第2話 幸せな女

 コンビニのアルバイトを始めて、二ヶ月が過ぎた。

 私は、皆と同じように仕事をこなせるようになっていた。

 私は、なるべく彼の中番シフトに入るように仕向けた。

 

 一分一秒でも那岐さんの傍に居たい……。


 この日も那岐さんとシフトが少しの間だけ被った。(まあ、私が無理やり被せたのだけど……)


「那岐さん、金髪のお客さん30分くらい立ち読みしてますね……」


「そうだね、ボクちょっと言ってくるね」


 那岐さんは、ちょっと怖めのお客様の元へ注意を促しに行った。


 レジからはよく見えなかったけど、そのお客さんは顔面蒼白で、逃げるように店を出て行った。


「ふぅ、注意したら直ぐに立ち去ってくれました。怖そうなお客様だったので緊張しましたよ」


 那岐さんは、そう言いながら笑顔で戻って来た。


(那岐さん……そんな怖い顔したのかな?)


 この日は早番だった為、那岐さんに挨拶をしてバックヤードへ戻った。


 店長は休みで誰も居ない。

 なんとなくの空虚感……。


 私はふと、ある物に目が行った。

 那岐さんのショルダーバッグだ。


 イケない事、犯罪、最低の行為だと解っていたが、考えるより先に手が出た。


 那岐さんは、中番の為22:00まではココに居る。


 私は、那岐さんのバッグから家の鍵を


 店長の机の引き出しから、従業員のファイルを取り出し住所を調べた。



 気が付くと、私は那岐さんの部屋の前に居た。


(那岐さん、ごめんなさい……私はクズな女です)


 そう思ったのは一瞬だけ、私は自制心も背徳感も失っていた。


 冷蔵庫に入っていた飲みかけのペットボトルに口を着けた。


 トイレの便座に頬擦ほおずりをした。


 ベッドへ飛び込み、彼の枕に顔を埋めて思い切り息を吸い込んだ。


 そして、自分の髪の毛を数本引き抜くと、ベッドにばら撒いた。



 また来るね、那岐。



 私は、何食わぬ顔でコンビニへ戻った。

 忘れ物をしたと言いバックヤードへ入り、那岐さんのバッグに鍵を戻して帰宅した。



 嗚呼……私は最低な女。

 ……でも、最高の気分!

 私は、なんて幸せなんだ!


 その後、私のは何度も繰り返された。



 





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