第6話「雷雨」

「あ、モア〜!!」

ーー気付かれた‼︎

 店は⁇

「ヒマ過ぎて閉めたんだ。」

 そっか。 

「どうやって屋根に登ったんだ?」

ーーやっぱりその話になるか…。

どう言い訳しよう。 

 少し窓から離れて。…こうやって。 

「すげぇ!!かっこいい!!風で舞い込んだレ〜スみたいだった!

モアって身軽なんだな!!」

ーーよかった。興奮してそっちに興味がいってくれれば…

「でも、どうやって部屋に入ったんだ?」

ーーこいつ、意外に細かい‼︎

どうする?開いてた事にするか?

でも、閉めたって言われたら終わりだし…。

 あぁ?鍵ならピン1本で開けた。

ーー嘘。

流石にピン1本で開けれるドアは防犯上どうかと思う。

「閉まってたぞ?」

 癖で閉めた‼︎

ーーほんと、意外にしつこいッ!

でも、ここまで言えばもういいだろう…。

 鍵、開けられた方が仕事で都合いいから。

「モアって器用なんだな!!」

>>にかっ

ーーよかった、なんとか誤魔化せた…かな?


「せっかくだから話相手に寄っててくれよ。」

ーー面倒くさいけど、仕方ない。  

「ノゥジェルはどこなんだ?」

 物心ついた時には独りだった。

「…寂しかっただろ?」

 いや、育ててくれた人はいたから…。

ーー退屈はしなかった、奴がいたから。

いや、正確には人間でもなかった。 

育てた理由も、同情や愛情からではなかった。

「ノゥジェルを出てからは?」

 街で絵を描かせてって声かけられた。そこで、絵を教えてもらった。

ーー半分嘘で半分ほんと。

ほんとは、何年かは体を売ってるふりをして近づき、飢えを満たし、去る生活をしていた。

その後、画家に気に入られ飢える事はない。

けど、欲求に堪える生活となった。

でも、何年かしてそいつに飽きた。

「そっかぁ、結構苦労してたんだな。」

ーーなんか、ソレイュの想像と違ったらしい。

「どうしてタンテイになったんだ?」

ーーほんとは夜、活動しててもいろいろ勝手しやすいやすいからだけど。

…適当に言っておこう。

 絵の講師をしてた時にそこの人間が行方不明になった相談を受けたのが、きっかけ?

「その人は見つかったのか?」

 見つかったよ、ちょっと苦労したけど…。

ーーぼろぼろの薬漬けで監禁されてたけど。

店で出会った恋人を嫉妬で殺されてしまい、薬漬けに…同僚の女が嫉妬で殺した。

嫉妬で恋人を殺した女は、それでも薬漬け男の愛を求めた。

それを見た嫉妬女を愛してる男が嫉妬して、薬漬け男を監禁、薬漬け男は良家の出だから、金と命を天秤に…金を脅し取られていた。

なんか今思うと面倒な、依頼だったなぁ。         

その解決法も。

「ちょっと苦労って、やっぱ危ない目にあったりするのか?」

 たまに戦う。投げた物は必ず当たる。  

「おぉ、すげぇ!!かっこいい!!

じゃあ、コレ壁に貼ってあるのに当ててみせてくれ!」

ーーこれは、ソレイュ好みだったらしい。

壁に貼ってあるの?…あぁ、あれか。

壁に当てて、ついでにかごに入れてやるッ‼︎

「すげぇ!!ほんとに当てちまうんだな!!」

ーーえらく感動されてるな…。

「なぁ、お前って…」

!!

ーー雷だ。

すごい…雨音。

「びっくりしたァ!!どっか近所に落ちてねぇ?」

 さぁ、どうだろう?

「そう言えば、エマさんの用って何だったんだ?」

 ショコラくれた。後、燭台も。

「あ〜!ソレってショコランティとモヮルゥ・ショコラとマドリァヌだろ?

俺ももらったぁ!美味かっただろ!?」

 あぁ。

ーー甘かったぁ!

また欲しい‼︎

「ショクダイはなんだ?」

 さぁ?灯りがなかったし、丁度よかった。

「え?!それまで真っ暗だったのかよ?!

じゃあ、コレやる!!」

ーー灯りがなくても不便しないけど…?

あ、ここでは見えにくいんだった。

ランプを押しつけられる。

 ありがとう。

「…そうだ!記念になんかやるってたやつ!!

コレはどうだぁ?

ニラァジュが描いてくれた俺のイマァジ!飾ってくれよ!!」 

 あぁ。ソレイュの人の良さが、絵にもが出てる。

ーー料理に何かふりかけてるソレイュ。

誰かの為に…よく描けてる絵。

絵と言うか色付け前の物を額に飾ってある。

でも、人に自分の絵渡すっ⁈

「ニラァジュと俺、田舎で幼馴染でさ!

いろいろあって俺がここ受け継いで、店始める時ちょうど手紙で部屋探してるって言ってたから誘ったんだ。

ニラァジュのイマァジさぁ…店に飾ってるんだけど、たまにお客が褒めてくれるんだ!!俺、自分の事の様に嬉しくて!」

 そうだったんだ…。

ーーソレイュの部屋はいろんな物があるな。

ごちゃごちゃしてる。

どぉりでさっき球が突然出てきたのか…。


 ……。

「…話込んでたみたいだな…もう帰るか?」

ーー?

 あぁ。そうする。

「明日、何時でもいいから店来いよ!」

 なんで⁇

「いいから!約束な!」

ーー⁇

 あぁ。


ーーあぁ''まだ雨降ってるんだ?

薄暗い、夜明け前か。

雨の音すごいな…。

雨漏り大丈夫かな。

うぅ''…気が重い。体も重い。

雨は嫌い…。

明日はとりあえず、約束したから行こう。

…少し面倒くさい。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る