ヨークシャーテリアの住むメープル農場第3話

@peacetohanage

第3話

ヨークシャーテリアが朝食に、まだ昨日出来立てのメープルシロップを掛けて塩梅を確認していると、ロッジの外でがさがさと音がしました。

ヨークシャーテリアは持っていたフォークを置いて、窓へと近寄って外を覗き見ます。

すると一匹の猫がバスケットをぶら下げて、尻尾を揺らしているのです。

すかさずヨークシャーテリアは窓を開きました。

「やぁ、どうも!おはようございます。お早いですな?まだ仕事を始める前でした。今玄関へ向かいます」

ヨークシャーテリアは窓を開けたまま玄関扉へ向かいました。

扉を開けるなり、2人は対面してお辞儀をします。

「いらっしゃい。今日はどんなご用ですかな?」

すると猫はバスケットを差し出します。

「これは今朝焼いたクッキーです。あなたのメープルスプレッドと交換してください」

「これはありがたい!とてもよく焼き上がったクッキーだね?クッキーはまだ家にある?このクッキーに付けて食べても美味しいかもしれないよ」

「そのつもりなのです。実は弟が、メープルスプレッドをぱっと見で判断してしまって、美味しく無い物と思い込んでいるから…。だから私はメープルスプレッドに、弟の大好きなナッツを一杯混ぜてクッキーサンドを作ろうと思っています」

ヨークシャーテリアはほくほくとバスケットを受け取り、しかと頷きました。

「そうですか、それなら私の自慢のメープルスプレッドが何より!一口食べたらきっと美味しさが分かるよ。ちょっと待っててね、今戸棚から持って来るから」

ヨークシャーテリアは一旦家のキッチンへ姿を消します。

そうしてバスケットを朝食の脇に置くなり、すぐに戸棚からメープルスプレッドを取り出しました。

ヨークシャーテリアは僅か数十秒で、再び玄関に戻って来ました。

「はい、どうぞ。美味しいメープルスプレッドサンドを作ってね?」

猫もそれを受け取り、しかと頷きます。

「ええ、ありがとう。どこより美味しいサンドをきっと作りますから」


それから数日後、ヨークシャーテリアの家の前のポストには、猫からの手紙が1通ありました。

ヨークシャーテリアはその場で封を破き、便箋を取り出します。

そこには猫の弟によるメープルスプレッドサンドへの感想が書いてありました。

スプレッドが今までは不味い物だと思っていたけれど、食べた物の中で何より1番美味しかった…とね。


おわり

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