第30話 結婚報告

と言う事で…

ジャンケンで三番目に勝った華恋。

結果、十一月のシフトでは第二土曜日曜日に連休となったのだが、季節的に本格的に寒さが到来したのか、時折吹く北風がむき出しの頰を撫でていくのが解る。

そう…

少なくとも太郎達が住む町はそうなのだ。


しかし…

「ここ…何処なん?」

空港から降りレンタカーを借りて走る事約二時間…

都心から離れ、いつの間にか山間部が見えるのどかな道へと入ると、暫くしてトンネルが見えてきた。

そしてそのトンネルを潜り抜け出るとそこは…

「何処って言われても、実家がある田舎だけど」

太郎曰くそうなのらしい(汗)

だが二人の目の前に広がるその景色は、華恋が言う通り明らかに変だった。

「気のせいなん?なんか暖かいし」

まるで春の様な暖かさ…

「まぁ〜向こうに比べればそうかな♪」

笑顔でそう答える太郎を見ればそうなのだろう。


しかしそこだけではなかった(汗)

「そうかなじゃないし!それにここ絶対日本じゃないと思うし!!」

まぁ〜確かにそうだろう。

トンネルを抜けると、そこには遥か昔の西洋風の街並みと豊かな自然、高い城壁が広がっていた。

「ん〜〜何て言ったらいいかな〜」

どう答えて良いのか迷う太郎。

それもその筈だ。

「だってだってさーどう見ても外人さんじゃないじゃん!ほらあの女の娘、尻尾も耳もあるし!あのグラマーな女性なんてさ下半身蛇じゃん!!」

その風景もそうだが、目の前を歩く人々が人々に見えない!

どう見ても猫獣人(ゲスト:異世界物語よりウィル)やラミア(ゲスト:異世界物語よりサラサ)にしか見えない!

しかもコスプレなんかじゃなくリアルにそう見えるのだ(汗)

「ここで暮らしてる住人だよ♪」

そんなうろたえる華恋をよそに、平然とそう答える太郎。

「いやタッくんおかしいしょ!トンネル潜ったら異世界?ここ異世界でしょ!!」

確かにそう見えても仕方ない。

まるでどこかの小説の舞台になっている異世界にしか見えないからだ。

「まぁまぁ〜落ち着いて、もうすぐ実家だからさ」

「え?え〜〜!!」

なおもパニックにおちいる華恋を笑顔で運転しながらなだめる太郎…


そして…

「華恋さん華恋さん、もうすぐ着くよ」

「へ?異世界?セフィロト?」

気が付けばいつの間にか寝ていたらしい…

どうやら今までの事は夢オチの様だ(笑)

「どうしたの?夢でも見た(笑)」

「…ウン…そう思うし…」

妙にリアルな夢を見た華恋は、眠い目をこすりながらそう答えると、車の窓を開け外の景色に目を向けた。

やはり九州だ。

この季節でも幾分暖かい風が入ってくる。

それと、時折見え隠れする山間も紅葉のピークを過ぎようとしているのが何だか解る。

「ほらあそこに見えるのが実家♪」

「わ〜〜何気に渋いし♪レトロ〜大好きだし♡」

遠くに見える一軒家…

そこを指差す先に見える農家を見てはしゃぎ始める華恋。


それから15分後…

「ねぇねぇ、何処からがタッくんとこのなん?」

田園風景が広がる中、ふとそんな事を尋ねると…

「ん?もうこの辺一帯はそうだよ」

「えー!すっごく広いじゃん(驚)」

「まぁ〜そうかもね」

そうなのだ。

車の中から見渡す景色…

それは収穫を終えた広大な田んぼと、まだ収穫が終わっていない畑、それにたわわに実った柿の木の列が見えていた。


そんな中…

「お〜い、太郎やないか♪」

先程見えていた農家(実家)についた途端、家の玄関先から体格の良い老人の声が聞こえてきた。

「あ、爺ちゃん♪」

「え?」

よく見るとその人物は確かに太郎によく似ていた。

勿論体系では無く顔が(笑)

でも、ちょ〜と濃ゆくて厳つい顔だ…

Vシネだったら何処ぞの親分さんにみえてしまう(汗)

「久しぶりやの〜美美さんや太郎が嫁さん連れて帰って来たぞ〜」

「あらあらホンにね♡」

太郎にエスコートされるまま自宅まで向かう華恋は、そこで家の奥から顔を出しこちらに向かう上品な風情の老婆と顔を合わせた。

「は、はじめまして華恋といいます、よ、よろしくお願いします!」

「あら〜〜話は聞いとったけど、ホンに可愛いげな御娘(おこ)じゃでな〜♪太郎、よう捕まえたの〜♡」

「さぁ〜ここで話もなんじゃて、はよ〜上がりんさ」

そう促されるまま、あれよあれよと家の中へと招きいれられた彼女は、照れる間もなく太郎の後ろをついて歩く様に進んでいった。


それはとても広い家だった。

外観もそうだが内装なんかも、以前TVで見た某アイドルグループが作った村屋敷にとてもよく似ていた。

それだけのどかな雰囲気をかもし出しているのだ。

当の華恋も見るもの総てが珍しいのか、キョロキョロしながら上機嫌で歩いている。

すると…

「あ、華恋さんだ♡お久しぶり〜♪」

「紗和子じゃん〜おひさ〜♡」

以前から面識がある太郎の姉夫婦の娘紗和子が、華恋の姿を見るなり部屋から飛び出して喜びながら駆け寄ってきたのだった。



…続く…



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る