裁きの精霊と真実の精霊に愛された乙女

ことはゆう(元藤咲一弥)

裁きの精霊と真実の精霊に愛された乙女




「ファミア・グレース‼ お前は聖女レディアを陥れたそうだな! よって婚約破棄だ‼」


 私の「元」婚約者レオ・ディストラードがそう言いました。

 傍らには聖女レディアが。


「証言は?」

「そこに居る貴族の令嬢達が教えてくれた!」


 ちらと見るとビクビクとおびえている。

 なるほど、そう来ましたか、では。


「では、真実の石と裁きの石の精霊に審判してもらいましょう」

「何?」


 私は我が家に伝わる裁きの石と真実の石を取り出した。

 白い石と天秤の模様が描かれた白い石。


「精霊様、どうかこの真実を明かしてくださいませ!」


 そう言うと二つの石は光り、白き衣に身を包んだ男性と、天秤をもった男性があらわれた。


「ぐ、グレース家は審判の家と言われていたと聞いたが、本当だったんだ!」

「で、でもそんなグレース家の令嬢が石を出したら自分が裁かれる……あれ、もしかして……」


 勘の良い子爵達は気づいたようです。

 罪を裁かれる者がそんな事をする訳がない。


「聖女レディア、貴様の言っていた事は全て虚偽だ、ファミアは貴様を陥れて等いない、陥れているのはお前の方だ」

 真実の精霊がそう言うと、天秤の黒い石と白い石が黒い石の方に傾きました。

「その上貴様は聖女としての立場を利用し、多くの令嬢を陥れてきた、そこの令嬢達も同じようになりたくなかったらと脅した」

 真実の精霊は聖女レディアを指さして、淡々と告げます。

「そ、そのようなこと誓って──」

「嘘をつくな」

 真実の精霊が反論を許しません。


「れ、レディア……」


 元婚約者もさすがにうろたえてます。

 やれやれ、呆れて物がいえません。


 審判の精霊が天秤を掲げて告げます。

「聖女レディアよ、貴様には聖女の役職はふさわしくない、よってその力を取り上げる、魔力もな」

「や、止めてください、それだけは‼」

 聖女レディアが懇願しますが、精霊様は容赦しません。

 天秤が光り輝きます。

「いやああああああああ‼」

 レディアから聖女の力と大量の魔力が奪われ、老婆に成り果てました。

「あ、ああ……」

 悲鳴が上がります。

「ファミアよ、其方にこの力を全て渡そう、其方にはその資格がある」

「結構です、その力は保管しておいてください」

「そうか」

 どこかしょんぼりした口調で言う審判の精霊様、可愛い。


「ファミア! すまなかった! 僕は騙されていたんだ‼」

「はぁ? 貴方のような男、こちらから願い下げです。さて、国王陛下に聖女が不正を行い裁きを受けて老婆になった件を報告しなくては」

 私は元婚約者を見もせず、その場を後にしました。


 王宮に行き、聖女がしてきた事を全て真実の精霊が話すと、陛下は元聖女が陥れてきた令嬢達の名誉回復を約束してくれました。

 まぁ、その後、聖女になってくれないか言われましたが面倒なのでお断りしました。


「さて、私はどなたと結婚しましょう」

「ファミア」

「ファミア」

 精霊様達が声をかけます。

「何でしょう?」

「私達、二人の妻となってほしい」

「其方のような乙女となら私達は結婚したい」

「精霊様がそう仰るのなら……」

 そういうと、精霊様達は私を抱きしめ喜び合いました。





 後の世に、真実の精霊と裁きの精霊と結婚し、陥れられた多くの人々を救ったとされる女性ファミアは聖女と呼ばれることとなることを彼女は知らない──







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