第21話 山田巡査部長の先輩の話し

巡査部長って言うと偉そうに聞こえるけど

下から2番目、36歳独身


俺がまだペーペーだった頃の

警察学校を卒業してすぐの頃、先輩と仲良くなって飲みに行った

昔の話だから時効だよ、と酒の肴に先輩が話してくれた話し


先輩の前の部署は『マル暴』だった

大阪のとある家へ家宅捜索に入った

事件の概要は伏せるけど、不良グループのリーダーが暴力団と繋がってて、クスリやってるとかだったと思う。


普通の民家っぽい家だったけど

息子の罪を隠したいのか、玄関でお母さんが数珠をじゃりじゃりさせて

下駄箱の上とかでめっちゃ臭っさい線香か何かのお香をモクモク焚いてて


母「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」

とひたすら呟いていた。


この家が、当時少しだけニュースになっていたカルト系宗教団体の〇〇〇教団の信者だって事は、事前調査で知っていたけど

なんて言うかすごい不気味で気持ち悪かったそうだ


刑事ドラマでもありがちだけど

暴力団と対峙するやつらは、だいたい短気ってか強気なわけで


先輩の同僚の林さんは

「お母さん頭大丈夫?ハイこれ令状ね。息子さんの部屋見せてねー、ちょっとぉ念仏は仏壇でやってよ」

などと言って素通りする。


そして平日の昼間なのに家にいるお父さんも、ふんぞり返っていて腕組みして廊下に仁王立ちして、とても邪魔


父「〇〇先生が言うには、今日の客人に災いを運ぶ不吉な者が混ざってる家に上げてはならぬ

みんな死ぬと御神託を受けたのだ、悪いことは言わん帰れ!」


その家には宗教関係っぽい、変な壷や気色悪い神棚があるだけで

他の家具とかは普通よりちょっとブルジョワっぽい家だった


調査を開始するが、薬や注射器の類とかが、どこを探しても無い。エロ本1つ見つからない

父親がニヤニヤしながら余裕の顔でこっちを見ていた。


林があっと手を止めて振り返り

「あの神棚!調べてない」


林が神棚に手を伸ばすと

ひたすら「南無妙法蓮華経」を叫んでいた母親の顔が青ざめ

「禁忌に触れるなぁ馬鹿者共!

愚か者め!地獄へ落ちるぞ呪われるぅぅ」とギャーギャー言い出した


父親もニヤニヤ余裕面を捨てて

「本当に辞めろ!死にたいのか!そこは関係ない!辞めろぉぉ!」と喚き出す


いかにも怪しい神棚、2人の反応を見て俺等はこれは当たりだと確信した。

林が神棚をガサガサすると、中から黒塗りの御札が貼ってある、小さめな箱が出てきた。

習字道具鞄くらいの大きさかな?


ビリッと御札を破いて

怒鳴る母親と父親を余所目に箱を開いた


林「うわぁっなんじゃコリャ?!」


ゾッとした その箱の中には…


長い髪の毛の束、指から剥がしたような茶色くなった血がついてる爪

まるで小枝のような干からびた腕、先輩には子猿か何かのミイラの腕に見えたそうだ

それと古そうな御札が大量に入っていた


林も先輩も他の奴らも言葉が出てこなかった


母親が、鬼のように歪んだ顔で

「呪われるぅ!!みんな死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ―…ギィーぁー…」

と白目を剥いて叫んだ姿のまま倒れバタンと込んだ。


ギョッとして捜査員の一人が駆け寄って様子を伺うと、白目を剥いて歯を食いしばり口からぶくぶくとヨダレを垂らして気絶してた


林はその箱を持ってるのが嫌になって、震える手で箱を閉めて上棚に戻した


上司に調査が失敗だった事を電話で連絡すると、

収穫無しに帰って来るな!とお叱りを受けた

上司『馬鹿かお前ら!だいたい詰めが甘いんだよ!そこで待ってろ今行く!』


しばらくして上司が来た


上司は土足のまま神棚に直行して箱を地面に叩きつけて、ガシャッと踏んだ

御札とかを靴のままグシャグシャと踏む上司がドヤ顔してる


正直頭逝っちゃってる母親より上司の方が怖かった…と先輩は言う


上司「ほらな!箱は二重底やんか!すぐ気付けよホンマに!」


箱が二重底だったのか原型をとどめていないけど、クスリやってる証拠が見つかった。

林と先輩と他の捜査員が拾って証拠をダンボールに入れていく


バレて観念したのか

大人しくなった父親の顔から血の気が引いて、真っ白っていうか土気色になっていた


上司「お前らもよう解ったやろ?本当に怖いんは悪霊や呪いやない。

人間の本質や!人の悪意の方がよっぽど怖いわ。

人は金のためなら人もるし、悪いことだって平気ですんねん

気色悪い神棚に隠して、箱の中にいかにも怪しい物いれて、死ぬとか呪われるとか適当ほざきよる!

今回の事件なんてまだ軽い方や、宗教団体の本拠地はこんなんちゃうからな、もっとえげつないでホンマに!」


それから、上司が家の至る所で焚かれてた臭かったお香を捨てると、別の匂いがしてきた

腐ったような匂いで

和室の畳をめくると、明らかに床を剥がしたような後があった


結果から言うと出てきました、しかも1体とかじゃない、めっちゃ…


先輩や捜査員の何人かが吐いていて

上司がスマホでどこかに連絡して

しばらくするとパトカーのサイレンの音がたくさん聞こえてきた


不良グループのリーダーが直接手を下したって言うより、暴力団の後始末をまかされてやったのか

両親の宗教団体絡みなのか


申し訳無さ程度に出てきた薬より大変な事件になり、すぐに規制線が張られて、鑑識が入って俺等は追い出された。


後で知ったが、その家の息子らしき遺体もその中から出てきた

父親は知らんかった言うてショック受けてるようやったけど、母親は狂ったか何かでまともじゃなくなって話にならん


先輩はこれも演技か?と何を見ても疑うようになった


上司が「何でも疑え!基本やろ?人間の本質が一番怖いで」と言っていた



箱を最初に触って御札を破いた、林が2年後に亡くなり、当時の捜査員の半分が事件や事故で行方不明になった



先輩「上司以外はみんな移動したんとちゃうかな?

俺も移動願い出して昇級試験に受かったときに移った。

怖くなってすぐにお祓い行ってんけどな?

何軒かは、無理ですとか、手遅れですとか、予約で半年待ちですとか言って断られた」


「それでどこ行ったんですか?」


先輩「上司が行ってた寺を紹介してもらってん

何だかんだ上司もお祓いしてんねんで!人間が一番怖いとか言うておきながら!

でも、その寺も最初は断わられてな

他に行くとこ無いんですぅ言うて境内の公園に居座ってん。

夏やったしな、滑り台で寝ててんで。今やったらすぐに警察呼ばれるやろな。

朝になって公園に来た子どもが、おじちゃん何してるの?とか言って枝でつついてきよるねん。

住宅街にあった寺やしな

コラァとか言って追いかけたら、集まってきた子らがキャーキャー喜んで逃げて、追いかけっ子して遊んだったらな

住職が根負けしてお祓いやってくれたわ」


「お祓いしてもらってよかったですね、ってか不審者で通報されんかったんですね」ドン引きやし


先輩「警察より先に住職に通報したんやろ」



あれから数年―…


俺は今、巡査部長

いわゆる交番のお巡りさんになっていて

なんの縁があるのか、その先輩の言ってたお寺の近くに勤務している


たまに不審者通報が入ってきて駆けつけると

度胸試しの不良が酒のんで騒いでたり、痴呆老人が徘徊して境内にいたりと

こちらも慣れてきてすぐに対応している


俺自身もお祓いしてもらった事がある

その話はまたいずれ


その寺は地域にしっかり密着してて、本堂の横の広い和室はよくイベントに使われてる


今日は、毎年お寺でやってる子供会のイベントで

春の交通安全運動に呼ばれて来てる

「交通ルールを守りましょう」とかのやつ

交通課は幼稚園とか小学校とかに行って、体育館とか運動場で自転車事故の再現とかやって忙しい

小規模の子供会のイベントとかは近くの俺等が呼ばれる


今年は、着ぐるみも用意してて

子供たちは、お利口さんに三角座りして座ってくれる

ぼろアパートが新しいマンションになり、畑が埋められ新築がボコボコ建ち子供も増えた

本堂の横の広い和室に子供だけで60人以上いる(保護者役員を入れると70人ほど)


だがそんな事よりもだ

今年は保育士さん雇ったの?子供多いもんな

幼稚園とかで見るエプロン、それに収まりきらない巨乳の超美人がいる


愛想の良い笑顔でニコニコしながら

「今日はよろしくお願いします」


こんな美人、警察官じゃなかったら笑顔で喋ってもらえなかっただろう。やってて良かった警察官

俺にも春が来たんじゃ無いだろうか?


プロジェクター使って交通安全の動画を流して、紙芝居する。

慣れてない感じが初々しい。新人保育士なんかいいね


子供は遠慮がないな、膝に乗ったり、服引っ張ったり、オッパイ触ったり、さすが保育士さん嫌な顔せず何されてもニコニコしてた

俺も子供になりたいです

笑った顔は輪をかけて可愛いな


飽きるのが早い子供たちは小一時間でおしまい

出されたお茶とオヤツを食べたら、その美人の保育士と着ぐるみを連れて境内の公園へ


保護者は井戸端会議で「今年の1年生は20人も入ったのでしょ?〇〇の準備が大変よ!」とか話てる


仕事が忙しいお巡りさんは早々にお役御免で、俺はコンビニのペットボトルとおにぎりの差し入れをもらって

帰り際に大奥さんが挨拶くれて、衝撃的な事を言う


「ウチの新しい嫁なのよ、可愛い子でしょ?大学卒業したら結婚するんじゃないかしらホホホ」


まさかの次男の嫁なのォ?

ほえっ!大学生?新米保育士さんじゃなかったのか…


あっ、結婚したらずっとここにいるんだよな

たまに来よう、またお祓い頼もうかなぁ




以下ナオ視点―…


先日の修羅場は大したこと無かった

マイの生霊が指さす方へ追いかけたら、喫茶店でカズキが泣いてるマイを口説いてた


カズキ「おっ早いな、元カノなんやったん?」


アホを追い出して、そのままその喫茶店でデート

泣いてるマイが可愛いくて、ひと目もはばからず舌を絡めまくった。マイはトロ顔で甘くてうまかった。


マイ「勘違いで良かった…ナオちゃんカッコイイから、いつかこんな日が来るんじゃないかって怖かったの(ホッ)」


涙で目がうるうるしてて、キスして唇がプルプルのマイは照れて赤くなってて、めちゃめちゃ美味しそうに可愛かった


兄貴バカの女が来ただけだったからな、ちゃんと後始末してから家出しろよクソが!


部屋で慰めの続きして、乳揉んでちょっとずつエロい事に慣らしてやろう

自分から俺に乗って来るように躾けないとなぁ


家帰ると母さんと祖母さんが出て来て、マイが挨拶する

週末の子供会のイベントの手伝いやらないか?とかの話になった


なんでも大学でボランティアに参加すると単位が貰えるらしい、事前登録いるとかで今度申請用紙貰ってくるって


カズキもヒョコッと出て来て

「へぇー、マイちゃんの大学そんなんあるの?」


マイ「カズキくんも2回生になると説明あるかもね、学生課とか掲示板に張り紙ない?」


俺を差し置いて楽しそうに大学の話しをするからイラッとする

マイを連れて行こうとしたら、また今年もプロジェクター使うから準備しろと祖母さんに頼まれた


数年前に交通安全の準備が面倒で買った

動画拾ってきて適当に編集して流すだけ、オマケで15分アニメ流したらウケがよく、恒例になった。

マイがプロジェクターに興味を示して、結局俺の部屋で過ごす事に。

ついてきた馬鹿カズキを追い出して


「マイちゃんおいで」


「…うん」


ベッドに腰掛けて遠慮がちに照れるマイを引き寄せる

後ろから抱きしめるようにマイを座らせ、腕にずっしりした幸福を乗せる。

柔らかい女の体と伝わってくる体温が心地よい


マイの頭にチュッチュして様子を伺うと、赤くなって照れて見つめてくる

可愛いから耳たぶにもチュッチュとしてやると、くすぐったいのか身をよじって腰が引く

離さないと腕に力を込めて密着させると体重を預けてきた


見た目と違って初心なマイの可愛い反応に、ナオは脳内のエロくてエグい想像が後ろめたくなった

今すぐ服をビリビリに破いてぶち込んで揺らして泣かせてやりたい感情をグッと抑える


代わりに、片手でマイの頭を撫でて、長い髪を弄った、髪に顔を埋めて匂いを嗅ぎマイを堪能する。

時折、マイを抱きしめてる腕を上下してずっしりした幸福の重さを楽しんだ


俺のマイが照れて可愛い

マイが一生懸命、何か話してる姿も可愛い


「そ、それでねっ、カナエにナオちゃんの、写真見せたら、カッコイイねっていってたんだよ。それでね―…」


「うん、うん、へぇー…」


マイは自分の目線の下、自分の大きな胸に隠れたナオの腕にそっと触れた

ゴツッとした男の腕にドキドキする

つー っと遠慮がちに腕をなでた


ナオは予期せぬ刺激に「はひゅっ」と声が出てゾクゾクする


ナオ「マイちゃん…何その"意地悪思いついた!"みたいな顔!

可愛いけど一瞬視線が女王様みたいでゾクゾクしたからね?

僕をくすぐるつもり?この体制なら僕が勝っちゃうよ…ホラ、エイ、こっち」


マイ「キャン!ん~~あっは!ゴメンナサイゴメンナサイ!

だってさっきからナオちゃんの鼻息当って首もくすぐったかったの!ハァハァ」


ナオ「なんだ、首が弱かったの?」

可愛いね、首が性感帯だったのかムフフ


ナオの普段のおつとめに、首筋をベロベロに舐め回す妄想が追加された


ナオのガッシリ硬い筋肉と熱い体温にマイはトロンと既に満足していた



幼い姿の守護霊マイが扉に張り付いている

ドアの下の方の隙間からカズキが覗いてるのかもしれないとナオは思った

マイの照れてる顔をタダで見せるなんて、もってのほかだ


(カズキ「守護霊マイちゃんちょっと、どいて!見えへんやん!ヤりそう?なぁ?生オッパイくらい見てもええやん!」コソッ)



週末の子供会イベント―…


マイのバイト先は、冬は忙しいけど春はそんなに忙しくない


祖母が可愛いエプロンを用意していた

マイが着るとエロ漫画の保育士さんのように、腰がくびれてオッパイがポヨンだった

(※浮かれて語彙が死んでる)


マイは準備のために早目に来ていて、和室に掃除機をかけ始めた


「あれ?俺の可愛い奥さんが寺の掃除をしてるぅムフフ」


カズキ「…アホちゃう?」

(※早朝バイトを終わらせた)


祖母「カズキくんもお手伝いしてくれるのよね?今年は着ぐるみを借りてきたの。

ナオは体力ないから、カズキくんやってくれる?

夏場じゃないけど熱中症には気をつけてね、バイト代だすわ」


カズキ「ありがとうございます!頑張ります」


掃除を終わらせたマイが、全然可愛くない着ぐるみにキャッキャはしゃいでいた。


着ぐるみが、ここぞとばかりにマイに触ろうとするが、手がドラ〇もんみたいなゆるキャラだったから残念で仕方ない




マイ「おはようございます」


保護者「まぁ!おはようございます(今年は保育士さんがいるのね)」


子「おはよーございます」

(※オッパイに挨拶してる)


その後、和室にいる着ぐるみに気づいて親子で一瞬ギクッと驚いて止まるけど

手を振る着ぐるみを見て子供は走り出す


いつもは嫌なエプロンだけど、マイとお揃いだと思うと不思議と嫌な気がしない

ナオは、プロジェクターの前で待機。時間が来たらスタートを押すだけ。


時間になり、マイが入って来て座ると、子どもが集まってくる


子どもって美人とか可愛い先生が好きだよな

膝に乗ったり、手を繋いだり、抱きついたり、オッパイ揉んだりされてるが

マイは子供に囲まれて楽しそうにニコニコしてる


住職である祖父が少しだけ挨拶して

部屋を暗くして30分動画を流す


終わったら、警察官が出て来てピッと笛を吹いて

「ハイッ体操座り!…みなさん、元気よく挨拶しましょう!おはようございます」

と言って敬礼すると

みんな体操座りして「おはようございます」とお利口さんになる



10時から11時までのイベントが終わって、子ども達がマイと着ぐるみを連れて外に出る

ナオはその様子を少しだけつまらなそうに見る


マイはいつも他の子と楽しそうに遊んでいた

ナオはそんな幼い日を思い出していた


マイちゃんは俺のなのに…


大人になっても変わらない、いや変わった。

マイはあの頃よりも美人になった、集まってくる輩は確実に下心があり常に恋人の座を狙われてる

一見するとハッキリ物を言う自己主張が強そうな勝ち気な美人に見えるけど

笑った顔は幼さない面影があり、少し照れたように笑うと第一印象のギャップに男なら誰しもドキッとする


クイッと手を握りる感触があった


温かい小さな手がナオを慰めるように握っていた

幼い姿のマイの生霊がニコニコとナオを見上げる



プロジェクターを片付けながら外を眺めてたら、保護者に声をかけられた


女「あのぉー、ちょっと相談があるんですけどォ…ここだと言いにくいから連絡先教えてください(ウインク)」


若そうなギャルママだった

付けまつ毛と派手なメイクにゴテっとした付け爪

茶金の髪は頭皮から5センチが黒髪のいわゆるプリン頭

春とはいえ、肩を出してるセーターにやたらローライズデニム、ちらりと見えるヘソにはピアスがついてる


マイを囲むどす黒い守護霊アレが、今は境内の公園にいる

さっきマイと同じ部屋にいたら祓われてるはずなのに


何故こんながここにいるんだ?


ギャルママの周りに数匹ぶら下がって漂ってるのは水子の霊

そして、ヤツメウナギの口をしたボサボサ頭の派手な花がらのワンピースを着た女が後ろに立って女を怒りの形相で睨んでる


どうやったらここまで顔が歪むんだよオエッ!



後ろで保護者のヒソヒソ声がする

「〇〇さん終わった頃になってやっと来たわよ、自分から今日の準備するって言ってたのに」

「遅れるなら連絡欲しいわよね、返事も返さないし!」

「持ち帰り用のお菓子の準備するって言ってたのに持ってきたのかしら?」

「自転車で来てたわよ、手ぶらじゃない?」



なるほど、マイが外に出てから来たのか

「あ、そういうのは住職にお願いいたします」


断っても、ナオの事が相当タイプなのか離れない


女「えぇー、でもぉ、住職はおじいちゃんじゃないですかぁ?私は君に決めたのキャッ」


吐き気がする


このトリ頭のブスの香水も気持ち悪いけど

憑いてる水子の霊が腐った匂いを放ち

花がらのワンピースの女は『シネシネクソ女』などブツブツと恨み言を言ってる


ギャルママがない胸を突き出し上目遣いにすり寄ってくる

一緒にヤツメウナギの顔が伸びてきた

子供会の手前、近寄るな!と追いはらえない



ドンッ!


女「ギャッ?!何よ!」


子供「うえーん、ごめんなさーい!」


女「はぁ?危ないじゃないの!痛いのはこっちよ!

ウルサイ泣くな!黙れクソガキ!」


子供「うぇーん、えん」


そこで保護者の人たちがようやく動いた

「ちょっと、言い方!そんなとこに立ってるから邪魔なのよ」

「もう帰れば?見たら分かるけど片付けの邪魔よ」

「大丈夫?ママに迎えに…あら?いない?」

「どこの子だった?」

「手で隠れて顔が見えなかったわ」


ナオは保護者が来てギャルママに詰め寄る隙に

さっとプロジェクターを片付けて、スゥ~っとフェードアウトした



泣いていた子は生霊マイで、ぶつかったのではなくヤツメウナギを祓ったのだ


昔流行った魔女っ娘アニメの星ステッキを野球のバットのようにスイングして悪霊を吹き飛ばし元の場所に還した。

その衝撃をぶつかられたと勘違いしてギャルママが怒り出した


その後ギャルママは境内で遊んでた子供を連れて帰った。

宇宙コスモ 太陽サニー!帰るよ!早くして」


12時を過ぎると昼食の為にポツポツと帰っていき、最後の子を見送ると


カズキ「あ゙ぁ゙ーー!めっちゃ疲れたわ」


マイ「カズキくんお疲れサマ…わっ凄い汗じゃん!着ぐるみってそんなに暑いんだ」


祖母「お疲れさま。はい、スポーツドリンクよ

お風呂沸かしてあるから入って来なさい。

お昼ご飯もう出来るからね」


カズキ「あざっす!」

マイ「あ、お手伝いします」


祖母「マイちゃんも疲れたでしょ?手を洗ってきてね」




マイ「ナオちゃんお昼ご飯だよ?」


ナオ「……ん」


マイはナオが何となく機嫌悪く不貞腐れてる事に気がついた

ベッドに転がるナオの横に遠慮がちに腰掛ける



ナオ「マイちゃんは楽しそうだったね…」


マイ「…たくさんの子に囲まれてても、気がつくと何か寂しかったの。だってナオちゃんいなかったから」


ナオ「楽しそうに笑ってた!」


マイ「そりゃ仏頂面で遊んでたらクレーム来るでしょ」


ナオ「……ブフッ、仏頂面で遊ぶマイちゃんウケる」


マイ「明日筋肉痛になりそう、バイトの方が楽だと思わなかった

カズキくんは飛び蹴り何回もくらってたし

服の中に手を入れてくる子とかいて逃げ回ってたら追いかけっ子になって」


ナオ「マイちゃん追いかけっ子早いもんね」


マイ「え?私、足遅いよ?」


ナオ「え?昔は早かったじゃん」


マイ「そりゃ子どもの頃はね」


その後に続く言葉にナオは驚愕した


マイ「胸が大きくなったら走れなくなったの、こうバンバン揺れて苦しくて痛いの。

こう手で抑えて走るから…って下ネタみたいになってない?

下ネタじゃなくて生理現象?じゃなくて万有引力?物理だわ!そう物理的に走れなくなったの!」


ナオ「……アハハッ!へぇー、下ネタじゃないけど、物理的に巨乳って大変そう」


マイ「去年より大きくなったからカップ変えたの…ブラ全部買い替えよ!

あ、でもアンダーは細くなったから太ったわけじゃないよ?」


ナオ「マイちゃん別に太ってないじゃん」


マイ「フッ…男には解らないかもしれないけど

服によっては胸のせいで、太ってマタニティに見られちゃうのよ!」


ナオ「またまたぁ、マタニティはないよ」


マイ「いつも細く見えるように服に気を使ってるからね!市販のワンピース胸が邪魔でほとんど着れないから!

着れてもデブに見えるし!」


ナオ「僕はちょっとくらい太ってても気にしないよ?」


マイ「私が気にするの!」


カズキ「オッパイの話はもういいから飯食おうや」


開けっ放しのドアからカズキが覗いて声をかけてきた


マイ「ハッ呼びに来たんだった!ナオちゃん行こっ」


マイに引っ張られて立ち上がるとナオは歩き出した


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