天国への扉

Grisly

天国への扉

S氏が、安らかに息を引き取った。


生前の行いが良かったのだろう。

その魂は、まっすぐ天へと昇ってゆく。


ちょうど雲を超えた位の所へ

差し掛かった時、

悪魔だろうか、怪しげな2人組に遭遇する。


「あなたは本当に、天国へ行きたいですか。


「天国は本当に

 あなたの思っている様な所ですか。」




S氏、気になり、尋ねる。


「え、それはどう言うことだね。」


「天国なんて、

 そんな良いところではありませんよ。


 考えても見て下さい。

 一体何人が生活しているんですか。

 

 とてもサービスが追い付いていない。

 天国とは名ばかり。

 

 皆、小さい部屋に押し込まれ、

 監獄の様な生活です。」


S氏、耳を貸してしまう。

「そうなのか。全く知らなかった。」


「1度入ってしまうと、もう抜け出せない。

 しばらくは現世で彷徨われることを

 お勧めいたします。」


S氏はあろうことか、

天国行きの扉をくぐるのを辞め、

現世で、彷徨う霊としての道を。


こうなってしまっては、

天国へはもう戻らないのだが…




ところで、さっきの2人組。

降りてゆく魂を見送り、哀れんでいた。


「1番嫌な天使の仕事だ。

 天国での

 夢の様な素晴らしい生活を維持するため、


 意志の弱い者を

 振り分けねばならなくなった。

 

 その結果、

 こうして天国へ行ける資格のある者を、

 彷徨う霊として、

 地上に沢山放り出している。


 神のご意志とは…」


 



 



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天国への扉 Grisly @grisly

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