第20話 自称婚約者あらわる

私は京都のとある田舎の寺の跡取り娘です

見える質の私の身に起こった不思議な話です


私が小学生の頃

毎晩2時頃になると隣の部屋で眠っていた弟が突然泣き叫びながら家中を走り回り、階段も転げ回るように降りていきます。


不思議なことに捻挫とか大怪我はしていません、軽い打身と青痣程度です。

それも5分くらいですぐに終わります、そんな日が数日続きました


2階には2部屋しかなくて、私は隣の部屋なので弟の奇行に一番に気付き、いつも飛び起きます


弟を病院に連れて行っても、どこが悪いわけでも無く、困った両親は住職の祖父に相談します

祖父母とお手伝いの坊主が住んでる社務所兼自宅と

私たちが住んでる離れの新築の自宅は別なのです。


視てもらったところ、弟には悪いモノのようなモノが憑いていると言うのです

山道の途中で落石があったらしく大岩が道を塞いでいて、土地の気が溜まってが通れず怒っているようでした


そこからポツポツと弟と同症じ状で寺にお祓いに来る子供が増えました。みんな10歳未満の子供ばかりです


山道と言っても広くて、自治会や地域の人が総出で調べたらしいです。

子供の私たちは迷子になるといけないので参加してません。

まぁ捜索時間には普通に学校ありましたし

帰宅後は児童館の代わりになっていたお寺で、他の子ども達と部屋で宿題して、おやつ食べて遊んでいました。


以下は聞いた話です

ずいぶん使われてない登山道の後っぽい所に古い石造りの祠があり、それを少し押しのけるように落石があったと

その中に石を削ったような仏像らしきモノがあり祖父が場所を移しました。

塩、お酒を撒き、線香を供え、何かして帰ってきたようです


お察しの通り、祖父母と私は見えますが

両親と弟は見えない質です


弟はそれ以来ぐっすり眠っていて

もう解決した気になっていた祖父母の所に怪異がおきました

祖母が「最近変な夢をみる」と言うのです


あの登山道っぽい所に立っていて

しかも、もっと標高が高い所にいると

山道を降りようとしてもパジャマに裸足で山道を降りるのは困難です

何とか大昔の石段のような所を下って行くのですが途中で道が崩れて通れなくなっていました

途方にくれて座っていると、間もなく後ろから足音が聞こえます

祖母は咄嗟に草むらに突っ込んで隠れたそうです

直感的に人ではないものが来たと思って息を殺して隠れました

そしてその足音は祖母のいた辺りで1度止まってヒソヒソと話すのだそうです

恐怖に震えながらただひたすら通り過ぎるのを待つ、震える体に力を入れて音がならないように


やっと通り過ぎたと思って道に出ると、塞がれた先で立ち往生していたのか戻ってきました

鉢合わせた祖母は、やってしまった!

と後悔しましたが既に遅く、祖母の背後にぴったりとくっつきながら歩くのだそうです。


また、その中の何人かは先頭に進み石段から外れて歩き、違うと思っても足が勝手について行って

山を迷走して迷子になりました。

裸足で山道を歩くためとても歩きにくく、足が切れて痛くて我慢できなくなった所で目が覚めるのだそうです


祖父は、まだ終わっていなかったと焦って

次の日もその崩れた道を探しますが見つからず、その間も祖母は毎晩山を迷子になる夢を見るそうです。


足は切れていないので怪我はないのてすが、とにかく山道を迷子になるのは体にだけでなくメンタルも疲れるようです


そうして見つからないまま何日か経ったある日、

祖母が真剣な顔をして祖父に言いました。


「どうも探してる山が違う気がするの」


祖父は最初に見つけた祠の上を必死で探していましたが、祖母が言うには違う気がすると


「どうしてそう思うんだ?」


「山道を下っていく時に、近くに沢があったのよ跨げなくもないけど、裸足では滑って危なさそうだから…橋でもあれば通れたのにと思って覚えてたの。

気がつくと、駕籠カゴって言うの?

人の乗ってるようなあれを4人くらいで運んでるの、私も担いでいたわ」


祖父はそろそろ相手さんがしびれを切らして来たのでは?と戦々恐々としていたそうです

本家の寺に応援を頼んで、もっと見える人を連れてきてもらいました


翌日、来たのは若造で祖父母は驚いていました。

県外のお寺の跡取り息子だと言って、まだ高校を卒業したばかりの若いお坊さんでした。

ちなみにハゲてません、ベリーショートでした。


坊主「父の代わりに来ました、藤原マサユキがご挨拶申し上げます

早速ですが、山を見てきてもよろしいでしょうか?」


祖母「わざわざ遠い所ありがとうございます、ご案内いたします」


坊主「いえ、御婦人には辛い山登りです。途中で道が途切れてるようなので若い衆を2、3人お借りします」

と言って袈裟を脱いで、Gパンとトレーナーにリュックサック、片手にスコップを持って

手伝いに来ていた人の中でも若い方を連れてサクサク山へ入っていきました。


その時に私は不思議に感じました。

だって5人いたのです、4人で準備をしていたはずなのに

祖父に訪ねましたが「ありゃ相当だな」としか教えてくれませんでした。


その日の晩は帰ってこなくて、翌朝どうなったか気になりつつ学校へ行きました。

そして帰宅後にはもう既に解決していました。


祖母が聞いた話によると、一晩中ザクザク道をスコップで整地していたそうです。

土砂を均して通れるようにしたのだとか。

帰って来た時は4人で「肉体労働キッツー」と、泥だらけだったそうです。


マサユキさんは社務所の祖父母の家で風呂に入り、汗と泥を流して寝ていました。

一緒に山へ行った人たちはそれぞれ自宅へ。


夕食時にマサユキさんが起きてきて、どうせだからと新築の離れにある私たちの家に呼んで夕食のお鍋をみんなで食べました。


マサユキ「え?終バスもう終わってるんてすか?…じゃあお言葉に甘えて明日帰ります」


私も弟も年の離れたお兄さんが珍しくて、構ってほしくてお話をせがみました。

マサユキさんのお家のお寺は町中にあるようで、電車も12時近くまで走っていて結構な都会だそうです。


その夜、夢を見ました

私が年頃の娘に成長した姿で白無垢を着て、マサユキさんらしき人と結婚式をあげる夢です。


そして、どこかの何かの前に行き儀式をするのですが…

奥のふすまがひらいて何かがズリ、ズリ、と出て来て鈴を鳴らして



『サンカイ』



そこで目が冷めました。

全身汗だくで、ショックでいっぱいでした。

寝るとまたあの夢を見るのではと怖くなって下に降りると、リビング横の和室でマサユキさんが寝ていました。


私に気がついたマサユキさんが「もしかして…怖い夢を見た?」と起きてきて電気をつけてくれました。


「はい…あの…変なお化けが…」


私は結婚式をあげる夢なんて恥ずかしくて言えなかったのです。


しかも、成長した私はウルトラ美人で

白無垢なのに、スタイルの良い長い足が着物から見えて、まつ毛も長くて目も二重でぱっちりしていました。(※現在一重瞼)


明るくなるまでマサユキさんは起きててくれて、

私は優しい語り口調の物語を聞いて、安心して眠りにつきました。

朝になって両親が起きてきてマサユキさんの布団で私が寝てるのに驚いていましたが

マサユキさんは真面目に朝のお勤めの為に本堂に行っていて、離れにはいませんでした。


学校があったので、私は簡単な挨拶だけしてお別れしました。

私の初恋は切なくて短かったのです



後で祖父に聞いた話です

祖父も夢を見ていたようですが、私の見たものとは違い、巫女さんが着るような白に赤の袴姿をしているけど、人間ではないものが祠の前に立っていて


"ここの娘は生涯独身である"

みたいな事をのたまったそうです


失礼な!

初めはそれこそ夢だと思っていた祖母も、同じような巫女さんの夢を見て確信したそうです


「私は逆にマサユキさんと白無垢を来て結婚式をあげてる夢を見たの!二重でぱっちりのすっごい美人になってたんだから!!」



祖父が残念そうな顔で、マサユキさんから聞いた話しを教えてくれました。

ここの山にいる何かに"結婚するならこの人だ"と夢に出てきたが、それがここのお嬢さんで無いことだけは保証します

私は跡取りですのでこちらには婿に来れません



それは嘘に決まってます!

確かに夢の中では主観じゃなくて客観的に美人になった将来の自分を見ていたけど…あれは絶対に大人になった私よ!


それから夢でたまに

暗い中で髪を振り乱している女の人をみるようになりました。

何をされる訳でもないのですが、その目と顔が気味悪くて



あれから8年たって私は18歳になりました


相変わらず一重瞼のままだったので、医学の力で二重に整形しました。

まだ近づけてない部分もありますが、まつ毛もエクステしてふさふさになり、体が全体的に太っても胸はそこまで大きくならず…

身長もそこまで伸びてなくて、夢の姿まではもう少し年月がいるのでは?と思っています


ただ、去年付き合った彼氏とヤっちゃってから

夢を見なくなりました。

年々見えなくなってきて、あの夢の髪を振り乱して睨んでいた醜女がきっと私の周りから消えていったのだと思います


祖父母は寺の跡継ぎに弟を指名しました

私が街の大学へ行くために電車を乗り継いで予備校へ通ってるのを遊んでると思ったのです

無事に大学に受かり、大学の近くの学生寮に引越しました。


出発前に祖母からお守りをもらいました。

「規則正しい生活を心がけ、危ない人にもモノにも場所にも近寄っちゃアカンからね?

それからあんたは自分をもう少しちゃんと見つめなさい。将来美人になるなんて、現実を見なさい」


母「お義母さん!大丈夫よ、ユメは今のままで十分美人だから。

これ以上何もしなくていいのよ?」


「はいはい仕送りよろしくねー?」

鼻にヒアルロン酸注射するからバイトでお金貯めないと!



そしてあれから更に4年たって私も22歳に


バイトしながら都会で大学生活を送り、あのド田舎には正月しか帰っていません。

それも雪が降った時は危ないからと帰らなかったり。

無駄に土地だけ広くて、敷地内に墓があって不気味で、立派だと思っていた新築の離れは流行りの建築仕様ではありませんでした。

田舎と違って都会の男は派手な女が好きなのか、中々彼氏が出来ませんでした。

できても3ヶ月もせずに別れちゃいます

電車で2時間、そこからバスを乗り継いでさらに1時間半の短い距離なのに実家の田舎は別世界です


大学を卒業しても帰ろうとは思わず、都会で就職しました

契約社員ですが、私は身長が低くて童顔なので若く見えます(※ぽっちゃり系)


夢の姿まであと一歩の所で身長が足りない気もしますが、小学生の時に見たきりなので、あんまり覚えていななくて

子供の頃は衝撃的で美化しすぎていたのだと思います


大学を一応卒業したので

マサユキさんに再会して夢について改めて話そうと思います

毎年、年賀所のやり取りはあって

マサユキさんが結婚した話しは聞いてません

スマホで住所を探して、電車とバスを乗り継いで会いに行きました


羨ましい

ご自宅は都会にあって、お寺はそこそこ大きくて広くて立派です。境内に公園があり、駐車場は砂利じゃなくて舗装されたアスファルトでした。


ピンポーン、ピンポーン―…


「はい…どちら様ですか?」

お婆さんらしき人が出てきました


「あの、私は京都の〇〇市の〇〇寺の娘です。以前こちらのマサユキさんにお世話になった、細田ユメです…年賀状を毎年頂いてます」


婆「まぁ、それはわざわざ遠い所からようこそ

…えっとマサユキに御用でしょうか?」


「あの…その…、私が小学生の時に来てもらって…それで夢を見たんです

その夢にマサユキさんが出て来て、ずっと気になっていたものですからお話を伺いたくて来ました」


婆「あら、そうでしたの…どうしましょう?

とりあえず中で詳しくお伺いしてもいいかしら?」


それから応接間に案内されてマサユキさんのお母様とお父様が来て、ご挨拶をしてくださいました。


私もしっかりした挨拶をします

「今年〇〇大学を卒業しました細田ユメです

あの、こちらつまらないものですが」

奮発して百貨店の和菓子をお土産にしました!


マサユキさんのお父様が受け取り

「ご丁寧にどうも…それでマサユキに関するお話だとか?」


私は当時の事や、私が夢に見たものをちゃんと話しました

マサユキさんも結婚する夢を見たことだけ伝えて、相手が私ではなかった事は伏せて話しました。


お母様は複雑なお顔をしています

いきなり訪ねて、こんな話しは驚かれたでしょう…

でも私の両親も祖父母もまともに取り合ってはくれず、自力で何とかしないと話がすすみません


義母「困ったわねぇ?」


義父「あの、大変言いにくいのですが、息子のマサユキは寺を継がずにサラリーマンになり関東へ行きました」


「はぁっ?!」


義父「ご存知なかったですか?」

(※祖父の教育が厳しくてサラリーマンになった話しは、同じ宗派でそこそこ有名)


「年賀状には書いてませんでしたよね?」


義父「はい、身内の恥をわざわざ書いたりしませんから」


いや、そりゃそうだけどー!


「知りませんでした、ちなみにいつ頃でしょうか?」


義父「もう5・6年ほど前です」


そんな前なの?!嘘っ!!

じゃあ…あの夢は本当にただの夢だったの?


不意に応接間の壁に飾ってある写真に目がいきました


ウエディングドレスを着てますが、夢に見たあの美しい理想の姿に似ています!

どういうこと?!合成写真?!

なんでこんなモノが?やっぱりマサユキさんに何か関係あるんじゃ?


その時、部屋の外で「出かけてくるー」と若そうな男性の声がしました


まさかマサユキさんを隠していたんじゃ?

この人達、信じられない!


急いで部屋を出るとマサユキさんらしき人が玄関にいました

私は走って急いで飛びついて抱きつきました


「私は貴方と結婚するわ!」


男「は?」


「私達は運命なのよ!」


男「ちょっ(イラッ)辞めろ触るな!わっ何だよ??」


あの頃(※高校卒業時)のマサユキさんは、もうどんなご尊顔だったかうろ覚えですが、会えば解ると確信していました!

マサユキさんは成長して格好良くなっていました

間違いなくこの人がマサユキさんです!


「会いたかった…あれからだいぶたって解らないかもしれませんが。私です、ユメです!

覚えてませんか?

あの日、眠れぬ夜に一晩一緒に過して、私が眠るまでずっと手を繋いで一緒にいてくれたじゃない!

それに将来の事とか色々と話してくれたじゃないですか!

あの時のあなたはとても優しくて、私は忘れたことはありません」


「はぁ??何言ってんだキモッ!

あっ!マイちゃん誤解だよ!こんな醜女ブス知らないって」


誰よマイって? 「ハッ!!!私がいる?!」


「はぁ??離れろデブス!」


女「…と、取込み中…みたいだから…帰るね…

私、いないほうが話しやすいでしょ?うぅっ(涙)」


「マイ!待ってー!行くなぁー!

このっ離せよブタ女!わぁっ厚化粧が服に着くだろ!」


「ちょっと、待ちなさいよ泥棒女!私の姿を返しなさいよ!このクソ女ぁ!返せぇ!それは本来私の姿よー泥棒!」


わざとらしくお涙頂戴いやらしい!

女の武器を使って同情を引くつもりなのが見え見えなのよ!

大きな瞳で二重瞼のまつ毛も長くて美人で、手足もスラリと細いのに、胸は巨乳!

間違いないわ!夢に見た私の姿だわ!


「この泥棒女ぁ!逃げるなぁ!許さない!」


「カズキ!いるなら出て来てこの女抑えてろ!」


カズキと呼ばれた男の子が奥から出て来た

私はキッと睨んで威嚇しました!


「任せろ!マイちゃんは俺が慰めといてやるよ!早く元カノさんと、ちゃんと話しつけろよ?

ププッ女の趣味幅広いな?

あ、認知はしてやれよ?じゃーなー!アハハ」


「はぁ!?ふざけんなカス!

こらブス離せよ!あっ待て行くな!」


「あなたこそ離してよ!あれは私の姿なのよ!

私が美人になるはずだったのに!あの泥棒女許さない!私を返せ泥棒!」


多分あのクソ女のせいで、随分とガラの悪くなってしまったマサユキさんと揉み合ってると

玄関のドアがガラガラと再び開いて住職らしき人が怒鳴った


「じゃかぁしぃわい!痴話喧嘩は他所でやれ!

ハッ……ついに元カノが来よったか。マイちゃんに見つかって修羅場やな」(憐れむ視線)


「クソジジイ!」


義父「あの、お嬢さん??その息子は次男のナオユキのほうで、マサユキじゃないですよ?」


義母「マサユキは30過ぎですよ?いくらなんでも、ねぇ?」


「…え?」


流石に30過ぎのおっさんには見えませんでした

別人と言われたほうがしっくり来るような乱暴な言葉遣い…


祖母「お嬢さん、そろそろナオユキを離してやってちょうだい?彼女が勘違いしてしまったわ…かわいそうに(マイちゃんが)」


「でもあの姿は本来私がなるべき姿なの!

私は確かに白無垢を着てマサユキさんと結婚式をあげてる夢を見たのよ!

貴方じゃないわ!だってもっと背が高かったから!」


ナオ「はぁ(怒)ふざけんなドブス!

お前のその二重は整形だろ?目を瞑るとガタガタな線が入ってるし、うわっ付けまつ毛取れてるじゃねーか気持ち悪ッ!吹き出物とそばかすだらけ!

何より贅肉タプタプ!キモッ!臭っ!

マイはな、昔から可愛かったんだよ!!

出会った3歳頃からクリっとした二重でまつ毛も長くて手足もスッキリしてて、笑った顔がもう天使だったんだよ!

うわぁ睨むなよブスブスドブス!」

(※身長は地雷)


「何よー!失礼しちゃう!

なんて口悪いのかしら、信じられないわ!」


ナオ「勘違いして赤の他人に太った体こすりつけてる醜い化物に言われたくねーし!キモッ死ねよ!」


そう言って私を突き飛ばして、靴を履いて走って出ていった


住職「…修羅場やな」


祖母「違うわよ。年賀状どこ行ったかしら?」

実家に連絡して引き取ってもらわわないと


義父「姿がどーのと言ってましたね?なんの事ですか?」


私は悔しくて涙が出てきました

そして再び応接間に戻された時に

飾ってある卓上鏡に目がいきました…


あ!?


夢に見ていた醜女にそっくりの女が写ってるではありませんか!

髪を振り乱して憎しみのこもった目が恨めしそうにこちらを見ていました。


違う!コレジャナイ

美しいあっちが本来の私の姿なのに…

鏡を叩き割りたくなりましたが、既のところでここが他所の家だと思い出しました


それからお義母様も「マイちゃんは昔の面影のまま大きくなってるわ…貴女の姿を盗んだとかではないと思うのだけれど??」と言います。


信じられません

「私が夢に見ていたマサユキさんは、背が高くてちょっと筋肉質なマサユキさんでした。そして美人と結婚式をあげていました…」


祖母「確かにマサユキは筋肉つけてるようだけど。変ね?マサユキとマイちゃんでは一回りも歳が違うのよ?

それにナオユキとラブラブなのよ?天地がひっくり返ってもあり得ないわよ」


義母「可能性として無くはないけど…弟と付き合ってたのに兄に行くほど図太い子じゃないわねぇ」


「夢にみたんです」


義父「それはどんなだったかわかる?」


「それは…客観的に自分を見ていました」


義父「お嬢さんに取り憑いていたナニかのカスみたいなのは、先程祓われたからそろそろ気付くはずだよ?」


祖母「長年凝り固まった固定概念は難しそうね

紅茶をいれるわ、百貨店の紙袋の中身はおやつかしら?」


アンコの羊羹です…紅茶には合いませんねすみません。

お寺なのに緑茶じゃないなんて!?

洋風の薔薇の可愛いカップと広めのソーサーが出てきました


私は何もかもが悔しくて涙が出ました

気がつくとあれから2時間以上たっていました

お婆さんが、聞き上手でたくさんお話をしてしまいました、そして田舎の両親が血相抱えて飛んできました


父と母に泣きついてあの夢の話をしました。


母「まさか、まだ本気にしていたの?ユメはもう充分可愛いわよ?」


父「お前がそうやって甘やかすから…この度は、大変なご迷惑をおかけして申し訳ございません」



両親が何度も平謝りをしていました


そして車で今住んでるアパートに連れて行かれ

掃除できてない散らかった部屋に両親が入り

ちょうどその時にスマホに連絡が来て、内定取り消しを一方的に告げられました。

私は何もかも終わったと思いました。


母「帰ってきなさい、あっちでも仕事はあるわよ?」


父「車で20分の所にイ〇ンモールが出来るんだ、そこで募集してたぞ」


「うんわかった」

田舎のショッピングモールでバイトなんて嫌よ!

そう思ったのですが、自室の鏡に写る女は

やはり、髪の毛がボサボサで黒いマスカラの涙がが落ちて醜い化け物でした


本当は解っていました

夢で見た美人が自分じゃないことくらい

祖父母にも両親にも全然似てなくて、私じゃないって


両親の車で高速に乗って帰ってる時に出た世間話しで

高校の時に付き合ってた元彼が結婚していて夏には二人目の子供が生まれると聞きました…

実家に帰るならヨリを戻そうかと思ってたのに残念です

田舎の結婚は早いんです、ヤること以外の娯楽がないのです


あー、来週3回目の全身脱毛のコース予約取ってたのになぁ


「マサユキさんはお寺を継がずにサラリーマンになったのよね?」


父「朝も早くから真面目にお勤めしてたじゃないか、よほど厳しかったんだろうね」


母「家出するくらい厳しいのよ、ウチは緩くて良かったわ。ヒロくんが家出したら私も付いてくわよ」

(※弟が跡継ぎ)


「そうじゃなくて、私も関東へ行ってサラリーマンの嫁になるわ!」


父「今度は自分で金貯めてから行ってくれ」


母「ユメちゃんの大学のお金が高くて

ヒロくんが自分で、奨学金制度申し込んで頑張ってるのよ?

家賃の他にも管理費?月に一万円なんて高いと思ったら、そんなもの集めてないって…

ユメ、あなた自分のお小遣いにしてたわね?」

(※家賃も親持ち)


ギクッ、バレてたの?


母「それから家の二階のユメの部屋に、 今はお手伝いの人が住んでるのよ、お祖父ちゃんの方の親戚よ」


「はぁ?何であたしの部屋に?意味わかんない!追い出して!」


父「お祖母ちゃんの足が悪くなって社務所の部屋を1つ潰して広いバリアフリーにしたからだ。

今年の正月に説明しただろ?ヒロはバイト代少し出してくれたぞ」


ヒロは昔から要領が良くて嫌いでした

私のバイト代は全て交遊費に消えていきます

都会で生活してると必要経費です!

何もかも値段が高くて、友達付き合いも凄く大変でインスタにオシャレアイテム載せないといけないのに



家に帰ってびっくりです、お手伝いは私より美人で若い尼でした!


親が他界したらしく、ウチの家で預かる事に。

自分からお手伝いを買って出てバイトしながら、高校へ通ってるようです

「あと1年置いて下さい、卒業したら就職して出ていきます」

少ない遺産から学費は払い込んであると、大学は諦めてると控えめに笑っていました。


「どうでもいいけど私の部屋の物に触らないでよ!何か盗ったりしてない!?」


「触ってません!それにこちらのお母様にお姉さんの服を着て良いと言われましたけどサイズ合わないので…」


私より背が高くて細くて巨乳!目も二重で小顔!気に入らないわ!

別に意地悪してる訳じゃないけど、女同士だからって同じ部屋に押し込まないでよ!


両親が別々の部屋で寝るようになって、一階のリビング横の和室が母親の部屋になった

あの2人がまた同じ部屋に戻れば和室が空くのに!


それから1年たって、ようやくあの子が卒業して出ていくと思ったら


弟「姉さん出てってくれる?」


「は?」


弟「俺がこの寺を継ぐだろ?ここの離れの家も俺が継ぐから。俺達、来月結婚するんだ」


「はぁ?!」


いつの間にかあの小娘が弟に手を出していたようです!アバズレが!


本当に弟の子か解らない、妊娠したからと弟が責任取って嫁に貰うようです!

信じられない!


「両親がいない孤児じゃない!

結婚しても何の得にもならない女を嫁に貰うなんて、その妊娠だって本当にあんたの子なの?」


弟「姉さんが部屋から追い出すからユアちゃんが行く所なくて、俺が部屋に呼んだんだよ」


「だって遅くまで電気つけてウザかったんだもん!勉強なんて学校ですればいいのに!」


弟「寒い夜に暖房つけないでリビングで勉強させたり、夏の暑い時もエアコン無しの部屋に置いたり…この家の人間は鬼だったんだね?

ジジババと両親の面倒は俺たちが見るから姉さんは出てってくれる?穀潰しがこれ以上いたら迷惑だから」


「ここはあたしの家よ!」


弟「俺が継げば俺の家だよ。

1年待ってあげるからその間に必死に金ためたら?家にお金入れてる僕やユアですら1年で30万は溜まったよ?

姉さん家に金入れてないだろ?無駄使いせずに貯めろよ

1年後に一文無しで追い出されたくなければ必死に頑張って」


弟は話しは終わったとリビングを出たところで、あの小娘が帰って来ました。

相変わらず華奢なのに胸だけは大きくて、弟を誑かした元凶です


名前もユアと私に似ててイラつきます

「このアバズレがぁ!」


ユア「きゃぁー!」


弟「辞めろよ!母さん!姉さんが暴れてる連れてってくれよ!」


パートから帰って来て部屋で休んでた母親が飛び出してきて私を抑えて部屋に連れていきました


母親に泣いてすがりましたが駄目でした


母「ユメは昔から思い込みが強い所があったわね…貴女の服を盗んだとか言ってユアちゃんの鞄に押し込んだりしたでしょ?

ユアちゃん7号サイズよ?9号の服なら騙せると思ったの?」(※ユメ13号)


「ヒロを誑かす悪い女じゃない!」


母「本当に申し訳ないことをしたわね…

ユアちゃんも奨学金制度で自分のお金で大学に行こうとしてたのに。ヒロくんが妊娠させちゃって…

意地悪な小姑はいるし(自分で言うのもなんだけど)姑からはお手伝い扱いされるような、こんな古寺に嫁ぎたい嫁はいないわよ。

貴女も結婚して出て行く?」


母親にフッと鼻で笑われてしまった…

私の居場所はもうどこにも無いの?



あっという間に1年たちました


その間にあの女が出産しました、弟を誑かす孤児女に似た女の子です。


両親も祖父母も喜んでいて

あの女は産んだあとしばらく、ぐーたらしてたかと思うと、弟と祖父母に育児を丸投げです


いつの間にか免許を取っていて、中古車まで買って、車で町まで働きに行ってるようでした。

祖父母と弟が社務所の子供部屋だった所をベビールームに変えて、地域のふれあいの場にしてしまいました。


「子どもを自分で育てないなんて、何を考えてるのかしら!」


祖母「…貴女のお父さんの次に稼いでくれるのに何を言ってるのよ?

しかも託児所つきの職場なのに、私たちが引き留めて赤ちゃんをここで預かってるのよ?」


母「ヒロくんがね…ユアちゃんが子どもを連れて町まで仕事に行くと、そのまま帰ってこないんじゃないかって心配して子どもを預かってるのよ?

まだミルクが出るからオッパイ張って痛いのにね、託児所なら昼にお乳あげれるって言ってたのに」


いつも赤子の声がうるさくて、ますます私の居場所がなくなりました。

昔のよしみで、元彼の所に転がり込もうとして行ったら、街で仕事が見つかって引越して行ったと言うのです


今、私は小さな駅の近くのアパートに住んでます


働いて家にお金を入れるから置いてほしいと頼んだけど、弟から邪魔だ要らないと追い出されました。

両親からは、ユアに意地悪し過ぎたからもう弟の信用を得られないと…

階段から少し押したくらいで本当に大袈裟!結局怪我しなかったんだしいいじゃない


最近、無性に山に登りたくて仕方ない

山登りしようと思って登山サークルに入りました

次の休みに実家の裏の山じゃない所へ行く予定です―…



できるだけ多くを道連れにして

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