行く当ての無い同級生を私の専属メイドにしたら可愛すぎて毎日が天国

冷凍ピザ

第1話 雇用

 私は西園寺結月さいおんじゆづき

高校1年生。

私の父は有名な企業の社長で、私はいわゆるお嬢様的な感じだ。

私の生活のお世話をしてくれるメイドもいる。

友達にも恵まれていて、楽しい学園生活を送れている。


 そして、最近は好きな人までできた。私は本当に理想的な青春を謳歌している。

問題の好きな人とは、同じクラスの星宮時雨ほしみやしぐれという女子だ。


 私より背が低くて、童顔で、服装次第で小学生に間違われるような容姿をしている。

さらに、彼女は気が弱い。

小動物的な可愛さがある。

前から彼女を私の物にしたいと思っていた。


 そして、時雨を私の物にするチャンスは突然やって来た。


 それは私の友達の1人である、伊藤紗理奈いとうさりなと会話していた時の事だった。

「ねえねえ、あの星宮時雨って子」

「星宮さんがどうかしたの?」

時雨とは特に仲が良い訳では無いので、"今は"名字にさん付けで呼んでいる。


「あの子、母子家庭だったんだけど、母親が急死したんだって」

「それ本当!?」

紗理奈からの突然の報告に思わず大きな声を出してしまった。


「どうしたの急に」

「……いや、何でもない」

「そう。なら別に良いけど」


「今日、星宮さんが欠席してるのもそれが原因?」

「多分そうだと思う」


「あっ、そうそう。今日はちょっと用事あるから一緒に帰れない。ごめん」

「社長令嬢は忙しいね」




 時雨の事で頭がいっぱいになってその日の授業は全く頭に入らなかった。


 少し早足で学校を出ていつもとは違う道を歩く。

時雨の素性は調べ上げてある。当然住所も知っている。

あれっ、私って結構キモい……?




 10分ほど歩き続け、時雨が住んでいる部屋があるマンションに着いた。

時雨がどの部屋に住んでいるかももちろん把握している。下調べに抜かりはない。


 ついに、時雨が住んでいる部屋の前まで来てしまった。


 少し深呼吸して、呼吸と気持ちを整えてから、インターホンを鳴らす。

頼む、まだここに居てくれ……。


「はい、誰で……西園寺さん!?」

「こんにちは、星宮さん」

「何で西園寺さんがここに?」

「あなたを雇いに来た」

「どういうことですか?」

「上がっていい? 色々話があるから」

「いいですけど……」


「早速だけど星宮さん? あなたを私の専属メイドとして雇いたいの」

「意味が分からないんですけど……」

「そのままの意味。あなた、行く当て無いんでしょ?」

「それは……そうですけど」

「じゃあ私のメイドになってよ」


「私に西園寺さんのメイドなんて務まりませんよ……」

「でも他に道無いじゃん」

 

「……分かりました。西園寺さんのメイドやります」

「星宮さんならそう答えてくれると思ってた」


「でも学校とかはどうすれば……」

「それは、メイドはバイトって事にして通えばいいでしょ?」

「なるほど」


「荷物は私の方で何とかしとくから。後、あなたの部屋の用意もね」


「どうして大して仲良くもない私の事をそんなに気遣ってくれるんですか?」

「聞きたい?」

「……教えてくれるなら」


「私が、あなたの事好きだから」

「西園寺さんが私の事を?」

「うん、大好き。ずっと私の物にしたいって思ってた」


「最近、やたら西園寺さんと目が合うなって感じたのはそれが理由だったんですか?」

「あれ、私って、そんなにあなたの事ジロジロ見てた?」

「……おそらく」

「そう、ごめんね」


「とりあえず、今日から私の家に来ない?」

「今日"から"ってことは……」

「引っ越しとかの色々はこっちで済ませておくから、ね?」

「……はい、お願いします」


 この瞬間から、時雨は私の物になった。

 

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