第33話 蓋を開ければ…
こんな時、男は邪魔なんだな〜
それは太郎のリアルな心の声だった。
実家への結婚報告を無事済ませた太郎と華恋…
二人は事前の打ち合わせ通り、その週の月曜日からお互い仕事の合間を使ったり、休みを合わせたりして結婚式の準備に取り掛かろうとしていた。
…まぁ〜あくまでもその予定だったんだけど…
「あなた達、結婚式をするにあたっての要望をまとめて早急に私にメールしなさい」
「…え?」
仕事終わりの月曜の夜…
何故か今二人の新居には、冴子と結納品を用意した太郎の両親、仲人を頼んでいた猫丸社長夫妻や鬼無里本部長夫婦、それと凛夜&茅野&麻音の三人が押し掛けていた。
そして当事者達が呆気に取られる中、皆に見守られながらいつの間にか結納の儀も済み、その後新居のお披露目となったのである。
ちなみに籍を入れた後に結納とは、多少順番が違うだろうが致し方無い。
なんせ結納なんて儀式は、昨今あまりしなくなっているせいか、二人も考えていなかったからだ。
「華恋さんも遠慮せんときっちりかかやんよ!でないと後で後悔するけんね」
「…え?」
買った覚えがない一枚板でできた立派なテーブルを父親に促されるまま二人で組み立てると、これまた誰が注文していたのか、タイミング良く配達されてきたお寿司の盛り合わせと鉢盛りが、その上に並べられていた。
そして皆でそれを食べている時、そんな事を力説し始めた太郎の母美代子…
ちなみにこの流れる様な展開について行けず、呆けながらも取り敢えず料理に箸をつける太郎と華恋だった(笑)
「あの〜これはいったい…」
食事をした分少しだけ気持ちが落ち着いたのか、太郎がここで口をだした。
しかし…
「「「「「「男は口を挟まない!」」」」」」
猫丸社長夫人以外の女性陣から睨まれる太郎(汗)
その得体のしれない妙な迫力に、思わず小さくなってしまった。
すると…
「いいから太郎、好きな様にさせたり…華恋さんもごめんな(汗)」
「そうだぞ課長、こういう時男が口を挟んたらアウトだからな」
「そうそう殿方は邪魔ですしね貴方♪」
「ウム」
「…ハイ」
父親と猫丸社長夫妻からフォローが入った。
良く解らないが否応なしに納得するしかないらしい…
「ほら、華恋さんちょっとこっちへ来なせ」
「…ハイ」
そして同じく事の展開に思考が追いつかず、食べながら呆けていた華恋は、美代子に呼ばれるままその輪の中に入るのだった。
後に華恋から聞いた話によると…
仕事柄、なかなか二人一緒の休みが取れないだろうから、何をしても時間が掛かる筈だと思われていたらしい。
だから〜
・希望する式場のピックアップ
・来賓客のリスト作成
・どんなオプションと演出を希望するのか
・何月に式をおこないたいのか
・新婚旅行の最終希望先
等々、二人で話し合ったら後はこちらでサポート&出来る限りセッティングするとの事だった。
「それでこれ?」
「参考にって♪」
そう言う太郎の目線の先には…
そこには山の様な結婚情報誌と式場等のパンフ、それと何故か段ボール一杯の野菜や果物が積まれていた(汗)
なんでも提供者は凛夜達で、休日に各々手分けして色々と集めて持ってきたらしい。
なんだかんだと言いつつ流石幼馴染達である♪
他にも野菜や果物に関しては祖父母が今日付けでこちらに届く様、宅急便を使い置き配の手配をしていたそうだ。
こちらも流石に手際が良いと関心してしまう。
「正直自分は助けるけど…華恋さんはどう?二人だけで色々準備したかったんじゃない?」
その辺は太郎の言う通りだろう。
最近の…
いや、華恋の性格上彼がそう思うのは至極当然だと思う。
しかし…
「ん〜そうじゃないって言えば嘘になるけど〜実際助かるのは助かるし〜それに多分一枚噛ませないとゼ〜タイ根に持つじゃん、ウチのママも美代子さんも…」
成程…
その辺はよく理解している様である。
確かに二人だけで事を進めていたら、後で延々と愚痴られるのは、ひを見るまでもなく明らかである(笑)
「あ〜確かに(汗)あの二人何か似てるしね」
「あ!タッくんもそう思うし?」
「ウン…でも…いつの間に親しくなったんだろ?」
「そうそう、確か…今日初めて会った筈だもんね…」
「「う〜〜〜ん…」」
そう言いながら仲良く首を傾げる二人。
彼らがそう思うのも無理はない…
だが実は…
太郎の両親と冴子は事前に会っていたりするのだ。
あの日…
そう、両親がいきなり太郎達を訪ねて来た日である。
映画を見に行こうと街を手を繋いて歩いていた時、たまたまHANAKOの店の前を通った二人…
その時、偶然店を閉めて帰ろうとした冴子とバッタリ鉢合わせしたらしい。
前もって華恋の勤め先の事を聞いていた二人は、たまたまそれがこの店だと気付き、出てきた冴子に声を掛けたのがきっかけだった。
それからは妙に気が合ったのか、映画をやめて呑みにいった先で意気投合し、帰りに二人にナイショで連絡先を交換し、密かに連絡を取り合っていた次第なのである。
そんな事等露知らず、いまだ首を傾げる太郎と華恋…
二人がその事実を知るのはそれからは暫く経ってからの事なのであった。
…続く…
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