションMAXで叫ぶ。

テニス部の時は鬼と言われているらしいが担任としては怖いどころか、超がつくほど優しいため、想像すらつかない。

ちなみに今は4月中旬。

クラス内のグループもなんとなく固まって来ており、この球技大会も大体仲が良い奴らで固まっている競技が多い。


「皆着替えて、各自持ち場に集合〜!!」

「はーい」


レナ先生は既にジャージに着替えている。

というか、テンション高すぎじゃない?

本番明日だよ?


「寒い」

「ね」

「今日練習なくてよかった〜」

「ほんそれな」


まずは一つ目の出場種目バスケ(男女混合)が行われる体育館に集まった俺、英玲奈、絵里、浅野、楓、水野。

今日は雨が激しく降っている影響で結構寒い。

女子たちはしゃがみ、身を寄せ合う。


「さみぃなら俺の着てろよ」

「ありがと、浅野」

「お、おぅ」 


見かねた浅野はジャージを脱ぎ、絶賛片思い中の楓に羽織らせた。

楓は微笑み、立ち上がると袖に腕を通し、ファスナーを上げる。

2サイズほどおそらく違うのでちょうどよかったようだ。

浅野は当然照れくさそうに見つめる。


「ちょーだい」

「わかった、汚すなよ」


チャンスを見逃さなかったのは英玲奈。

英玲奈は甘えるように俺の腕に抱きつくと上目遣いで少し頬を赤く染めながら小さな声で恥ずかしそうに呟いた。

俺は頬を赤く染め、渡す。

英玲奈さん破壊力、すごすぎィ。


「ありがと、優しいとこ好きよ、旦那」

「どういたしまして」


ウイニングショットのウインクが繰り出された。

当然、効果は抜群。

しかも、まだ腕は組まれたまま。

このまま行くところまで行ってしまいたいZE☆


「少しも寒くないな!」

「あぁ!」


心が暖かくなると寒くないとどっかで聞いたがどうやら本当らしい。

寒いどころか燃えるように暑い。


「いって!」

「始めるよ、おバカさん」


背中にボールが勢いよく当たる。

投げたのは絵里。

顔は言わずもがなかなり怖い。


「水野お前なぁ」

「ぼーっとすんな、キモい」


浅野も同じくぶつけられた。


「なぁ、アレ嫉妬?」

「だな」


女は嫉妬深いと聞くが今のは俺たちは悪くないだろう。


「なんか言った?」

「浅野、テメェ」

「言ってません」

「水野、頑張ろうな」

「英玲奈〜、パス出し合おうぜー」

「うぃ〜」

「楓ー、お前球技得意〜?」

「普通」


女子は怒らせるととーっても怖い生き物だ。

俺と浅野は逃げ出すようにご機嫌な2人の元へ走る。

女子に対抗するには仲間の女子がいないといけない。


「むぅ」

「絵里」

「嫌だ」


パス連が始まっても絵里の機嫌は治らない。

そして、ここから絵里の不機嫌タイムが始まり、俺は思い知る。

絵里はかなり嫉妬深く、独占欲高めな女の子だと。


────────────────────


「ばーか、私がマネジャーなのにさ」


パス連、シュート連と進んで行き、連携もある程度取れることが確認出来て、少し休憩しようとなった。

あとはホントに微調整するだけである程度勝てるだろう。

だが、私は翔くんにパスを一度も出さなかった。

理由は簡単。

英玲奈ちゃんを優先したから。

ありえなくない?

いつも隣にいるマネジャー差し置いて、バスケ部に貸すとかさ。


「ジュース買いに行かね?」

「行かない、喉乾いてない」


体育座りし、壁に背中を預けていると翔くんが誘ってくれるが私はフンと顔を背け、断った。

ばーか、ばーか。


「そっか、英玲奈行こうぜ」

「おけ」


ホント!バカ!

なんなのもう知らない!


「あ、ごめん」

「一緒にいたいから嫌いだけど、バスケにしたのにさ」

「ありがと」

「いいえー」


ボールが弾んで転がって来た。

私はキャッチし、片手で投げ返す。


「買って来てくれたりするかな」


少し淡い期待をしてみる。

好きな飲み物も知ってるし、可能性はある。


「絵里、ホントによかったのか?」

「いらないって言ってるでしょ!!」


淡い期待は裏切られた。

私は叫び、ドスドスと大きく足音と立て、コートに向かう。

ーーホント最悪!

ばーか、死ね!

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