012.狭間の実験、あるいは経過観察

『生命魔法』を習得した事により、擬似生命体を作ることが出来るようになり、相手が居なければ使えない他のスキルの習熟度上げも、ここで出来るようになった。


『高速思考』を使うことで、時間を大幅に作り出すことができた。

 そして、『空間魔法』で『結界魔法』の中に空間を造り出し、四大属性魔法と光闇の魔法により、擬似的な世界を構築。


 ただ、植物までは作れないから、草木などはない土の大地に川が流れ池が満ちているくらい。時折風を吹かせて、光と闇により表現した昼と夜を使い分ける。

 肉体は外にあるので、ここで使うための肉体を『土魔法』で生み出す。ゴーレムってやつだ。


 今まではそれだけだったけど、今回からは『生命魔法』を入手したから、それを使ってもう一つ作り出した土塊のゴーレムに命を与えた。

 命といってもその思考は単純な命令を実行する貧弱なAIみたいなものだけど。

 それでも命は命。スキルが効果を発揮する。


 僕が持つスキルの中で今、相手が必要なスキルは『精神異常耐性』と『気配察知』に『威嚇』の3つ。さらに習熟度上げの途中だった『光魔法』と『闇魔法』、『空間魔法』と『結界魔法』、今回手に入れた『生命魔法』の5つ。

『気配察知』と『威嚇』は何とかなるとして、『精神異常耐性』はどうしようかな。『生命魔法』で精神生命体とか作れれば鍛えられるかな?


 やってみる……一応できた。


 でもやっぱり、貧弱なAIからは抜け出せない。これは僕の作り方の問題かな?

 スキルの使い方に慣れていないというのもあるんだろうけど、知識的な問題の方がある気がする。やっぱり上辺だけのAI技術じゃ、出来るのはこの程度なんだろう。姉さんほどの頭があれば自分だけで解決も出来るのだろうけれど。僕には深い知識も画期的な閃きも足りない。


 とりあえずはスキルに慣れるところからかな。知識に関しては、他の方法で解決できるかもしれないから。

 スキルの訓練を行いながら、もう一方で僕は別の作業もこなしている。これは僕が元から持っていたごく一般的な技術であるマルチタスクを、スキル『分裂思考』で補助することで出来るようになったことである。

 完全な『分裂思考』による分裂はこれ以上できないようで、三つの意思が消された今、残るはあと二つだけ。

 なので、あくまで補助程度であり完全に分たれている訳ではないが、別々の何かを同時に考え、それぞれの答えを出していくその思考の深さが、今までのマルチタスクとは雲泥の差となっている。

 やっぱりとても便利だ。とっておいてよかった。


 それはともかくもう一つの作業だ。

 これに関してはスキルというより、加護と呼ばれるものを使う。

 擬似機械神デムファの加護。

 このデムファという奴が、この世界の根底を成しているということはこれまでの観察結果から推測できる。

 そして、僕たちに与えられた力、スキルや称号、魔力や気力といった力もこのデムファが管理しているようだ。


 感覚的には補助という方が近いだろうか。

 力自体は事前の契約通り、僕に宿っている。ただ、その力は一朝一夕で使いこなせるものではなくて、高度な技術が必要になってくるようなのだ。

 その高度な技術部分をこの加護という奴を通してデムファが補助している。

 それが本来の加護の使い方だ。


 しかし、今回は別の使い方をする。繋がっているということは、こちらからも干渉が出来ると言うことだ。

 現にスキル習得の際、デムファは僕の魂を探り、僕の望みを精査してその情報を自身へフィードバックしている。


 情報は確かに行き来しているのだ。

 ならば、その仕組みに便乗すれば、デムファの中にあるデータを直接読みとることが出来るかもしれない。

 内容的にはむしろこちらの方が本命。でも可能性的にはあまり高くはない。


 一応、方法は既に知っている。

 スキルの習得の際に強制介入した時のあれをさらに深く掘り下げていけばいい。

 ただ相手は擬似とはいえ神だ。

 安易に成功するとは思えない。

 だからスキルを鍛えながら、平行して行う。ゆっくりと、こつこつと、確実に。

 大丈夫。凡才の僕はこういう作業は得意なんだ。



 スキルの習熟は順調。

 一方でデムファへの接続はまだ三割程度。想像以上に難解なセキュリティがかかっている。既存のコンピューターに使われているものと似ているけど、独自の発想と一般的なものから数歩進んだ技術が使われている。

 姉さんに一通り習っていなかったら、僕も手を着けることすら出来なかっただろう。


 デムファからの信号が届いた。

 身体が目覚める時間らしい。

 どれだけ『高速思考』を使ったとしても、時間を止めることは出来ないし、スキルを延々と使い続けるのはどうやら精神に負担がかかるらしい。


 また、戦いが始まる。

 次でスキルが終着点にたどり着くと思われる。

 称号の【統合者】と、種族につく神の文字。

 それが恐らく願いの叶うとき。


 だが、ここで戦い続ける人達を見る限り、このままだと一生ここで飼い殺しにされる可能性が高い。

 まあ、それに関しては既にある程度対策をしている。元々、こんな怪しすぎる誘いに乗った時点で、この程度のことは想定済みだった。

 さて、とはいえ戦いを生き残らなきゃどうしようもない。

 死んでしまっては元も子もないんだから。

 次は、どんなのが相手かな。

 精々死なないように、自分を手助けしていこう。



 名前:023649番(狭間凪徒)

 種族:夜叉

 年齢:13歳

 加護:擬似機械神デムファの加護

 魔力:D

 スキル:『火魔法:100%』『風魔法:100%』『魔力感知:100%』『水魔法:100%』『土魔法:100%』『魔力操作:100%』『精神異常耐性:67%』『看破:100%』『高速思考:100%』『気配察知:68%』『分裂思考:100%』『威嚇:49%』『光魔法:100%』『闇魔法:100%』『空間魔法:100%』『結界魔法:100%』『生命魔法:31%』new

 称号:【修羅道】【四大を極めし者】【鬼の血】【殺意に呑まれし者】【光闇の使徒】【守護者】【地獄道】




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手段を選ばず最強を目指してみた やみあるい @Yamia_Rui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ