第11話 空笑い


彦徳はリビングでテレビを見ていた。


テレビといっても地上波ではなく、インターネットに接続して

動画共有サイトを見ていた。


何気なくおすすめされた動画のサムネイルを流し見していると、

とある廃墟を探索している動画を見つけた。


こういった動画が好きな彦徳は再生ボタンを押し、

広告を15秒見た後、本編が始まった。


どうやら30代位の男性が一人で廃墟を探索していて、

某映画の様な手振れや息遣いがリアルな映像となっていた。


今はなき新興宗教が使用していた施設だった様で、

不思議な形をしたオブジェや、ビビッドの効いた色の書物が

所々に散見されていた。


彦徳がなにより気になったのは、廃墟となった施設内に

落書き等が一切なかった事。

撮影している男性は気にしてなかった様だが、

彦徳は他におかしな点がないかどうか画面に食い入る様に

動画を見ていた。


「ガチャ」


突然リビングの扉が開き、彌子がこちらを覗いている。


「なんだ、彌子か。驚かすなよ」


彌子はしばらくテレビの画面を見ていたが、

怪訝そうな顔して、


「ずっと笑ってたから、何見てるのかと思えば」


そう言って、わざとらしくゆっくりと扉を閉めると

彌子は部屋へと戻っていった。


「笑ってたか?俺」


テレビには違う廃墟を探索している動画が流れていた。

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