第11話 拳銃の弱点
「ギギィッ……!!」
「くそっ……早速来たかっ!!」
「ギィッ!!」
レアが逃げる前に3体のゴブリンが廃墟の中に侵入し、咄嗟にレアは拳銃を構える。先程は鏡に当てることはできたが、動かない対象ならばともかく、常に動き続ける生物を相手に狙いを定めるのは難しい。
「「「ギィイイッ!!」」」
「うわっ!?い、一匹ずつ来てくれない!?」
別方向から近づいてくるゴブリン達に対し、どの個体に拳銃を構えるのか悩むが、まずは確実に仕留めるために正面から迫ってきたゴブリンに向けて発砲を行う。
「このっ!!」
「ギィッ!?」
ゴブリンの頭部に目掛けて発砲したつもりだが、弾丸はゴブリンの頬を掠めて血が垂れる。直撃はしなかったが得体のしれない攻撃を受けてゴブリンは立ち止まり、その隙を逃さずにレアは近づいて至近距離から発砲する。
「喰らえっ!!」
「ギャアアッ!?」
「ギィッ!?」
「ギギィッ!?」
距離を詰めて今度は頭部を撃ち抜き、眉間に弾丸を受けたゴブリンが倒れこむ。その光景を見て他の2体は動揺し、一方でレアは隙を逃さずに発砲した。
「そこっ!!」
「ギィアッ!?」
「ギギィッ!!」
今度は二体目のゴブリンの右肩を撃ち抜く事に成功し、弾丸を受けたゴブリンは悲鳴を上げながら倒れ込む。最後の一体にレアは銃口を構えた瞬間、ゴブリンは彼が撃つよりも先に飛び掛かる。
「ギィイイッ!!」
「うわっ……離せっ!!」
「ギャウッ!?」
ゴブリンはレアから拳銃を奪おうとしているのか腕に絡みつくが、それに対してレアは全力で振り払う。純粋な身体能力はレアが勝り、ゴブリンの手から逃れると近付いてきた相手の右足を撃ち抜く。
右肩を撃たれたゴブリンは地面を転がり込み、右足を撃たれたゴブリンは膝を付く。弾丸は残されているがレアは日本刀を抜く。怪我を負ったゴブリンならば剣の素人の自分でも倒せると判断した上で動く。
(これ以上に弾丸は無駄にできない!!自分の手でやるんだ!!)
日本刀を使っての戦闘は初めてだが、レアは覚悟を決めてまともに動けないゴブリンに目掛けて刃を振り抜く。最初に狙ったのは右足が負傷したゴブリンであり、頭に目掛けて刃を振り下ろす。
「やああっ!!」
「アガァッ!?」
「ギィアッ……!?」
頭に日本刀を叩き込まれたゴブリンは頭部が割れ、大量の血を噴き出しながら倒れ込む。返り血を浴びたレアは手元の感触が忘れられず、吐き気を催しながらも耐える。
(こ、殺した……俺の手で、命を奪ったんだ)
これまでもステータスの改竄や拳銃でゴブリンを始末したが、日本刀の場合は直接的に相手に止めを刺すので命を奪ったという実感を抱く。レアは身体が震えて吐きそうになるが、まだ一匹ゴブリンが生き残っていた。
右肩を負傷したゴブリンは逃げようとしているのか地面を這いつくばり、それを見てレアは拳銃を手にして近づく。逃げ惑うゴブリンの頭に拳銃を近づけ、止めの一発を撃ちこもうとするとゴブリンが悲痛な表情を浮かべてレアを見つめる。
「ギィイッ……」
「……そんな目で見るなよ」
命乞いをするかのように自分を見つめてくるゴブリンにレアは怒鳴りつけ、拳銃の引き金を引いた――
――全てを終えた後、レアは返り血で血塗れになりながらも廃墟から抜け出す。だが、拳銃の発砲音を聞きつけたのか遠くの方からゴブリンの鳴き声が聞こえてきた。
『ギィイイイイッ!!』
「やっぱり音で気づかれたか……くそっ、逃げ切れるか?」
急いで教会に逃げ帰ろうとしたが、レアは最後に残された拳銃の弾丸を思い出す。先ほどは確認できなかったが、弾倉から取り出した弾丸に文字変換の能力が発動するのか確かめる。
『弾丸――ハンドガン専用の銃弾 状態:普通』
「よし、使えそうだな」
弾丸に解析の能力を発動させると詳細画面が表示され、指をなぞると問題なく文章が書き替えられることができた。このことから文字変換によって偶発的に誕生した物体も文字変換の対象物となることが判明し、ゴブリンの群れが駆けつける前に目眩ましになるような道具を作り出せないのか試す
『弾丸――ハンドガン専用の銃弾 状態:普通』
『煙幕――幻覚作用を引き起こす 状態:幻惑』
「これはできるのか!?」
文章として成立しているのかは不安だったが、能力を発動させる瞬間にレアの手元の弾丸をゴブリンの大群に目掛けて投げつける。
「喰らえっ!!」
弾丸が光り輝いた瞬間、煙と化してゴブリン達を包み込む。レアは煙を吸う前に全速力で駆け抜けると、煙に包まれたゴブリン達はもだえ苦しむ。
『ッ――――!?』
煙の中でゴブリン達は声にならない悲鳴をあげ、幻覚が見えているのか暴れ出した。煙が届かない位置まで移動したレアは自分の仕出かした行為とはいえ、予想以上の結果に身体が震える。
これまで文字変換の能力で生み出してきた物は全て実体があったが、今回の一件で「煙幕」などの現象も生み出せることが判明した。だが、使い道を誤ればレア自身が危険に追い込まれるため、今回のように不用意に危険性の高い煙幕を出すのは避けなければならない。
「うわ、凄い光景だな……くそっ」
煙が晴れると残されたのは傷だらけのゴブリン達の姿であり、どうやら幻惑に惑わされて同士討ちを行ったらしい。辛うじて生き残っているゴブリンが何体か残っていたが、それを見てレアは気付かれる前に立ち去ることにした。
(はあっ……予想はしてたけど、やっぱり拳銃は扱いが難しいな。それに発砲音のせいで他の魔物に気付かれるから使いにくい。だけど日本刀があいつらに通じるのは証明されたな)
日本刀を使ってゴブリンを倒した時の感触は一生忘れられそうにないが、何度も危機を乗り越えたことでレアは精神的に成長していた。
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