②無人島生活1日目02■ 腰ミノのイケメン。ってタイトルだけど腰ミノって実際どうなの履き心地、ちくちくしない?

 私は、小一時間程スピードを上げて歩いて、森の奥へと入り込んだ。

 幸い私は船で制服で参加しており、履いていたのはブーツだった。

 先程砂浜にいて、来ていた制服は結構乾いたが、ブーツはやはり脱がないとなかなか乾かない。


 だが、あいつらの目についたら奪われるかもしれないから我慢していた。


 あいつらがこっそりと追ってきて邪魔されたり、いま隠し持っている装備を奪われてはたまらない。

 また、これから先は別の生存者に出会う可能性もある。

 私としては誰とも接触したくないから、隠れるポイントをいくつか見つけておきたい。




 「お、バナナっぽいのがある」

 私は、ちぎって、『冒険者魔法』のごくごく簡単な、鑑定魔法をかける。



 冒険者ギルドでは、冒険者に『冒険者魔法』というものを有料で講座を開いている。


 『冒険者魔法』はこういうサバイバルに向いている魔法を取り揃えている。

 学院で学ぶ専門的なものとは違って、チープではあるけれど、生活に密着してバリエーションに富んでいる。

 お貴族様からすると、庶民向けのくだらない魔法なんだけど。

 便利なんだこれが。



 鑑定の結果、バナナっぽい果物は普通に食べられると出た。

 よーし! 今日の食事はゲットだ。




 私は手頃な木の上に登って、周辺チェックした。

 「……あそこはさっきいた砂浜か……」


 海は食料の宝庫だ。

 落ち着いたら、魚や貝をとりにいこう。


 砂浜を中心にしてぐるっと見渡すと、高い山とそれに連なる低い山が島の中央。それを囲むように森。

 森の中がどうなっているかは、直接歩いて見ないとわからない。


 川か湖が欲しいところ。最悪沼でもいい。

 多少淀んでいようと、冒険者魔法で水を抽出できる。

 水属性魔法が使えたら、この海水にまみれた身体もすぐに綺麗にできるのになぁ。


 さっき海水使って抽出したかったけど、あいつらがいたからやめたんだよね。

 そんな事ができるの知ったら、きっと粘着される。



「あ。滝がある……」

 滝があるなら、滝壺か川があるだろう。

 目的地は決まった。


「お、蔦ある!」

 私は蔦をギシギシと引っ張って、安全を確認したあと飛び乗って、目的地の方へ飛んだ。

 やってみたかった~。ターザン!


 手は魔力で覆った。

 魔力変質といって、自分の手を怪我しないように覆ったり筋力を補強できたりする。

 魔力を持ってる人間は属性に関わらずこれをまず習得する。


 びっくりした鳥や虫が飛び立つ。


「いいね!」


 風を切って気持ちいい。

 目立って魔物やケモノに見つかるかもしれないけれど、これはちょっと爽快。


 蔦は運良く次々見つかって、歩くより早く目的地に着いた。


「わ! 綺麗!!」

 滝と滝壺、そしてそこから川が流れている。

 無害そうな鹿たちが水を飲んでいる。


「こんにちは、私も混ぜてね!」

 いつか私の食料になるかもしれない方たちだ、丁重に挨拶しておかないと。


 私は、制服を脱ぎ捨てて、川へ入って身を清めた。

 滝壺は深さがわからないから、探索は今度にする。


「ふーーーーー」

 私は闇魔法使い。

 闇を浮かべてそこから闇の腕をだし、制服を掴んだ。

 素手より握力強いんよ。

 その闇の手で、制服もじゃぶじゃぶ洗う。



 いや、誰も見てないから堂々全裸ですよ! ヒャッハー!



 ちなみに私は、金髪だ。ふんわり気味のストレート。

 前世は黒髪でちょっとくせっ毛だったから、とても嬉しい。

 ハニーブロンドいぇーい!


「テモテ、テモテ、テモテ~~♪」

 前世でのコマーシャルソングを歌いながら髪を洗い流す。


「テモテッ!!!」

 髪ぶんっ!!!


「はぁ~~ストレス発散だわぁ…………あ?」



 ……。

 ……落ち着こう。


 ……遠方に 人 影 あ り。


 ……私は眼が良い方だ。



 いるんだよ、人が。黒髪の男が。こっちを……唖然と見ている!!


 ボサボサの長髪の黒髪に、おそらく青い瞳。


 ――そして、腰ミノだ!!!!! はっぱ隊だ!! そして肩に鳥が乗ってる!!

 前世でいう原始人スタイルぁあああぁああ!?



「いやああああああああああああああ!!」

 私は発狂した。



「うわうわうわうわうわうわあああああ!!」

 私はとっさに制服やら持ち物、ブーツを持って逃げの体制に入った。

 流石に全裸なので、衣類を持って逃げないわけにはいかない!



「?????????????っ」

 私は自分で自分が混乱していると思いながら走った。

 少しだけ、振り返ると――


 ――ものっそいスピードで男が追って来ている!!!


「いやああああああああああ!!!」

 速いッ!!

 

 男の走る音が段々近づいてくる!

 追いつかれてる!!


 ああ、そうだ! 混乱して魔力使うの忘れて――


 ドン!!!


「ああああああっ!?」

 タックルされて、草っぱらに転がる!


 あああああ、これは、ひょっとしてっ


 クッ! 殺せ!!


 ってやつ!?

 ……それとも人食い人種か!? 


 私タンパク質!? タンパク質になるの!?


 どっちにしろ最悪だよ!!




「は、はなしてー!!」

 私は暴れた。

 ほぼ全裸の男が、全裸の私を押し倒して抱きついて、私の胸に顔を埋めている!!

 関係ないがついでに言うと、私は前世で言うと、Dカップだ!


 お、おまわりさーーーーーん!!




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