ヨークシャーテリアの住むメープル農場第2話

@peacetohanage

第2話

雪が徐々に溶け始める頃、今年1番のメープルシロップを作り終えたヨークシャーテリアは、約束通りリスの家にシロップを届けました。

その帰り道、歌を歌う一匹のカエルに遭遇します。

カエルの頭には愉快な帽子が飾られていました。

まだちょっぴり早いのですが、イースターエッグやイースターバニーが華やいでいる様です。

「やぁ、おはよう!カエルさん。気がちょっぴり早いですな?素敵な帽子だ」

「これは、これはどうも。今日も素敵な朝ですな?何を隠そう…今週の日曜日は待ちに待ったイースターだ!」

2人は顔を合わせて喜びます。

「実はね?ヨークシャーテリアさん。イースターの日には皆を集めて、エッグロールやエッグハントをするつもりなのです。今週の日曜日、ヨークシャーテリアさんは空いてますかな?」

「良いとも。1日位仕事を休んだって問題無いさ」

「皆に振る舞うパンケーキやベーコンやソーセージには、メープルシロップをたっぷり注ぎたいのです。是非、今年1番のメープルシロップを分けて貰えませんかね?」

ヨークシャーテリアは胸を張り、腰に手を当てます。

「勿論だ!甘い甘いパンケーキやベーコンやソーセージで皆でたんとお祝いしよう」


こうしてヨークシャーテリアは当日、自慢のメープルシロップをカエルの家にお届けする約束をしました。

当日まで後3日。

ヨークシャーテリアも日に日に待ち遠しくなりながら、その日にはその日の仕事をせっせとこなします。

皆がそれぞれそうこうしている内に、ついに当日がやって来ました。

さぁ、ヨークシャーテリアはメープルシロップの瓶を抱えると、目指すはただ一つカエルの家です。


「やぁ!いらっしゃい。素敵なイースターエッグだね?」

カエルは来る客来る客に挨拶をしました。

ヨークシャーテリアが訪ねると、待っていましたとぱちんと手を叩いて来ます。

「やぁ!ありがとう。それはメープルシロップだね?」

「そうとも、さぁどうぞ!私の手作りのイースターバニーもこの庭に飾って良いかな?」

「どうぞ、どうぞ!庭がだんだん賑わって来たぞ?さぁ、もうすぐエッグロールが始まるからあちらで待っていて」

ヨークシャーテリアはカエルに背中を押されると、皆が賑わう方へと向かいました。

カエルの家の庭には思い付く限りのあらゆる人々が集まっていました。

ヨークシャーテリアはアヒルの一家と話しをする事にします。

「はい、どうも!久しぶりですな。お元気でしたかな?」

「勿論ですわ、ヨークシャーテリアさん。あなたもお変わりありませんわね?」

「こんにちは、ヨークシャーテリアさん!」

アヒルの子供達もアヒルのお母さんに続いて挨拶をします。

挨拶が終わるや否や、突然庭にはカエルの鳴き声ががげろげろと響き渡りました。

皆は一斉にカエルに注目します。

「お集まりの皆さん!今日はありがとう。皆でイースターをお祝い出来る事に感謝をします。さて、それじゃお待ちかねのエッグロールだ!さぁ、参加したい人はこっちに来て。スタートラインはここですよ」

ヨークシャーテリアもアヒルの一家も芝生に引かれた長い華やかなリボンを目指して向かいます。

その近くでは、ワニが柄の長いスプーンを一本一本皆に配っていました。

「あぁ、わくわくするな?無事に卵を割らずにゴール出来るかな」

ヨークシャーテリアの心臓はばくばくとドラムの様に高鳴ります。

「負けないよ?ヨークシャーテリアさん。僕は誰よりも1番にゴールして見せるから」

とアヒルの長男。

ヨークシャーテリアは自信満々なアヒルの長男にご立派だと小さく拍手を贈りました。

「素晴らしい、その意気だよ」

よーいどん!

カエルが打ち上げたピストルの音で、一斉に皆は卵をスプーンで転がし始めました。

ヨークシャーテリアは1番にはなれなかった物の、どうやら無事にゴールは出来た様です。

1番になったからと言って、賞品が用意されている訳では有りませんでしたが、意気込んでいたアヒルの長男が本当に1番にゴールしたのです。


それからカエルの家の庭でエッグハントが行われ、最後に沢山の食事が振る舞われました。

長テーブルにはお酒やジュース、パンケーキタワーやベーコンやソーセージ…他にもサラダやデザートも並んでいました。

皆でわいわいと手を繋いでいただきますを済ますと、それぞれが思い思いに取り皿へと食事をたっぷりよそいます。

「ヨークシャーテリアさん!もしかしてこのシロップはあなたの農場の、メープルシロップではありませんか?」

とキツネ。

振り返ったヨークシャーテリアはちょうどウサギ形のパンケーキを口に頬張ってもぐもぐしてる所でした。

一旦咳払い…。

「ええ、キツネさん。よく分かりましたね?このシロップは今年1番のメープルシロップですよ」

「やっぱりそうか!この香りはメープルシロップに間違いないと思ったんだ。とっても甘くて美味しいよ」

ヨークシャーテリアのメープルシロップは去年の様に抜群の評判なのです。

何を隠そう、毎年変わらず抜群の評判なのですけれどね?


おわり

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