間章B

間章B


「ねぇねぇ、おかぁさん。どうしてどうぶつをころしてはいけないの?」

 無邪気に問い掛ける。

 お母さんは優しく微笑んで

「どの動物にも命があるからだよ」

 と答えた。しかし、その回答に納得できず、更に質問を重ねる。

「いのち...? それはぼくにもあるの?」

「あるよ。みんなにあるんだよ。命を奪うことは許されないことなんだよ」

「なんでいのちをうばってはいけないの?」

「命が無くなると、動物は暗い暗い怖い場所に行ってしまうからだよ。そんな酷いことしてはいけないでしょう?」

 お母さんはそう諭した。その回答にとりあえずは納得したようで、おもちゃやぬいぐるみで遊び始める。

 しかし、また質問を始める。

「でも、おかぁさんもどうぶつさんのいのちをうばってるよ」

「うん?」

「だってだって、きのうのよるごはんはおさかなだったよ。おさかなもどうぶつでしょ」

「確かにそうね。だから、いただきますって感謝の気持ちを伝えてご飯を食べるんだよ」

「じゃあ、かんしゃのきもちをつたえることがだいじってことだね」

「何事も誰かのおかげで成り立っているの。だから、常に色んなものに感謝して生きるのよ」

 お母さんはそう言った。本人がそう思っているのかはわからないが、形式的なことである。

 また納得したようで、おもちゃで遊び始める。

「大きくなるのよ」

 お母さんは呟いた。

「大きくなるのよ。大きくなって立派になって。強く生きていくのよ」

 お母さんは繰り返した。

「ぼくも、おかぁさんみたいにおおきくてりっぱになる!」 

「立派なんて言葉どこで学んだの?」

「テレビでしったんだ! すごいでしょ!」

 そう言って無邪気に微笑む。お母さんはすごいすごいと言って、さらさらとした毛を撫でた。

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