反抗期の女子が私にも反抗してくるので物語が上手く進みません!

ここあ とおん

第1話 反抗期の主人公


 私は彼の手を引いて、あまり人が通らない教室へ案内した。その教室には夕日がオレンジ色に染めていて、私達も照らされている。


「……奈穂なほ? どうしたの?」


 ずっと後ろを向いていた私に、彼はそっと話しかける。


 私は後ろを向きながらこう言う。


「好き」


 私と彼の間に時差があるかのように、彼は遅れて「え?」と言う。


「好き!」


 今度はちゃんと彼の目を見て、さっきよりも大きな声で言う。


「だから、付き合ってよ、私と」





「ふう、今日はもう寝よ……」


 私はタブを閉じて、パソコンの電源を切る。そして、机の横にあるベッドに寝っ転がる。


 机に置いてあるデジタル時計は、11時を示していた。


 部屋の電気を消して、暖かい毛布にくるまる。


「この後の展開、どうしようかな?」


 寝る前とか、お風呂に入っているときに、小説のアイデアを考えるのが私の習慣だ。


「お年玉いっぱい貰ったから何に使おうかな?」


 たまに小説以外のことも考えるけど。





 私は無名作家のここあとおん。高校1年生です。恥ずかしいから、家族には小説を書いていることをバレたくない。でもお姉ちゃんが勝手に私のパソコンを覗いてそこから家族に広まってしまいました……。


 そんな私は、今日も恋愛小説を書く。普段はスマホで執筆しているが、夜になるとスマホをち使ってはいけないという我が家のルールがあるので、パソコンで書いている。


 カクヨムを開き、ワークスペースに移動して今書いている小説を開く。


「よし、昨日の続き書こー! ってあれ?」


 私は違和感に気付いた。


 昨日は主人公の告白シーンまで書いたはずなのに、そのシーンがなくなっていた。


「もしかして保存してなかった? やっちゃった……」


 私はドジなので、こういうことは結構ある。なので開き直って私は昨日の文章を思い出しながら、告白シーンまで書いた。


「ちゃんと保存してっと……」


 今度こそ、失敗しないように私は保存ボタンを押す。画面上部には「保存しました」の文字がある。


「よしおっけー!」


 私は保存したのを確認して、明日を迎えた。





「ええ!? なんで!?」


 私はスマホを見ながら叫ぶ。


 また告白シーンの文章が、消えていたのだ。


「昨日はちゃんと保存したはずなのに……。こうなったらもう一回!」


 私は、また昨日と同じ作業をする。そしてちゃんと保存ボタンを押して「保存しました」の文章を見つめる。





「なんでなんでなんで!?」


 またもや、あの文章だけ消えていた。


「私のスマホがぶっ壊れてるのかな……? カクヨムの運営がいじわるしてる?」


 ついに私はカクヨムまで疑い始めた。


 そんな中、私のスマホからメールの着信音が鳴る。


「あれ? 誰からだろ?」


 私はメールを開くと「田中 奈穂」という人からだった。


 私の友達に「田中 奈穂」という人はいない。しかし、この名前は私が書いている物語の主人公からだった。


「え?」


 私は混乱して、とりあえずメールの内容を見てみる。

 


『ここあとおんって人? お願いだから、もう告白シーン書かないで』



「え……?」


 正直、私はあの主人公から来ているメールだとは思えなかった。


「告白シーン書かないと、お話が進まないんだけど……」


 と、私は返信する。


『そんなの知らないよ。私の人生をあんたが勝手に決めないでくれる?』


 すぐ彼女は返信する。


 私は思い出す。彼女の設定を「反抗期の女子」としたことを。


 もしかして、私にも反抗し始めたってこと?

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反抗期の女子が私にも反抗してくるので物語が上手く進みません! ここあ とおん @toonn

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