第23話 良き未来への現在進行系

鬼無里の予想通り…

火曜日の夜、社長宅へ伺い結婚の意思と仲人の件を報告&頼みにいった太郎と華恋。

それはそれは手厚い歓迎を猫丸社長夫妻に受けた二人は、勿論仲人の件も快く快諾してもらった事で少しだけ胸を撫で下ろしていた。

特に…

「まぁまぁ〜太郎さんってば、こんなに可愛いお嫁さんと御縁ができてよかったわね〜♡」

「言っただろ♪お人形さん見たいな女性だって♡」

「本当そうですわね貴方♪」


いやいや、夫人の方がお人形さんみたいだってば(汗)

そう、例えるなら…

《博多人形》みたいな感じ。

とても社長と同じ〇〇歳とは思えない(笑)

※ここはあえて伏せ字とさせてもらいます♪


ちなみに社長が夫人と付き合い始めた頃に写した写真と、今社長の隣にいる夫人との見た目の違いが解らない(汗)

もっと言うならば…

十代のお孫さんと並んでいる姿なんか、どちらが歳上かすら解らなかったりする。

巷では魔道士かエルフではないかとまで言われているらしい…

太郎と華恋も同じ事を考えていたらしく、リビングに飾ってある二人の写真を見て軽く冷や汗をかいている(汗)


「そう言えば…新婚旅行先とか決めているのかな?」

「いえ、まだ具体的な事は決めていませんが…出来れば彼女が行ってみたい所をと考えています」

「え、リクエストしてもよいの?」

「勿論♪」

そんな事を太郎が考えてるなんて知らなかった華恋は目を輝かせて驚いた。

そして…

「だったら長崎にあるハウステンボスとバイオパークに行きたいし♡後、中華街で本場のチャンポンも食べた〜い♪♪」

即答でそうリクエストする華恋。

その表情を見る限り、何か思い入れがあるのだろう事を伺わせる。

すると…

「お〜長崎か♪だったら新婚旅行の日取りが決まったら私に言いなさい、旅行代理店の方はこちらで話を着けておくから♫」

流石多方面に顔が利く猫丸社長である。

おそらく一番豪華なホテルのスイートルームを代理店を通して二人の為に用意することだろう…

勿論社長のポケットマネーで♡

「ありがとうございます!社長♪」

と、こんな感じで暫く和やかに社長夫婦との話が弾んだ二人は、帰るその足でそのまま鬼無里夫婦の自宅へも顔を出し、お礼と報告を告げた。


只、華恋にとっては非常に不味かった様だ。

「おめでとう課長♪それに華恋ちゃん♡」

「太郎君、私からも華恋ちゃんの事よろしくね♡」

「薫ちゃん…」

「あ〜〜でもさ〜オムツ交換していた頃が懐かしいわね〜涼♡」

「わーーーーまたそれ言うなし!!」

またこのパターンだった(汗)

他にも色々と彼女にとってタブーというか、秘匿にしたい話が飛び出してきたものだから、もうその場はグチャグチャな状態でお開きとなったのであった(笑)


そして次の週の木曜日… 

仕事の方もこれといったアクシデントも無く、無事山場を過ぎたのを見計らって、華恋の休日に合わせ有給を取った太郎は、前もって不動産屋に引越し先になるであろう五階の部屋の合鍵を預かり、内覧をする事にした。

と言うのも、日曜日に開催された、あの《WORLD・Fashion・Contest》

華恋の結果は三位…

そんなグランプリを取れなくて悔しがっていた華恋の気分転換になればとの想いから今回内覧をする事にしたのだった。


でも実のところ、今回のコンテストに関しては、ひいき目無しで華恋を含め全員いい線いっていたのである。

だが今度ばかりは間が悪かった。

何故なら今回、世界のアマチュアデザイナーの中でも天才と称される韓国の《チェ・サヤン》が、兵役義務を終え出場し、最終選考まで勝ち残っていたからだ。

しかもそれが解ったのは丁度華恋が作品のコンセプトを一からやり直した当たりである。

只、華恋本人は《それが何?》と意にも介していなかったが、実際彼の作品は他の作品の中でも、群を抜くレベルのものだった。

後で聞いたのだが、流石の華恋も直にその作品を間近で見て息を飲んだらしい。

結果…

グランプリは大方の予想通りチェ・サヤンがとり、華恋達はうしろでそれを称えるように拍手する側となっていた。 

奇しくも会社が休日だった太郎と鬼無里夫妻、コンテストの開催に合わせてHANAKOを臨時休業にし、皆と一緒に観客席から見ていた冴子は、コンテストが終わり帰路に着くなか、静かに悔しがっている華恋や凛夜達四人を黙って自宅までミニバンで送り届けていった。


「皆お疲れ様」

冴子はそんな短い一言だけを添えて凛夜達を無事送り届けた後、太郎と車の運転を変わり最後に残った華恋の隣に座ると優しくこう言った。

「華恋…派手なデザインの服ばかりやってた貴女が、まさかウェディングドレスで勝負するなんて思いもしなかったわ…ねぇ…貴女はこれを着て優勝する事で、太郎さんに対する自分の本気を私や当の本人に見せたかったの?だからいきなりコンセプトを一からやり直したり、モデルも自らやったのかしら?」

「うちは…タッくん…太郎さんから見たらガキンチョだし…大人じゃないし…その…タイプじゃないかもって…それでも自分がマジだって解ってもらいたかっし…だから…」

そんな問いを投げ掛ける冴子に俯いたままそう答える華恋…

「華恋さん…」

「だけど結局の所、誰かさんはこのコンテストの前に意中の相手にプロポーズされちゃったと」

そういう事なのである。

要は本気できっかけが欲しかったのだ。

正直な今の想いを太郎に伝えるきっかけが…

だからだろう…

恐らく初めてだったかもしれない。

あれだけ真剣に作品に向き合った自分自身は…


その時…

「悔しいでしょ華恋さん…でもね、それは想いを伝える手段として作品を作っただけじゃ産まれない感情だから」

太郎は運転をしながらバックミラー越しに彼女にチラッと目線を向けた後そんな言葉を投げ掛けた。

「………そう思う…」

「それが解っているなら大丈夫♪さぁ〜帰って家へ帰りましょ〜♡」


『大丈夫、この娘はちゃんと解ってる』

太郎はそう確信すると、笑顔を浮かべながら二人を乗せて車を走らせた。

冴子も華恋のその答えに満足したのか、黙って彼女の頭を撫でながら優しく微笑んでいるのだった。


そしてコンテスト開催から四日後…

凛夜達に先に交代で休みをとって貰った後、最後に休みを取った華恋に合わせて、今回内覧を計画した太郎のである。

 


…続く…







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