㉞無人島生活8日目01▶ 遠い記憶過ぎてアレを殺すセーターとか忘れてたわ。この世界にもウニクロ出店してくれません? 

 翌朝。

 私は、自分の小屋に持ち込んだサンディの服を整理していた。

 私は一周回って、憤っていた。


 くそ、もう二度と破廉恥だと言わせない服を来てやる!!

 破廉恥とは言われてないけど!!


 ウニクロよこせ、ウニクロを!!


 サンディはどうやらSサイズのみ着ていたようで、そっちはあの課金部屋のクローゼットにハンガーで並んでた。 

 そのサイズ以外は、大きいやつって文字が書かれた紙袋に無造作に突っ込んであった。

 それを持ってきたのだ。


「とりあえず、着れる着れないかを判断していくか。同じサイズでも大きさ違ったりするしなぁ」

 そのうち、航海にでると思うと、服は多めに準備できるならしておきたい。


 私は独り言を言いながら、とりあえず無造作に取り出した、丈が長めの白いニットを着た。


「あれ、夏用ニットかな。チュニックタイプのような……太ももまで丈あるし……背中と胸元が空いてるから、これセットのインナーがあるんじゃないだろうか。無ければちょっと没だな」


 ゴソゴソ探していると、まず、ショートパンツが見つかったので履いてみた。サイズは合った。

 部屋で過ごす用なら良いだろう。

 続けて私はアンサンブルを探したが、その途中でまた懐かしい物を見つけた。


「お、ニーソックス。リボンついてて可愛いな。あ~。長めのセーターに短パン履いてニーソとか、あったよ。いたよ。前世に。懐かしー」


 ……ん?

 でも、なんかこれ。なんか引っかかるこのスタイル。

 なんだっけ。


 その時、ドアがコンコン、とノックされた。

 私がドアを開けると、はしごで登ってきたミーシャが顔を出した。


「アーシャ! おはよう。あの、昨日の夜ごめん、その」

 言いかけてミーシャが固まった。


「ああ、その事ならもういいよ。ミーシャは全く悪くな……ん?」


 ミーシャがまた赤面している。


 あ、やべ。このニット、胸元が少し覗いてたんだった!

 アンサンブルというかインナーがまだ見つかってなかったんだった!


「アーシャ……また、そんな……か、可愛いけどなんていうか……あっ」

 ミーシャがはしごを踏み外した。


「ちょっと! ミーシャ!!」

 私はツリーハウスの扉から身を乗り出し、闇の手を出してミーシャを受け止めた。


「あ、アーシャ、ありが……う……!」

 闇の手のひらから私を見上げたミーシャは、また口元を抑えた。

 だ、大丈夫か!


「アーシャ!! 僕はいいから、早く部屋もどって!! 僕以外に見られないで!」

 ミーシャが顔を真っ赤にしてギュッと目をつぶって叫んだ。


「何事ですか!」

 ハーマンが駆けてきた。


「ミーシャが梯子を踏み外して……でも受け止めたから大丈夫だよ」


 私は無表情で答えた。

 昨日の夜のハーマンに私は怒っている。


 しかし、ハーマンもキッと怒った。

「……あなたはまた、なんて格好してるんですか!? 免疫のない殿下を殺すつもりですか!?」


 殺すつもりってなんだよ!!


「なんだ、うるさいな。まだ眠いってのに……」

「どうしました? 何かトラブルでも……」

 ドミニクスと、コニングも来て、私を見上げて赤面した。


「アナスタシア様! ちょっとそれは……お部屋にお戻りください!」

「……おまえ、バカかー!! 丈が短すぎる!! 足を晒した格好で出てくるな!!」


 ……足。

 あっ!!

 私は問題点に2つ気がついた。


「……………」

 

 バタン。


 私は、いまだに固まっているミーシャを、地上に静かに降ろしたあと、無言で扉を閉めた。


 ツリーハウスの中で、ガクン、と膝をつく。


 まず一つ目……これ……童貞を殺すセーターだ……。


 遠い記憶過ぎて思い出せなかった!!

 なんかひっかかるって思ったのに!!

 私は両手で顔を覆った。


 彼シャツに反応してたミーシャだ。

 ストライクゾーンだったかもしれない……。

 ミーシャよ……意外とこういうの好きというか刺さるよね……。


 そしてもう一つ……。

 ……ニーソックスは履いてたし、ショートパンツも履いてたから隠してるとこは隠してるが……。

 ……多分、あいつら『絶対領域』に対して怒ってるな……。


 前世でも、一部の人に刺さるファッションであるし……この世界で太もも晒すとかは、はしたないにも程がある……!


 これは馬鹿と言われても何も言えない。

 というか、死にたい、粒子になって消えたい。


 しかし、しかしだよ。

 このツリーハウス内だけで部屋着の予定だったよ!

 外で着るつもりなど欠片もなかったよ。

 

 前世の服はうっかり着ると、今世においては刺激が強すぎる。

 

 だめだ、私はもう終わりだ。

 死にたい。


 私はDTK(童貞を殺す)服を脱ぎ捨てて、誰にも何も言われることがないであろう、学園の制服に着替えた。

 そして、布団を被って引きこもった。

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