十二杯目 企業秘密

「!! このボロネーゼ、美味いよ…サヤ、教えてくれてありがとう。」


「いえいえ!美味しいって言ってもらえて何よりですよ~。私の勤めてるお店でもあるので、嬉しいです。」


「次来たら、また食べるか。サヤは…パンケーキどうだ?」


「ほっぺた落ちちゃう…って感じです!やっぱりクリームがいい…」


そう言われると一口食べてみたくなる…

思いきって、聞いてみることに。


「サヤ、そのクリーム一口貰ってもいいか?」


「いいですよ~?はい、口開けてください!」


「え…?マジでか?」


「ほら、クリーム溶けちゃいますよ!」


恥ずかしそうにしながら、クリームを口に入れる。

甘いけど、甘すぎない。ほどよくミルクの味がする、口どけの良いクリーム。

控えめに言って、かなり美味い。


「俺…甘党じゃないけど、このクリームなら食べられる…!これ、どこの生クリーム使ってるんだ?」


「企業秘密ですよ~?教えられません!」


「そうか…残念だ…」


あまりにもレドがしょんぼりするので、少し申し訳なくなり…


「レドさんにだけ、ナイショですよ。あの企業の出してる…ゴニョゴニョ…」


「あの会社の商品なのか…教えてくれてありがとう。今度家で作ってみる。」


「うふふ…お役に立てて嬉しいです!」


二人がイチャイチャしていると、常連のマダムたちが話しかけてきた。


「あら!サヤちゃん、お客さんで彼氏できたの~?」


「'まだ'付き合ってないですよ~?」


「あらやだ、二人ともお似合いよ!セクハラになっちゃうかしら?それじゃあまたね~。」


そう言って、マダムは去っていった…


(サヤさん、'まだ'ってどういう意図で…?絶対無いが期待してしまう…!)


「サヤ、そろそろ会計にしようか。まだ連れて行きたいところがあるんだ。」


「はい!わかりました。いいんですか?こんなに、色々と連れて行ってもらっちゃって…」


少し申し訳なさそうにしているサヤをカバーする。


「俺が望んでやってるだけだから、気にしないでくれ。会計、俺が払うよ。」


「駄目ですよ!割り勘でお願いします!」


「頼む、漢として払わせてくれないか?一種のプライドなんだ。」


「むぅ…わかりました…次は私が払いますからね!」


少し拗ねた様子のサヤを、レドはとても愛おしく思った。

かわいい猫の動画を見ているようなものだ。


二人は会計を済ませ、カフェの外に出た。


「ごちそうさまでした…次来たときは、私が奢りますから!」


「はは…ありがとう。次があるって期待してもいいのかな?」


サヤは自分が言った言葉の意味に気づいた。


「いや!そういう意味じゃ…でも、レドさんとなら…また来たいです…」


レドは頭を抱える。


(かわいすぎる…!!この生物は何なんだ?天使…いや女神か?それとも小悪魔か…)


「レドさん、大丈夫ですか?」


「え?あ…ああ、大丈夫だ。また手を繋ぐことになるが…いいか?」


「…はい!もちろんです…!」


「次の場所は公園だから、園内を少し歩くことになるんだが…足は痛くないか?痛かったら言ってくれ。」


(紳士に気遣いしてくれる…レドさんって何で彼女いないのかな…?)


それを不思議に思いながらも、レドに惹かれていた。

レドに手を引かれるまま、サヤは公園の方へ向かった…

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